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WRC第11戦ラリーチリ(グラベル)は9月12日、競技初日に設定されたSS1〜SS6の走行が行われ、トヨタは今大会で参戦100戦目を迎えたセバスチャン・オジエ/バンサン・ランデが3番手で滑り出した。首位とは2.3秒と僅差の戦いとなっている。TGR-WRT2からエントリーするサミ・パヤリ/マルコ・サルミネンが4番手、エルフィン・エバンス/スコット・マーティンが5番手、勝田貴元/アーロン・ジョンストンが6番手で続いている。カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネンは序盤首位に立ったが、パンクによりタイムロス。8番手から挽回を狙う。
WRC2部門では、このチリでタイトル確定のチャンスを握るトヨタGRヤリス・ラリー2オリバー・ソルベルグが、この日を首位で折り返している。
(以下、発表リリース)
WRC 第11戦 ラリー・チリ・ビオビオ デイ1
南米グラベル連戦2戦目のラリー・チリ・ビオビオがスタート
WRC出場200戦目のオジエが首位と2.3秒差の総合3位につける
9月12日(金)、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」が開幕。チリ中南部、コンセプシオンのサービスパークを中心に6本のステージが行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(GR YARIS Rally1 17号車)が総合3位に、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)が総合4位に、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合5位に、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)が総合6位に、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)が総合8位につけました。
8月の最終週に開催されたラリー・デル・パラグアイ終了後、1週間のインターバルを経てラリー・チリ・ビオビオが開幕。WRC開催4回目となるラリー・チリは、今回もチリ中南部ビオビオ州の州都「コンセプシオン」にサービスパークが置かれました。ラリーはまず9月11日(木)の午前中にシェイクダウンが行なわれ、ロバンペラが2番手、エバンスが3番手、オジエが4番手、パヤリが6番手、勝田が7番手のタイムを記録。WRCの規則により事前に現地でテストを行うことができない南米チリの道で、クルマの最終確認を行いました。その後、夜7時からコンセプシオン中心部の独立広場でセレモニアルスタートが行なわれ、大勢の観客が見守る中ラリー・チリ・ビオビオは幕を開けました。
競技は12日(金)の朝から始まり、デイ1としてサービスパークの南東エリアで3本のステージを、ミッドデイサービスを挟んで各2回走行。6本のステージの合計距離は112.76kmでした。デイ1の午前中のステージは、ラリーウイーク前半に降った強い雨により湿っているセクションも多く、路面のグリップ変化が大きい難しいコンディションとなりました。また、ステージの一部には深い霧が立ちこめ、十分な視界が得られない状況での走行を余儀なくされたドライバーもいました。
オープニングのSS1では、前年のこのラリーの覇者であり、ドライバー選手権2位につけるロバンペラがベストタイムを記録。ドライバー選手権首位のエバンスが2番手タイムを記録しました。続くSS2でもロバンペラはベストタイムを刻み、エバンスを抜き総合2位に順位を上げたオィット・タナック(ヒョンデ)に5.8秒の差を築きました。ところが、ロバンペラは続くSS3でクルマのリヤがバンクに当たった影響で左リヤタイヤがホイールのリムから外れて空気が抜け、そのままステージを最後まで走行したことで1分以上をロス。総合9位に順位を下げることになりました。そして、そのSS3ではエバンスがベストタイムを記録し、タナックを抜き午前中のループが終了した時点で首位に立ちました。一方、WRC初開催の前戦ラリー・デル・パラグアイで今シーズン4勝目を獲得し、今大会がWRC出場200戦目となるオジエは、午前中クルマのフィーリングが合わずやや苦戦。それでも首位エバンスと13.9秒差の総合4位で朝のループを走り切りました。
コンセプシオンでのミッドデイサービスを経て始まった午後の再走ステージは、午前と路面のコンディションが大きく変化。路面は多くの部分が乾き、午前中はそれほど大きな問題にならなかった「ルースグラベル」が路面に浮き始め、出走順が早いドライバーたちを苦しめることになりました。その結果、午後1本目のSS4で出走順トップのエバンスはタイムが伸びず総合2位に、出走順3番手のオジエは総合5位に順位を下げました。続く2本のステージでもエバンスは苦戦を強いられ総合5位に後退。一方、オジエはミッドデイサービスでのセットアップ変更により、午前中よりもクルマのフィーリングが向上。デイ1最終のSS6ではベストタイムを刻み、デイリタイアを喫したタナックに代わり首位に立ったアドリアン・フォルモー(ヒョンデ)と、2.3秒差の総合3位に順位を上げてデイ1を終えました。また、オジエと8.9秒差の総合4位には、SS4でベストタイムを、SS6で3番手タイムを記録したパヤリがつけ、総合5位のエバンスを1.9秒リードしています。
昨年このラリーを欠場したことにより、ライバルよりも経験がやや不足する状況で戦いに臨んだ勝田は、午前中のステージでは7〜9番手タイムでした。しかしミッドデイサービスでクルマを調整して臨んだ午後の再走ステージではペースが向上し、SS5で4番手タイム、SS6で5番手タイムを記録。エバンスと27.9秒差の総合6位に順位を上げて一日を終えました。また、午後のステージでエバンス同様出走順の影響を受けたロバンペラは、総合8位につけています。
サポート選手権のWRC2では、GR Yaris Rally2のオリバー・ソルベルグ(スウェーデン/プリントスポーツ)が、2位のライバルに10.4秒差をつけてクラス首位に。総合でも8位につけています。今シーズン、WRC2で既に4勝を挙げているソルベルグは、今回のチリでも優勝すると初タイトルが決まる状況です。
ユハ・カンクネン (チーム代表代行)
状況が大きく変わり続けた、非常に興味深い一日でした。午前中は路面が湿っていて滑りやすい状態でしたが、コンディションは全体的になかなか良く、皆が同じような条件で走ることができました。エルフィンはその状況を上手く活かし、トップに立つことができました。しかし午後になると路面が乾き始め、出走順トップ3で走行した我々のドライバーは、後から走るドライバーのために路面をクリーニングする役割を担いました。それでもセブは終盤の好走によって総合3位につけ、サミも良い走りをしました。また、エルフィンもそれほど大きくは遅れを取っていません。カッレの午前中のハプニングは残念でしたが、彼も貴元も速さを発揮して挽回できると確信しています。今夜は雨が降り続くという予報なので、明日もまた興味深い一日になるでしょう。
エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
朝は私たちにとって良いスタートでした。空気と路面は湿気を含み、ところどころにルースグラベルが残ってはいましたが、いつものように一番手でステージを走行する私たちにとっては、それほど悪いコンディションではありませんでした。パラグアイのラリー期間中から改善を進めていった結果、クルマのフィーリングはとても良くなり、午前中はかなりクリーンに走ることができました。しかし、午後は午前よりも路面クリーニングの影響が大きくなり、かなり苦戦しました。とはいえ自分の走りが悪かったとは思いませんし、今週末は天候によって様々な事態が起こりうることを考慮すれば、依然としてトップに近い位置につけていると思います。
カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
今朝は良いスタートを切ることができました。過去、この2本のステージでこれほど快適に走れたことはなかったのですが、今日はついに良いペースを掴むことができました。クルマのセッティングとドライビングの両面で進歩があり、異なるアプローチが効果を発揮したと思います。残念ながら、常にブレーキングが難しく感じられる道幅の狭い区間でラインがワイドになり、リヤのグリップを失ってしまいました。大きな衝撃ではなかったのですが、タイヤがリムから外れるには十分で、多くのタイムを失ってしまいました。午後は午前よりも路面のクリーニングの影響が大きくなり、より困難でした。明日は天候が不安定になる見込みです。雨が降れば路面のクリーニングの影響はそれほど大きくないはずなので、可能性を求めてプッシュするつもりです。
セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車)
今朝は理想的なスタートを切ることができませんでした。200戦を経験しても、セットアップを誤ることは時々あります。今朝は道幅の狭い道で必要なフィーリングと精度が欠けていました。サービスで変更すべき点は明確だったので、午後は出走順が早いドライバーにとって厳しいコンディションだったにも関わらず、確実に正しい方向へと進むことができました。最後までプッシュし続け、最終ステージでは非常に良い走りをすることができました。それが今日の挽回と、首位争いに加わることに繋がったので、そのことについては満足しています。明日は雨予報でさらに厳しい状況になるかもしれませんが、このポジティブな流れを継続できるように努めます。
勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
午前中はクルマのフィーリングが掴めなかったことでかなり苦戦し、このようなハイスピードなステージを自信を持って攻め続けるのは容易ではありませんでした。しかしミッドデイサービスで大幅なセッティング変更を行った結果、午後は格段にフィーリングが良くなり、タイムも大きく向上しました。朝のタイムロスは残念ですが、総合6位につけていますし、まだ長い道のりが残っています。そして、厳しいコンディションが待ち受けているかもしれないので、明日以降もプッシュし続け、さらなる改善を試みます。
サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
全体的には良い一日でした。午前中はフィーリングが完全には掴めず、もっとできるはずだと感じていました。しかし午後はコンディションの変化とクルマのファインチューニングにより、全てが上手くかみ合い始めたように感じました。ステージで優勝し、トップと11秒差の総合4位という、非常にポジティブ一日になりました。ループの2番目のステージではタイヤをマネージメントしようと試みたのですが、グリップは最後まで良好だったので、もっとプッシュすることができたのかもしれません。明日のステージはさらにツイスティで、コンディションもより湿っていて泥状になる可能性があるので、明日もベストを尽くします。
ラリー・チリ・ビオビオ デイ1の結果
1 アドリアン・フォルモー/アレクサンドレ・コリア (ヒョンデ i20 N Rally1) 57m48.5s
2 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1) +1.0s
3 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1) +2.3s
4 サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +11.2s
5 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +13.1s
6 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1) +41.0s
7 グレゴワール・ミュンスター/ルイス・ルッカ (フォード Puma Rally1) +49.8s
8 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +1m05.0s
9 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (トヨタ GR Yaris Rally2) +2m27.4s
10ジョシュ・マッカーリーン/オーエン・トレーシー (フォード Puma Rally1) +2m35.7s
(現地時間9月12日18時30分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
明日のステージ情報
競技2日目となる9月13日(土)のデイ2は、サービスパークの南側、ビオビオ川と太平洋に挟まれたエリアが戦いの舞台に。SS9とその再走ステージであるSS12「マリア・ラス・クルセス」は全長28.31kmと長く、今大会最長のステージとなります。全体的に道幅は広めですが、金曜日よりもタイヤに厳しい区間が多くあります。デイ2は、3本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行し、その合計距離は139.20kmと、3日間で最長。リエゾン(移動区間)を含めた一日の総走行距離は428.48kmとなります。