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全日本ラリー高山:終盤ターマック2連勝のヘイキ・コバライネンが逆転タイトルを獲得

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2025年シーズン全日本ラリー選手権第8戦「第52回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2025 supported by カヤバ」が、10月17日(金)~19日(日)にかけて、岐阜県高山市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスはヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGRヤリス・ラリー2)が優勝。2位に勝田範彦/保井隆宏、3位に奴田原文雄/東駿吾が入り、GRヤリス・ラリー2勢が表彰台を独占した。

■レグ1

前戦久万高原から、2週間という短いインターバルで迎えた最終戦ハイランドマスターズ。僅差のタイトル争いが続くJN-1クラスとJN-2クラスは、この最終戦までチャンピオン決定が持ち越された。JN-1クラスはポイントリーダーの勝田範彦を筆頭に、コバライネン、奴田原、新井大輝/立久井大輝(シュコダ・ファビアR5)が約10点差にひしめいており、いずれもタイトル獲得には、このラリーでの勝利が必須。久万高原で今シーズン初勝利を決めたコバライネンも「この週末のターゲットはシンプルだ、このラリーに勝てばいい。それが唯一の目標になる」と語る。

ラリー初日はサービスパークが置かれた高山市位山交流広場を起点に、「牛牧上り(4.35km)」、「あたがす(9.54km)」、「アルコピア-無数河(6.08km)」の3SSをリピートする6SS、39.94km。この時期の高山は天候の変化が激しく、路面コンディションに合わせたタイヤ選択が勝負の鍵となる。

朝の段階でのコンディションはドライ、夜半からは雨が降るとの予報もある。SS1はコバラインが幸先よく一番時計を刻んだ。2.3秒差の2番手に新井大輝、3.9秒差の3番手に勝田、5.4秒差の4番手に奴田原、7.0秒差の5番手に鎌田卓麻/松本優一(シュコダ・ファビアR5)が続く。SS2もコバライネンが新井大輝に1.6秒差をつけて獲り、新井大輝との差を3.9秒差に拡大。8.2秒差の3番手に勝田、奴田原をかわして鎌田が4番手にポジションを上げている。

SS3もコバライネンが新井大輝を0.9秒しのぎ、午前中に行われた全ステージでベストタイム。それでも2番手につける新井大輝との差はわずか4.8秒と、依然として僅差のバトルが続く。13.0秒差の3番手は勝田、SS3で鎌田を上まわった奴田原が23.2秒差の4番手につけている。

サービスを挟んだ午後のセクション、SS4でまさかのドラマが待っていた。逆転を狙いアタックを仕掛けた新井大輝がスタートから1km地点でブレーキをロックさせ、アウト側にはらんでしまう。右リヤをヒットして足まわりに大きなダメージを負い、この時点で新井大輝はこの日の走行続行を断念。ベストのコバライネンが首位をキープし、16.6秒差の2番手に勝田、28.1秒差の3番手に奴田原、32.1秒差の4番手に鎌田と、ひとつずつ順位を上げた。

コバライネンはSS5もベスト、降雨がありハーフウエットとなったSS6はセカンドベストでまとめ、2番手の勝田との差を24.9秒差に広げて初日を終えた。午前中から続くデフトラブルを抱えながらもSS6で再び奴田原をパスした鎌田が、43.5秒差の3番手。鎌田とわずか0.7秒差の4番手には奴田原、SS6でコバライネンの連続ベスト記録をストップさせた福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアRSラリー2)が44.8秒差の5番手。新井敏弘/小坂典嵩(スバルWRX VBH)は、1分6秒7差の6番手につけている。

JN-1クラス初日首位のヘイキ・コバライネン/北川紗衣(AICELLO速心DLヤリスRally2)/Jun Uruno

「良いバトルをしていたし、ヒロキさん(新井大輝)がリタイアしたことが本当に残念だよ。25秒差を得たが、まだ十分なリードとは言えないと思う。明日は不安定なコンディションになりそうだし、マージンを取って走れるほどのタイム差じゃない」と、コバライネンは慎重にコメントした。

新井大輝のリタイアにより2番手で初日を終えた勝田は「クルマの調子は悪くないんですが、だいぶ離されてしまいましたね。明日はセッティングを変えつつ、タイヤをどうしようか悩んでいます。ヘイキ(コバライネン)さんや大輝には、まだまだ追いつけていませんし、こちら側に課題を感じています」と、厳しい表情を見せる。

JN-2クラスは、SS1からコンマ秒差で競う僅差のバトルが繰り広げられた。SS3を終えて三枝聖弥/木村裕介(トヨタGRヤリス)が小泉敏志/村山朋香(GRヤリス)に2.2秒差をつけてトップに立った。しかし、三枝はSS4のスタート直後にコースオフ。これでトップに立った小泉もSS5でタイムが伸びず、4番手まで順位を下げる。このSS5でトップに立ったのが、前半のセクションはエンジンの制御系トラブルからタイムが伸びなかった山田啓介/藤井俊樹(GRヤリス)だった。山田はタイトルを争う貝原聖也/西﨑佳代子(GRヤリス)に3.1秒差をつけてトップで初日を折り返す。16.7秒差の3番手に戻した小泉、20.2秒差の4番手に大倉聡/豊田耕司(GRヤリス)が続く。MORIZO Challenge Cup(MCC)に参戦し、JNー2のランキングトップの大竹直生/橋本美咲(トヨタGRヤリス)はSS2で右リヤを壁にヒットし、右リヤタイヤをパンク。このステージだけで1分以上のタイムをロスし、2分3秒7差の9番手と大きく出遅れた。

JN-2クラス初日首位の山田啓介/藤井俊樹(FITEASYソミック石川DLGRヤリス)/Jun Uruno

自身初の全日本王座を狙う山田は「午前中のトラブルを修正してもらって、だいぶ走りやすくなりました。大倉選手や小泉選手と接戦だったこともあり、貝原選手がトップになってしまうとタイトルを獲られてしまうので、安全マージンを取りつつ午前中よりもペースを上げることができました。明日も今日の延長線上で走れば、なんとか逃げ切れそうです」と、コメント。僅差の2番手につける貝原は「山田選手と3秒差ですから、いいポジションで終われたと思います。タイム差はほぼないので、この後、ペースノートをしっかりチェックします。安心して踏めるようなノートを作って、明日に備えます」と、逆転を狙う。

JN-3クラスは、SS1は昨年の高山では初日をトップで折り返している鈴木尚/島津雅彦(スバルBRZ)、SS2は昨年の高山の覇者である上原淳/漆戸あゆみ(スバルBRZ)、SS3は6年ぶりにコンビを組んだ山口清司/竹原静香(トヨタGR86)、SS4は窪啓嗣/藤口裕介(トヨタGR86)がベストタイムをマーク。この大混戦のなか、ウエットとなったSS6を制した山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)がトップで初日を折り返した。6.4秒差の2番手にはSS5でこの日2度目となる一番時計を刻んだ上原、11.0秒差の3番手に窪がつける。

JN-3クラス初日首位の山本悠太/立久井和子(SammyK-oneルブロスYHGR86)/Jun Uruno

ベストタイムは1回に留まったが、上原を抑えてトップに立った山本は「午後は僕らだけがウエットタイヤを履いたんですが、SS6の前に降雨があって、それがハマった感じですね。6秒とマージンは少ないので、明日もしっかりと路面をケアしながら走ります」と、冷静に振り返った。僅差の2番手につけた上原は「そもそもSS6は苦手なステージでしたが、これだけ路面が濡れてしまうことは想定していませんでした。ドライでのフィーリングが良かったので、明日は雨が降らないことを願っています」と、最終日の天候を心配している。

JN-4クラスは、第6戦北海道でチャンピオンを決めた高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)と、シリーズ2位のチャンスを狙って参戦した鮫島大湖/船木佐知子(スイフトスポーツ)が、SS1からベストタイムを奪い合う展開。首位高橋と2番手鮫島が1.8秒差で迎えたSS5、鮫島が痛恨のコースオフ。鮫島が戦列を去ったことで、2番手に須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)、3番手に鶴岡雄次/山岸典将が順位を上げる。首位の高橋はSS6を2番手タイムでまとめ、2番手の須藤に19.1秒差をつけて初日を終えた。

JN-4クラス初日首位の高橋悟志/箕作裕子(ミツバWMDLマジカル冷機スイフト)/Jun Uruno

難しいコンディションながらも安定した走行を続けた高橋は「路面がグリップするようでしない、かなり難しいコンディションでした。久万高原で不調に悩まされたクルマは無事に直りました。普通に走ってくれているのが、一番嬉しいです」と、コメント。2番手の須藤は「いろいろと試しながら、だんだんと前に追いついてきました。明日はかなり荒れたコンディションになるでしょうし、何か起こしたいですね。まずは無傷で帰ってきたいです」と、最終日での挽回を誓った。

JN-5クラスは、SS4まで阪口知洋/野口智恵美(日産マーチNISMO S)がトップを快走する。しかし、SS2からSS5まで連続ベストを並べた小川 剛/山本祐也(トヨタ・ヤリス)が、SS5でついに阪口を逆転。小川はSS6でもベストタイムをマークし、阪口に29.9秒差をつけて初日をトップで折り返した。34.2秒差の3番手は前戦久万高原でタイトルを決めた河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ15MB)、38.9秒差の4番手に島根剛/粕川凌(ヤリス)が続く。

JN-5クラス初日首位の小川剛/山本祐也(itzzノアBRIDE DL ANヤリス)/RALLYPLUS

終わってみれば、SS1以外の全SSでベストタイムを並べた小川は、前戦久万高原でクラッシュしたため、今回はレンタルした車両での参戦。「正直、首位にびっくりしています。午後の3本はウエットタイヤを履いたことで、安心して走ることができました」と、笑顔を見せた。2番手の阪口は「SS5とSS6で先にいかれてしまいましたね。路面が変化したことで、スライドコントロールの上手い人にいかれてしまいました。明日も滑ると思うので、いい経験が積めています。あまり遅いと上手くならないので、しっかりプッシュしながら完走したいです」と、成果を語っている。

JN-Xクラスは、開幕から7連勝中の天野智之/井上裕紀子(トヨタRAV4 PHEV)が、変化の激しいコンディションとなった初日において、全SSでベストタイムをマーク。2番手の清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)に1分26秒0の大差をつけて見せた。幾度となくコースオフを喫しながらも、海老原孝敬/蔭山恵(ホンダCR-Z)が3分01秒6差の3番手でこの日を走り切っている。

JN-Xクラス初日首位の天野智之/井上裕紀子(TRT・DL・RAV4 PHEV)/RALLYPLUS

今回も盤石の強さを見せた天野だが「かなりスリッパリーなコンディションでしたが、タイヤが合っていたので、それに助けられました。クラスベストは獲得できていますが、もっとパフォーマスを出せるクルマなので、そこに関しては少し残念です。明日はウエットになると、RAV4には厳しいので、かなりペースを落とすと思います」と、最終日のコンディションを警戒する。

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