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WRC第12戦セントラルヨーロピアンラリー(ドイツ/チェコ/オーストリア、ターマック)の競技を終え、トヨタのカッレ・ロバンペラとエルフィン・エバンスが1-2となり勝利を収めた。また今大会の成績を受けてトヨタの5年連続、通算9回目のマニュファクチャラーズタイトル獲得が確定した。ドライバーズタイトルにおいてもチーム内の3人が13ポイント以内で争うという非常に接近した状態で、次戦、注目のラリージャパンを迎えることとなった。
(以下、発表リリース)
WRC 第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー デイ4
ロバンペラが今季3勝目を飾り、エバンスは総合2位で選手権首位に再浮上
TGR-WRTは5年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得する*
10月19日(日)、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第12戦「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」の最終日デイ4が、ドイツ南東部パッサウのサービスパークを起点に行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(GR YARIS Rally1 69号車)が優勝。エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車) は総合2位で、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)は総合4位で、TGR-WRT2からエントリーのサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)は総合6位で、前日のデイリタイアから再出走したセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(17号車)は総合29位でフィニッシュ。TGR-WRTはシーズン11勝目を手にし、5年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得しました*。
セントラル・ヨーロピアン・ラリーの最終日デイ4は、ドイツとオーストリアで4本、合計77.78kmのステージが行なわれました。そのうちSS15とその再走ステージであるSS17「ビヨンド・ボーダーズ」はドイツとオーストリアの国境を越えて走行。また、SS16の再走となるオーストリア国内でのSS18「ミュールタール2」は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に設定されました。日曜日のステージは早朝3度前後とかなり冷え込みましたが、朝から青空が広がり、路面は全体的にドライコンディションとなりました。デイ4のオープニングステージであるSS15は、前日のデイリタイアから再出走した、1番手スタートのオジエを含む3台のクルマがフィニッシュした段階でステージキャンセルになりました。そのため、大部分のドライバーに対してノーショナルタイム(=救済タイム)が与えられました。続くSS16では、オジエがベストタイム。総合2位のエバンスは1秒差の2番手タイムを記録し、総合2位オィット・タナック(ヒョンデ)との差を5.2秒に縮めました。続くSS17でもオジエがベストタイムをマークし、ロバンペラが4.6秒差の2番手タイムを、エバンスが4.7秒差の3番手タイムを、勝田が5.5秒差の4番手タイムを記録。首位ロバンペラはタナックとの差を42.9秒差に拡げ、エバンスはタナックとの差を1.1秒に縮めました。
タイヤフィッティングゾーンを経て始まった最終のパワーステージ、SS18「ミュールタール2」では、ロバンペラが3番手タイムでフィニッシュ。第9戦ラリー・フィンランド以来となる今シーズン3勝目を獲得しました。ロバンペラはさらに、スーパーサンデーでも3番手に入ったことにより合計6ポイントのボーナスを加算。ドライバー選手権では2番手に順位を下げたオジエと同ポイントで並び、選手権首位にカムバックしたエバンスとの差は13ポイントとなりました。
一方、総合2位のタナックと最後まで順位を激しく争ったエバンスは、パワーステージを2番手タイムで走破。その結果、タナックを抜き総合2位でフィニッシュしました。また、スーパーサンデーでも2番手となったことにより合計8ポイントのボーナスを加算。デイ2でコースオフを喫したオジエに代わり、ドライバー選手権首位に返り咲きました。なお、今大会はコ・ドライバーのマーティンにとってWRC出場200戦目だったため、ポジティブな週末となりました。
オジエは前日のデイリタイアにより総合成績によるポイント獲得は逃しましたが、最終日はパワーステージを含む全ステージでベストタイムを記録。また、スーパーサンデーでも1位となったことにより、獲得可能な最大ボーナスポイントである10ポイントを加算。ドライバー選手権首位の座は失いましたが、それでもロバンペラと同ポイントの2番手につけ、依然通算9回目となるドライバーズタイトルを獲得可能な位置につけています。なお、TGR-WRTはロバンペラ、エバンス、オジエの活躍により合計60ポイントを加算。その結果シーズン2戦を残し5年連続6回目、トヨタとしては通算9回目となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得しました。なお、この9回のタイトル獲得は、ランチアの10回に次ぐWRC史上2番目の記録となります。
デイ3のチェコのステージで2本のベストタイムを刻むなど速さを発揮した勝田は、最終日を4、5番手のタイムで走行し総合4位でフィニッシュ。パワーステージ、スーパーサンデーでも4番手となり、ボーナスポイントを獲得しました。ホームイベントであり、セントラル・ヨーロッパと同じくターマックラリーである次戦のラリージャパンに向けて、勝田は非常にポジティブな形で今シーズン最後のヨーロッパ戦を走り切りました。また、パヤリはパワーステージで5番手タイムを記録し、総合6位でフィニッシュ。今回もまた好タイムを何度も刻み、経験値をさらに高めて難関ターマックラリーを走り切りました。
なお、GR Yaris Rally2で出場のオリバー・ソルベルグ(スウェーデン/プリントスポーツ)はRally2クラストップ、総合9位でフィニッシュ。前戦ラリー・チリでWRC2の初タイトルを決定し、今回はWRC2枠外での戦いでした。しかし、同クラスのライバルに1分50秒以上の差をつけるなど、WRC総合優勝経験があるドライバーとしてのパフォーマンスを、改めて証明しました。
ユハ・カンクネン(チーム代表代行)
今日、我々チームを心から誇りに思います。ラリーのフィニッシュラインで1位と2位を獲得し、再びマニュファクチャラーズタイトルを勝ち取ったと知った時、正直なところ目頭が熱くなりました。私の役職において、それは、今年達成すべき最も重要なことでした。これまでドライバーとしてはタイトルを獲得したことがありましたが、チーム代表としてもタイトルを手にすることができたのは、私にとって5回目の世界選手権優勝のようなものです。今年、チームのスピリットと雰囲気は素晴らしく、ドライバーたちも見事な仕事をしてくれました。エルフィン、セブ、カッレのランキング争いは現在非常に拮抗しているので、残り2戦はとてもエキサイティングな戦いになるでしょう。
エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
チームが再びマニュファクチャラー選手権を制覇したことを、心から嬉しく思います。この背景には多大な努力があり、ベストなクルマと最高のチャンスを私たちに提供するために、チームの全員が一生懸命努力してきました。そのことに心から感謝し、よくやってくれたと伝えたいです。私にとっては、期待していたような週末ではなかったかもしれません。さらに上を目指せる可能性があったと思うので、少し悔しい気持ちもあります。今日は少し流れを変えることが重要でしたが、より良い一日となりました。オィットから2位を奪い返すことができたので、今日の結果には満足しています。
カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
ワークショップのみんな、そして、このラリーのサービスパークにいるみんなを含むチームの全員に、心からの祝福を贈ります。再びマニュファクチャラーズタイトルを獲得できたことは、我々が最高のチームであることを証明するものです。全員が協力し合いながら、一生懸命働いてくれています。本当にありがとう。自分たちにとって非常に良い週末でした。ターマックに戻ることができて嬉しかったですし、ペースもかなり速かったので、チームと共に素晴らしい仕事ができたと思います。ドライバー選手権に関しては依然簡単な状況ではありませんが、少なくとも今回の結果によって可能性は高まりました。ですので、次のラリージャパンでもこの調子を維持できるように努めます。
セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車)
このチームと共に、再びマニュファクチャラーズタイトルを獲得することができて素晴らしい気分です。進化し続け、勝ち続けるのは決して簡単なことではありませんが、それがこのチーム全体のスピリットであり、私はそれをとても誇りに思います。何事も簡単には得られないからこそ、この勝利を祝うべきですし、今後もプッシュし続け、この成功を継続させるつもりです。今日のクルマは完璧でした。昨日の出来事の後、最大限のポイントを取り戻せる状態にクルマを修理してくれたチームに感謝します。もちろん、このラリーでより良い結果を残したかったのは確かですが、タイトル争いにはまだ現実的な可能性が残ってるので、次の日本でのラリーが楽しみです。
勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
今年もマニュファクチャラーズタイトルを獲得できたのは、素晴らしいことです。チーム全員に心から感謝します。彼らは本当に一生懸命働いてくれましたし、チームメイトたちも素晴らしい仕事をしました。自分も今回のセントラル・ヨーロピアン・ラリーでは良い走りをすることができましたし、ラリージャパンを前にクルマとタイヤに良いフィーリングを感じることができたのは良かったです。まだ完全には満足していないですし、改善すべき点もありますが、自分にとって非常に重要なイベントであるラリージャパンに向けて、できる限り努力し、プッシュし続けるつもりです。
サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
チームがマニュファクチャラーズタイトルを獲得したことに、心からの感謝と祝福を贈りたいと思います。自分にとっては、まずまずの週末でした。この週末、非常に良いステージタイムを何度か記録することができたと思います。コンディションが特にトリッキーな状況でまだ学ぶべき点も多くありましたが、それは今シーズンの我々にとって課題の一部です。全体的には今回のイベントから、次の日本大会、そして将来に向けて多くのポジティブな要素を得られたと思っています。
セントラル・ヨーロピアン・ラリーの結果
1 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) 2h36m20.1s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +43.7s
3 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1) +49.3s
4 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1) +1m06.8s
5 アドリアン・フォルモー/アレクサンドレ・コリア (ヒョンデ i20 N Rally1) +2m04.6s
6 サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +2m13.9s
7 ジョシュ・マッカーリーン/オーエン・トレーシー (フォード Puma Rally1) +5m48.8s
8 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (トヨタ GR Yaris Rally2) +8m56.2s
9 ヤン・チェルニー/オンドジェイ・クラジュカ (シュコダ ファビアRS Rally2) +10m51.1s
10 フィリップ・マレス/ラドバン・ブハ (Toyota GR Yaris Rally2) +11m21.2s
29 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1) +49m40.9s
(現地時間10月19日19時20分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
第12戦終了時点でのドライバー選手権順位
1 エルフィン・エバンス 247ポイント
2 セバスチャン・オジエ 234ポイント
3 カッレ・ロバンペラ 234ポイント
4 オィット・タナック 197ポイント
5 ティエリー・ヌービル 166ポイント
6 勝田 貴元 110ポイント
7 アドリアン・フォルモー 96ポイント
8 サミ・パヤリ 79ポイント
9 オリバー・ソルベルグ 64ポイント
10 グレゴワール・ミュンスター 26ポイント
第12戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位
1 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 632ポイント
2 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 464ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 176ポイント
4 TOYOTA GAZOO Racing WRT2 127ポイント
*FIAによる公式結果の発表が条件となります。
次回のイベント情報
WRC次戦は、11月6日(木)から9日(日)にかけて、日本の中部地方で開催される第13戦「ラリージャパン」です。WRCカレンダー復帰4年目となる日本ラウンドは、今年も愛知県豊田市の「トヨタスタジアム」にサービスパークが置かれ、愛知と岐阜の両県でターマックのステージが行われます。今年はトヨタスタジアム内でのスーパーSSは設定されず、新たに豊田市の街中から河川敷までを走行するスーパーSSが設けられました。ラリージャパンのステージは全体的に道幅が狭く、ツイスティなコーナーが連続します。また、11月は落ち葉が多く、毎年のように降雨もあるなど、場所によっては路面が非常に滑りやすいのが特徴です。