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WRCワーキンググループの提言が承認、2025年以降にラリー1のハイブリッドユニット廃止など大幅改革へ

©M-SPORT

FIAは2月28日、今年最初の世界モータースポーツカウンシル(WMSC)のミーティングをスイスのジュネーブで開催。昨年末に立ち上がったWRCワーキンググループによる様々な提言を承認した。

今回のWMSCでは、WRCワーキンググループは、WRCの現状を検証し、ラリーの中でも維持するべき重要な特性をまとめ、将来のための一連の目標を定義した。

2023年12月にFIA総裁のモハメド・ビン・スライエムの要請により設立され、FIAスポーツ担当副会長のロバート・レイドとWMSCメンバーのデイビッド・リチャーズが代表を務めるWRCワーキンググループは、WMSC代表のギャリー・コネリー、ローナン・モーガン、アンドリュー・マラリュー、FIA幹部のアンドリュー・ウィートリー、クサビエ・メステランーピノンで構成。今回の提言では、選手権のPR、マーケティング、プロモーションに重点を置いての計画を優先し、競技面と技術面については変更に向けた枠組みを策定する目標を示した。

WRC委員会は現在、WRCワーキンググループの提言に基づき、6月11日に予定されている次回のWMSCミーティングに提出する具体的な提案の草案を作成しており、2025年WRCシーズン以降の新しい競技規則と技術規則は、今年の6月末までに発表される予定だという。

WRC委員会は、豊富な専門知識と経験を活用するだけでなく、WRCファンからのアンケート調査の結果も考慮する。FIAが委託し、1万1000以上の回答を集めたこのアンケートでは、ラリーの形式、車種、仕様など、貴重なフィードバックが得られたという。

FIA

今後に向けての主な目標は以下のとおり
[プロモーション]

・各ラウンドでのプロモーション機会を活用し、WRCの潜在能力を最大限に引き出すため、FIA内にWRCプロモーションチームを設置。WRCプロモーター、イベント主催者、マニュファクチャラーチームの関係者と緊密に協力していく。
・WRCプロモーションチームが主に重点を置くのは、WRC憲章の策定。この憲章は、合意された一連の目標とKPI(重要業績評価指標)を照らし合わせ、WRCをより広く浸透させるための、すべての関係者のコミットメントを定義するもの。協調してアプローチしていくことで、WRCを世界有数のモータースポーツ選手権として現在のファン層以外にも広めるために、各関係者の専門知識を活用するとしている。

[競技面]
・ラリー主催者には、ラリーのルート設定についてより高い自由度が与えられる。イベントのスタート日やステージの距離は様々であっても、現在のすべてのラリーは日曜日にパワーステージでフィニッシュする。グローバルなカレンダーを構成するため、既存のフォーマットに沿ったラリーに加えて、短距離のスプリント・スタイルや長時間の耐久イベントが数戦含まれる可能性もある。それでも、ターマック、グラベル、スノーのイベントを盛り込んで構成するため、シーズン全体のステージの総距離はほとんど変わらない。
・コスト削減の一環として、将来的には3台体制のチームスタッフの目標人員数に上限が設けられる。
・サービスパークの設置において、マニュファクチャラーに現地で調達した構造物を作業スペースとして割り当てるという、新しいモデルに従う。コスト削減と輸送量の削減だけでなく、より柔軟な対応が可能になることで、イベント中にサービスパークの場所を変更することもできるようになる。また、イベント主催者がサービスパークに必要とする総面積も削減できる。
・イベント主催者に求める許容度が大きいフォーマットを採用するため、リエゾン区間の距離を短縮し、イベントの範囲を広げられるようにするためリモートサービスの設置が奨励され、チームには小型のサポートカーで限られたパーツを運ぶことを許可するようにする。

[技術面]
・現在のラリー1車両は2025年、2026年もシリーズ最高峰の規定車両とするが、コスト削減とパフォーマンス抑制のために改良を行う。これには、プラグインハイブリッドユニットの廃止が含まれ、その分の性能は全体の重量軽減、エアリストリクターとエアロダイナミクスの削減で補う。
・ラリー2車両は、現在の公認期間中は現在の方式を継続し、国際シリーズ、国内選手権のベース車両となる。しかし、2025年以降、WRCラウンドに参戦するラリー2車両には、ラリー1車両とラリー2車両の性能差を縮めるために、大径リストリクター、大型エキゾースト、オプションのパドルシフト・ギアボックス、リヤウイングからなるWRCキットを装着して走行する選択肢が与えられる。
・2026年からは、WRCの最上位カテゴリーであるラリー1の技術規則が、現行のラリー1のコンセプトに基づいて改訂される。この規定は、2026年シーズンは現行のラリー1規定と並行して実施される。新規定では、コストと複雑さを軽減するために共通のセーフティセルを使用し、メーカーやチューナーは、Bクラス、Cクラス、コンパクトSUVなどの市販モデルや、性能を均等にするために重心やエアロダイナミクスなどの厳しい技術基準に基づいて設計されたコンセプトカーをベースに、独自の車体構造を持つ車両を開発することができる。出力は330hpを目標とし、エンジン性能は全車共通の基準トルクカーブによって制御される。エンジンとトランスミッションにはコスト上限が設けられ、テクノロジーはラリー2同等に制限される。開発とコストを抑制するために空力効率とともに最高速度が制限される。
・1台あたりのコストは40万ユーロ(約6520万円)を上限とし、WRCマニュファクチャラーは、WRCイベントのフィニッシュ・パルクフェルメからラリーカーを直接販売できるようにすることが義務づけられる。
・できるだけ早い段階でWRCには電動部門を導入する。FIA技術部門は、新しいラリー1のセーフティセルを活用し、サステナブル燃料で走るラリー1と同等の性能を達成できるような適切な技術規定を確立する責任が与えられている。

FIAのスライエム総裁は「WMSCのメンバーは、WRCワーキンググループの提言を慎重に検討し、設定された一連の目標を支持することで一致した。WMSCの承認を得たことで、WRC委員会は将来的な方向性を決定するための提案をまとめることができた。選手権、関係者、ラリー全体のコミュニティにとって非常に大きな時期を迎えている。また、WRCのファンからのアンケート結果を、WRC委員会が最終提案を起草する過程で慎重に検討されることも重要なことだ。現在にふさわしく、未来にふさわしいWRCを実現するためのプロセスを継続するため、参加してくださったすべての方々に感謝する」と語っている。

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