
ERC最終戦クロアチアラリー(ターマック)が10月3日〜5日、首都ザグレブを拠点に開催された。三つ巴の戦いとなっていたタイトル争いに加わっていたMスポーツ・フォードのジョン・アームストロング(フォード・フィエスタ・ラリー2 MkII)が、パワーステージも制して最大ポイントを獲得して、今季2勝目を飾った。同じくタイトルを争っていたアンドレア・マベリーニ(シュコダ・ファビアRSラリー2)が土曜日のSS4でクラッシュアウトを喫しており、アームストロングがタイトルを手にするためには、選手権リーダーのミコ・マルチェク(シュコダ・ファビアRSラリー2)が7位以下でフィニッシュすることが条件となっていた。
そのマルチェクは、アームストロングに1分46.1秒遅れの3位でフィニッシュ。ポーランド人としては、2017年のカエタン・カエタノビッチ以来のERCチャンピオンに輝いた。
土曜日のレグ1は6番手だったマルチェクだったが、日曜日の朝のサービスでノルベルト・メイヤー(シトロエンC3ラリー2)にサービスアウトが遅れたことで10秒のペナルティが科されたことで、労することなく5番手に浮上。激しい雨に見舞われたレグ2、SS7でミーレ・ヨハンソン(ファビアRSラリー2)がクラッシュを喫したことで、このステージでベストタイムをマークしたマルチェクは4番手に浮上した。さらに、初日2番手につけていたロベルト・ビルベス(ファビアRSラリー2)がSS8でスピンを喫してバンクに突っ込んだことで3番手に後退。これでマルチェクは、4番手のロメ・ユルゲンソン(フィエスタ・ラリー2 MkII)に1分21秒9のマージンを築いての3番手に浮上した。
2回目の走行がパワーステージに指定されているこのSS8では、アームストロングが渾身の走りでトップタイムをマーク。前日のレグ1は6SS中、5本をベストタイムで揃え27.3秒のリードを築いていたアームストロングは、リードを41.7秒に広げて最終2本を迎えた。ラスト前のSS9ではマルチェクがベストタイムを奪取したが、パワーステージではアームストロングが14.24kmのステージでマッズ・オストベルグ(C3ラリー2)に3.9秒差をつけてのベストタイムをマーク。ラリー勝利を飾ったが、タイトルには6ポイント届かなかった。
激戦を制したマルチェクは「いろいろな思いがあふれて、何て言えばいいか分からないが、うれしいよ」と喜びを語った。今季は8戦中5戦でポディウムフィニッシュをマークし、7位以下でのフィニッシュは一度もないという安定感を見せた。
「自分のプロセスを信じることが重要だ。自分の競技生活のなかで、最大の夢だったかもしれない。15歳の時にインドアカートを始めて、ラリーに転向してからの目標だった。ERCでタイトルを獲ったポーランド人は3人いるが、そのグループに入ることができたのは特別なこと。長年、自分を支えてきてくれたすべての人に感謝したい」
猛追が及ばなかったアームストロングは「厳しいコンディションのなかでコントロールしなくてはならなかったし、パワーステージではベストタイムもマークした。精いっぱいやった」と語った。
一方、クラッシュでタイトルを逃したマベリーニは、マルチェクに2ポイント差で最終戦を迎えていた。
「オーバークレストのコーナーでリヤのグリップを少し失ってしまった。予想していなかった。それでスピンをしてしまった。その先に石があり、マシンのフロントパーツが取れ、ラジエターが破損してしまい、エンジンからオイルも漏れ始めてしまった。それ以上、走り続けることはできず、そこで夢が終わってしまった」と悔しさを語った。
3位は、今回が300回目のラリー参戦となったオストベルグ。英国選手権のリーダー、ユルゲンソンは、SS6でパンクに見舞われ8番手まで後退したところから追い上げ、4位でフィニッシュ。WRCセントラルヨーロッパの準備参戦として挑んだビルベスは、レグ1を終えた時点で2番手につけていたが、SS8のスピンでは、スペクテイターの助けを借りるまで2分近くのロスを喫した。6位には、WRC2にも参戦しているラウリ・ヨーナ(ファビアRSラリー2)が食い込んでいる。
ERC3はティメック・アブラモフスキー(フィエスタ・ラリー3)、ERC4とジュニアERCはカーレ・カールベルグ(オペル・コルサ・ラリー4)がタイトルを獲得した。
(Graham Lister)
ERCクロアチア 最終結果
1 J.アームストロング(フォード・フィエスタ・ラリー2MkII) 1:50:57.4
2 M.オストベルグ(シトロエンC3ラリー2) +45.7
3 M.マルチェク(シュコダ・ファビアRSラリー2) +1:46.1
4 R.ユルゲンソン(フォード・フィエスタ・ラリー2MkII) +2:47.3
5 R.ビルベス(シュコダ・ファビアRSラリー2) +3:25.7
6 L.ヨーナ(シュコダ・ファビアRSラリー2) +3:58.6
7 E.カイス(ヒョンデi20Nラリー2) +4:10.8
8 N.メイヤー(シトロエンC3ラリー2) +4:27.5