WRCベルギー事前情報:シリーズ初開催。歴史あるターマックラリー – RALLYPLUS.NET ラリープラス

WRCベルギー事前情報:シリーズ初開催。歴史あるターマックラリー

©2020 VZW SUPERSTAGE

2021年WRCは、第8戦イープル・ラリーベルギー(8月13〜15日)で4月のクロアチア以来となるフルターマックラリーが行われる。

ベルギー待望のWRC初開催となる今大会は、ベルギーの西フランデレン州にあるイープルを拠点に、競技最終日の8月15日は東部のワロンに向かい名門サーキット、スパ・フランコルシャンで決戦を迎える。ベルギーのモータースポーツ界にとって象徴となるふたつの会場が舞台となり、同国にとって思い出に残る週末となることは間違いない。

以前はヨーロッパラリー選手権として開催されてきたイープルラリーは、年々その評価を高め、2020年の11月には待望のWRC初開催を目前としていたが、新型コロナウイルスのパンデミックにより開催キャンセルに追い込まれていた。しかし、WRC13勝を誇るティエリー・ヌービルをはじめ多くのWRCドライバーを輩出するなどラリーの歴史が長いベルギーが、今季再び世界の舞台に名乗りを挙げるチャンスをつかんだ。これでベルギーは、WRCを開催する35番目の国となる。

イープルラリーの初開催は1965年。前年にはこの街の歴史的な市場広場が、ラリーモンテカルロのコンセントレーションランのタイムコントロール会場に選ばれている。以来、ドライバーとチームに独特のチャレンジを与えるこのイベントは、その評判を上げ続けてきた。

他に類を見ないターマックラリーであるベルギーでミッションを成功させるためには、正確なドライビングが欠かせない。イープル周辺の農道はナロー&ツイスティでタイトなジャンクションが多く、ブレーキが遅すぎたり、ハードにプッシュしすぎたりすれば、コースサイドのほとんどで待ち受ける側溝にはまることになる。またコーナーのインカットが多いことでも知られ、路面に泥や砂利などが掻き出されてくる。雨が降る懸念も常につきまとい、そうなれば石畳のセクションでは極めてスリッパリーな路面となり、難易度がさらに増す。

WRC初開催であることから、WRカーを駆るほとんどのドライバーにとって新しいイベントとなる。過去に参戦経験があるドライバーは、いずれもヒュンダイからエントリーするティエリー・ヌービルとクレイグ・ブリーンだけ。それぞれ2018年、2019年に総合優勝を飾っているこのふたりは序盤からペースを披露することが期待されている。

選手権争いでは、今季はトヨタのセバスチャン・オジエがシーズンを通してペースを握っている。ここまでの7戦中4戦で勝利をマークしており、ドライバーズ選手権で2番手につけるチームメイトのエルフィン・エバンスに37ポイント差という状況。ここ4戦はグラベル戦が続き、初日に砂利掃除を担ってきたオジエは、ターマックラリーの今回は初日の先頭走行がアドバンテージとなるチャンスだ。ヌービルは、エバンスに15ポイント差の3番手で母国でのWRCを迎える。

この3人に続くのが、前戦エストニアで会心のWRC初勝利をマークしたトヨタの成長株、カッレ・ロバンペラ。20歳9カ月17日でマークしたこの勝利は、WRC優勝最年少記録を更新した。一方このエストニアでは、ヒュンダイのオィット・タナックはリタイアを喫している。コ・ドライバーのマルティン・ヤルベオヤは、イープルラリーに過去2回参戦した経験もあり、ここで流れを変えたいところだ。

Mスポーツ・フォードは、ガス・グリーンスミスとともにアドリアン・フルモーが再び2台目のフォード・フィエスタWRCを駆る。エストニアではWRC2部門にエントリーしていたフルモーは、テーム・スニネンとWRカーをシェアするプログラムとなっている。そのスニネンは、初めてのイープルラリーではフォード・フィエスタ・ラリー2 Mk IIでの参戦となる。

トヨタの育成ドライバー、日本の勝田貴元は、コ・ドライバーのダニエル・バリットがエストニアで負傷した背中の治療により欠場するため、キートン・ウィリアムズを迎えての参戦となる。ウィリアムズがWRカーで参戦するのは初めてだが、これまでにもテストで勝田のコ・ドライバーを務めてきた。ヒュンダイ2Cコンペティションは、ヒュンダイi20クーペWRCのドライバーにピエール‐ルイ・ルーベをエントリーさせている。

WRC2選手権では、トップ5のドライバーがイープル初参戦、またはポイント対象外での参戦に留まっており、接戦のタイトル争いで激しいポイント獲得合戦が繰り広げられそうだ。ここに加わるのは、2016年にERCジュニア選手権部門でイープルラリーに参戦しているニコライ・グリアジンや、今戦でヒュンダイi20 Nラリー2の実戦デビューを担うヤリ・フッツネンとオリバー・ソルベルグ。さらにスニネンと、2020年のジュニアWRCチャンピオン、トム・クリステンソンもエントリーに名を連ねる。

WRC3選手権には19人がエントリー。選手権首位に立つヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)は選手権リードを広げることを目指すが、イープルラリーを熟知している地元ベルギーの強豪ドライバーとの対決が待っている。過去、同イベントでの勝利も経験しているピエトル・トエン(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は1月のラリーモンテカルロにはコ・ドライバーとして参戦している。そのほか、ベルギーチャンピオンのアドリアン・フレネモント、現在ベルギー選手権で首位に立っているギスラン・デ・メビウス(いずれもシュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)も登場する。

ジュニアWRCでは、前戦のエストニアで初勝利を挙げたサミ・パヤリが選手権首位に浮上。しかし、2番手で追うマルティン・セスクとの差はわずか4ポイントだ。第1戦のウイナー、ジョン・アームストロングもタイトル争いでは好位置につけている。今季のJWRCは、イープルを含めて残り2戦となっている。

イープル・ラリーベルギーには、FIA RGTカップも懸けられている。フランスでカップ首位に立っているエマニュエル・ギグーに加え、1982年のイープルラリー覇者でベルギーモータースポーツ界のレジェンド、マルク・デュエスを含め、エントリー7台はすべてアルピーヌA110だ。

■ラリールート

TOYOTA

ベルギ北西部のフランダース地方を走行するデイ1とデイ2はイープルの北部と南部に非常にコンパクトなルートが設定され、タイト&ツイスティな農道を使用。コースサイドには側溝や電柱が並び、危険も多い。競技は8月13日金曜日、午前中にシェイクダウンが行われた後、午後にデイ1が設定されている。この日は、石畳の上りでフィニッシュを迎える名門ステージのKemmelbergを含めた8SSの構成で、午後から夜間に渡って走行する。14日土曜日はイベント最長のHollebeke(25.86km)を2回走行。イープルで高い人気を誇るDikkebusとWatouもこの日に設定されている。競技最終日となる15日日曜日のルートはイープルラリーとしてはまったく新しいエリアに設定され、300km近く東に移動して名門サーキット、スパ・フランコルシャンとその周辺の道が舞台。F1のベルギーGPも開催されるこのサーキットも、独特の試練を与えることになり、よりリズムに乗る特徴の道は言うまでもなく油断できない。

■ラリーデータ
開催日:2021年8月13-15日
サービスパーク設置場所:イープル
総走行距離:949.49km
総ステージ走行距離:295.78km(SS比率31.15%)
総SS数:20

■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
JWRC

■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
セバスチャン・オジエ (#1)
エルフィン・エバンス (#33)
カッレ・ロバンペラ (#69)

[ヒュンダイ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#11)
オィット・タナック(#8)
クレイグ・ブリーン(#42)

[Mスポーツ・フォードWRT]
ガス・グリーンスミス(#44)
アドリアン・フルモー(#16)



ラリプラメンバーズ2024募集中!!