2023年WRCストーブリーグ、どうなるオィット・タナックのMスポーツ入り? – RALLYPLUS.NET ラリープラス

2023年WRCストーブリーグ、どうなるオィット・タナックのMスポーツ入り?

©Hyundai Motorsport GmbH

11月18日、ヒョンデが2023年のドライバーズラインナップを発表し、クレイグ・ブリーンがスポット参戦ドライバーとしてチームに復帰することが明らかになったことで、WRCのストーブリーグの集中の的は、まだ来季の予定を明かしていないオット・タナックが、Mスポーツ・フォードが切望するチームリーダーになるのかという一点に絞られている。

10月のWRCスペインではすでに、2023年はブリーンとタナックが入れ替わるのでは、という憶測が流れていたが、ブリーンのヒョンデ入りが決まったことで、現状Mスポーツ・フォードには、フルタイムで表彰台を狙えるドライバーがいなくなってしまった。つまり、タナックと再契約を結べるかどうかは、Mスポーツの成否を分けることにもなり、タナック獲得はチームにとって極めて重要な意味を持つ。

そのタナックはスペイン終了直後に「新しいチャレンジに乗り出すため」にヒョンデとの契約を1年早く終了。このタナックの電撃発表はWRC関係者にとって激震となり、フル参戦ドライバーが必要となったヒョンデは、エサペッカ・ラッピにフル参戦をオファー。ラッピは、トヨタからのセバスチャン・オジエとのシェア参戦ではなくヒョンデからのフル参戦を選び、ストーブリーグが一気に動いた。トヨタはオジエのシェア参戦の相棒として勝田貴元をワークスに昇格。勝田は、オジエが参戦するイベントでは、ワークス外からGRヤリス・ラリー1をドライブすることでフル参戦を果たすことになる。

タナックにとってMスポーツは、2011年に初めてMスポーツからWRCへの参戦を果たしたチームであり、6年後に自身初のWRC優勝もマークした古巣のチーム。若手時代にキャリアを積んだチームの家族的な雰囲気も魅力だ。ヒョンデとは異なり、Mスポーツの運営は大々的な宣伝活動をしないため、あまり表に出ることを好まないタナックにとっても居心地がいいだろう。たとえ9連覇王者のセバスチャン・ローブが2023年もMスポーツからスポット参戦することになったとしても、タナックがMスポーツ・フォードに入ればナンバー1の地位を得ることは間違いない。

しかし、たとえタナックがMスポーツにとって最適な人材だとしても、そのための資金を確保することが必要となり、ヒョンデやトヨタと互角に渡り合うだけの資金力はない、と言い切るこのチームは、タナックには不向きとも言える。

先日のラリージャパンで、2023年にフル参戦する可能性について問われたタナックは「自分がどう感じるか次第。来年、自分が走るとしても、タイトルを争うチャンスを与えてくれるものでなければならないし、そこが自分がタイトルを争う上で自分に欠けていた部分なのかもしれない。そのチャンスが来るのかどうかは、これから。正直、現時点で言えることは何もない」と答えている。

もしタナックが2023年もフル参戦を目指すのであれば、残る空席はMスポーツのみ。そのMスポーツにとって、タナックのような優秀な人材は不足しており、直近でWRC勝利を挙げているクリス・ミーク、アンドレアス・ミケルセン、ヘイデン・パッドンは、報酬を支払うドライバーとは見られていない。

一方で、アドリアン・フルモー、ガス・グリーンスミス、ピエール‐ルイ・ルーベの若手トリオは潜在能力を発揮しているものの、Mスポーツのディレクター、マルコム・ウィルソンが必須条件としている「2023年にチームを導くための一貫性」はいずれも実証することができていないのが現状だ。
(Graham Lister)

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