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WRC第11戦ラリーチリ(グラベル)は9月14日、競技最終日となるSS13〜SS16の走行が行われ、トヨタはセバスチャン・オジエ/バンサン・ランデとエルフィン・エバンス/スコット・マーティンが前日の順位を守り切って、チーム通算30回目となる1-2フィニッシュ。これでマニュファクチャラーとしては最多となる通算103勝と新記録を樹立した。オジエは、ドライバーズ選手権ではエバンスを抜いて首位に浮上した。また、サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン、勝田貴元/アーロン・ジョンストン、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネンも、それぞれ順位をキープして5位、6位、7位フィニッシュを飾った。
WRC2部門では、トヨタGRヤリス・ラリー2のオリバー・ソルベルグが優勝を飾り、自身初となるWRC2タイトル獲得を確定させた。
(以下、発表リリース)
WRC 第11戦 ラリー・チリ・ビオビオ デイ3
WRC出場200戦目のオジエが激戦を制し今シーズン5勝目を獲得
エバンスが総合2位でフィニッシュし通算30回目の1-2フィニッシュを達成
9月14日(日)、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」の最終日デイ3がチリ中南部、コンセプシオンのサービスパークを起点に行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(GR YARIS Rally1 17号車)が優勝。エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合2位、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)が総合5位、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)が総合6位、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)が総合7位でフィニッシュしました。
ラリー・チリ・ビオビオの最終日デイ3は、サービスパークの南側、ビオビオ川と太平洋に挟まれたエリアで、「ララケテ」と「ビオビオ」という2本のステージを、ミッドデイサービスを挟むことなく各2回走行。その合計距離は54.80kmと3日間で最短でした。最終日は朝から爽やかな青空が広がり、路面は全体的にドライコンディション。Rally1勢は、地元のアルベルト・ヘラー(Mスポーツ・フォード)を除く全車がソフトコンパウンドのグラベルタイヤ5本を選択してステージに向かいました。
デイ2で3本のベストタイムを刻み、総合2位のエバンスに6.3秒差を築いて首位に立ったオジエは、オープニングのSS13でベストタイムを刻み、2番手タイムのエバンスとの差を7.2秒に拡げました。続くSS14ではエバンスがベストタイム、勝田が2番手タイム、オジエはエバンスと1.3秒差の3番手タイム。その結果、オジエとエバンスの差は5.9秒に縮まりました。再走ステージの1本目となるSS15は、2番手タイムのエバンスより4.4秒も速いベストタイムをオジエが記録し、差は10.3秒に拡がりました。
そして迎えた最終のパワーステージ「ビオビオ2」で、オジエはベストタイムを記録。3番手タイムだったエバンスとのタイム差を11.0秒に拡げ、前戦ラリー・デル・パラグアイに続き優勝。記念すべきWRC出場200戦目を通算66回目の勝利で祝いました。なお、オジエの優勝は今シーズン5回目となり、スーパーサンデー1位、パワーステージ1番手によりボーナスポイントもフルに獲得したことで、ドライバー選手権では3位から、一気に首位へとジャンプアップ。スーパーサンデー2位、パワーステージ3番手のエバンスは2ポイント差の選手権2位に後退し、3位に順位を下げたロバンペラとの差は19ポイント差になりました。また、TGR-WRTは1-2フィニッシュおよびボーナスポイントの獲得により、マニュファクチャラー選手権におけるリードを前戦までの100ポイントから、125ポイントへとさらに拡げることに成功。1-2フィニッシュはトヨタとしてこれで通算30回目となり、最多記録に並びました。また、トヨタは今回の勝利でWRC通算103勝目を獲得し、史上最多の勝利を得たマニュファクチャラーとなりました。
昨年のラリー・チリがRally1車両でのキャリア2戦目だったパヤリは、デイ1で総合4位につけるなど初日から速さを発揮。デイ2ではエバンスの上位浮上により総合5位に後退しましたが、その後も安定した走りで順位をキープ。最終日も速さを発揮し、SS15では4番手タイムを記録して総合4位のティエリー・ヌービルとの差を3.2秒まで縮めました。残念ながら最終ステージでの順位逆転はなりませんでしたが、パヤリはスーパーサンデーとパワーステージの両方で4位となり、今シーズン3回目のトップ5フィニッシュを果たしました。
デイ1の序盤にラリーをリードしながらも、クルマのリヤがバンクに当たった影響で左後輪から空気が抜け、大幅にタイムを失ったロバンペラは、デイ2で総合6位まで順位を挽回。デイ3でのさらなるポジョンアップはなりませんでしたが、スーパーサンデー3位、パワーステージ5番手でボーナスポイントを得ることに成功しました。また、前日総合7位の勝田は、昨年このラリーを欠場したことによる経験不足のハンデを乗り越え、総合7位で2年ぶりのラリー・チリを走破しました。
サポート選手権のWRC2では、GR Yaris Rally2のオリバー・ソルベルグ(スウェーデン/プリントスポーツ)が、コ・ドライバーのエリオット・エドモンドソンと共に前戦ラリー・デル・パラグアイに続き優勝。総合でも9位に入りました。今シーズン、7戦のポイント獲得ラウンドで5勝目を達成したことにより、WRC2のチャンピオンを獲得しました。また、ソルベルグは今年ラリー・エストニアで初めてGR YARIS Rally1をドライブして優勝するなど、多くの好結果を残しています。WRC2の王座はソルベルグにとっては初のワールドラリータイトルとなり、参戦クラスは異なりますが、父親であるペター・ソルベルグに続く戴冠となりました。なお、ソルベルグのGR Yaris Rally2をプリペアしたプリントスポーツは、昨年のパヤリに続き2年連続でのチャンピオン輩出を成し遂げました。
ユハ・カンクネン (チーム代表代行)
またしても信じられない結果です。トヨタがWRCにおいて他メーカーを上回る勝利数を記録したことは、非常に特別な瞬間です。もちろん、私がドライバーだった時のことも思い出しますが、今このチームが成し遂げていることはただただ驚異的です。チーム全員が南米での2戦を通して本当に素晴らしい仕事をしてくれましたので、心から満足しています。セブとエルフィンは今週末素晴らしい走りをしましたが、特にセブはパワーステージで103%の力を発揮し、最大ポイントとトヨタの通算103勝目を獲得しました。最終戦に向けてエキサイティングな展開になりそうですし、カッレも決して諦めていません。彼は今日、できる限りの結果を掴みました。サミはここで本当に素晴らしいラリーを戦い、貴元も十分な速さを示してフィニッシュしました。我々は皆、次のラリーであるセントラル・ヨーロピアン、そしてもちろん、ラリージャパンを楽しみにしています。
エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
フィニッシュでは複雑な気持ちでした。なぜなら、私たちは常に勝利を望んでいるからです。それでも、2週間前のパラグアイでペースがなく苦しんだことを考えれば、今回ここで十分な速さを発揮できたことは大きなプラスです。金曜日の午後に出走順トップで走行したことによって大きな代償を払ったと思いますが、それ以外は本当に堅実な仕事をしたと思います。もちろん、最終日などセブとさらに激しく戦いたかったという気持ちはありますが、彼は常に非常に強く、打ち負かすのが難しい相手です。セブと、トヨタの記録的な勝利を達成したチームを祝福します。チャンピオンシップは依然接戦ですし、次のターマックでのラリーも楽しみなので、引き続き全力を尽くします。
カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
自分たちにとっては良い週末ではありませんでした。ここでは良い結果を得る必要がありましたが、金曜日の朝のハプニングの後、残念ながらそれは実現できませんでした。今日は再び全力でプッシュし、可能な限りのポイントを獲得しようと試みました。スタート順が不利だったため簡単ではなかったですし、ベストタイムに挑むこともできませんでしたが、自分たちにできることはやったと思います。チャンピオンシップ争いは今後さらに厳しくなると思いますし、次の数戦で勝利を掴む必要があるのは明らかですが、最善を尽くして戦い続けます。
セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車)
南米で再び勝利を獲得し、今回は最大ポイントを獲得することもできたのでとても嬉しいです。パラグアイで悪天候によりポイント獲得のチャンスを失ったことを考えれば、十分に報われる結果だと思います。残り3戦で選手権の首位に立ったことも、間違いなくポジティブなことです。また、TOYOTA GAZOO Racingの皆と共にこの記録的な勝利を成し遂げられたことも大変嬉しく思います。自分たちが限界に挑戦し続けられるように、大きなサポートをしてくださっている豊田章男会長に感謝します。これまでの成果を誇りに思うと同時に、この後のラリーでもこの素晴らしい記録をさらに積み重ねていけることを確信しています。
勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
自分たちにとってはかなり厳しい週末でしたが、少なくとも今日はポジティブな形で終えることができました。両ステージとも走るのは初めてでしたが、時々他のクルマに匹敵するペースを発揮することができました。2回目がパワーステージとなるステージの1回目の走行では、2番手タイムを記録することができました。2回目はいつものように走行ラインが狭くなり、クルマが走るごとにタイムが良くなっていきましたが、それでも自分たちのタイムは大きく離されることはありませんでした。このラリーを終えられたことを嬉しく思いますので、これからは自分にとって重要であるターマックのラリー連戦、その中でも特に重要なラリージャパンに向けて準備を進め、ベストを尽くすつもりです。
サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
自分たちにとって、非常にポジティブな週末でした。他のラリーでも速さはありましたが、今回は最後まで戦い抜くことを強く意識していました。ヌービルに追い抜くことをミッションに掲げて挑み、多少差を詰めることはできましたが、あと一歩及びませんでした。それでも、このように戦えることを実感できたのは良かったです。また、パワーステージとスーパーサンデーで4位になれたことも嬉しかったです。なぜなら、皆がポイント獲得を目指してプッシュしている中での結果だからです。限界まで自分を追い込む感覚は心地良く、今週末は本当に楽しい瞬間もありました。次のラリーは全く異なるターマックでのチャレンジになりますが、この調子で戦い続けたいと思います。
ラリー・チリ・ビオビオの結果
1 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1) 2h55m42.1s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +11.0s
3 アドリアン・フォルモー/アレクサンドレ・コリア (ヒョンデ i20 N Rally1) +46.5s
4 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1) +59.0s
5 サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +1m03.4s
6 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +1m35.7s
7 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1) +2m14.0s
8 グレゴワール・ミュンスター/ルイス・ルッカ (フォード Puma Rally1) +2m44.1s
9 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (トヨタ GR Yaris Rally2) +8m18.6s
10 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ Fabia RS Rally2) +8m59.0s
(現地時間9月14日16時30分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
第11戦終了時点でのドライバー選手権順位
1 セバスチャン・オジエ 224ポイント
2 エルフィン・エバンス 222ポイント
3 カッレ・ロバンペラ 203ポイント
4 オィット・タナック 181ポイント
5 ティエリー・ヌービル 166ポイント
6 勝田 貴元 94ポイント
7 アドリアン・フォルモー 86ポイント
8 サミ・パヤリ 70ポイント
9 オリバー・ソルベルグ 60ポイント
10 グレゴワール・ミュンスター 25ポイント
第11戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位
1 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 572ポイント
2 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 447ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 157ポイント
4 TOYOTA GAZOO Racing WRT2 111ポイント
次回のイベント情報
WRC次戦は、10月16日(木)から10月19日(日)にかけて行われる、第12戦「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」です。2023年に初めてWRCとして開催されたこのイベントは、ドイツ、チェコ、オーストリアの三カ国を舞台とするターマック(舗装路)ラリーです。サービスパークはドイツ南東部、バイエルン州のパッサウに戻り、16日にパッサウでのセレモニアルスタートと、ドイツ国内の2本のステージで開幕。金曜日以降は毎日、国境を越えるラリールートが設定されています。国や地域によってステージの特徴は大きく異なり、10月は天気も変わりやすいため、ドライバーには高い適応力が求められます。