
©山本雄紀/ジェームズ・フルトン/TOYOTA
10月3日〜5日に開催されたERC最終戦クロアチアラリー(ターマック)に、TOYOTA GAZOO Racing WRC チャレンジプログラム2期生の山本雄紀がトヨタGRヤリス・ラリー2で、3期生の後藤正太郎と松下拓未がルノー・クリオ・ラリー3で参戦。山本は総合11位、松下はERC3クラス9位でフィニッシュした。後藤は最終日にリタイアを喫した。
また、山本が11月6日〜9日に開催されるWRC第13戦ラリージャパン(愛知県拠点、ターマック)に、昨年に引き続き参戦することも発表された。
(以下、発表内容)
TOYOTA GAZOO Racing WRC チャレンジプログラム
2期生と3期生が難関ターマックイベント、クロアチア・ラリーに出場し
山本は総合11位で、松下はERC3クラス9位でフィニッシュ
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀、3期生の後藤正太郎と松下拓未が、10月3日(金)から5日(日)にかけてクロアチアで開催された、FIAヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第8戦「クロアチア・ラリー」に出場。非常に難易度の高いターマック(舗装路)ラリーで、山本は総合11位でフィニッシュ。松下はERC3クラス9位で完走しましたが、同クラスの後藤は最終日にリタイアとなりました。
今年、ERCの最終戦として開催されることになったクロアチア・ラリーは、2026年にはFIA世界ラリー選手権(WRC)のカレンダーに復帰します。クロアチア・ラリーは過去2021年から2024年にかけてWRCとして行なわれ、非常にトリッキーかつ難易度の高いターマックラリーという評価が定着しています。路面の舗装状態が刻々と変化し、路肩部分にタイヤを落として直線的な走行ラインをとる「インカット」が可能なコーナーも多くあるため、路面に泥や砂利が広がりやすく、グリップレベルは絶えず変動します。さらに、雨が降るとグリップがさらに低下するため、ドライバーには路面の変化を読む能力と、迅速な対応力が求められます。
2期生の山本にとってクロアチア・ラリーは、初チャレンジだった2024年大会以来となる2回目の出場。2025年のWRCはシーズンの途中でグラベル(未舗装路)ラリーが続いたため、山本にとっては4月のWRC第4戦ラリー・イスラス・カナリアス(スペイン)以来、久々のターマックラリー出場でした。個人的な理由により過去2戦を欠場していたコ・ドライバーのジェームズ・フルトンとのペアも復活し、彼らにとって今年最後のWRC2参戦イベントとなるラリージャパンに向けて、準備を進めることも今回のクロアチア・ラリーでの大きなテーマでした。
ラリー最長の土曜日、山本は午後のループで非常に良い走りを続け、総合9位まで順位を上げました。しかし一日の最後のSS6でタイヤにダメージを負い、交換作業のため約2分をロス。その結果、総合14位まで順位を下げました。しかし、日曜日はSS8で5番手タイムを記録するなど再び速いペースで走行。土曜日よりも走行距離は短かったものの、降雨により非常に難しいコンディションとなったクロアチアの道を走り切り、総合11位まで順位を挽回してラリーを終えました。
3期生の後藤と松下にとって、非常にトリッキーな路面コンディションのターマックラリーに出場するのは今回が初となり、ラリー・イスラス・カナリアスとは大きく異なる道で多くの課題と向き合いました。松下とコ・ドライバーのペッカ・ケランダーは、SS1でERC3クラス3番手のタイムを記録し好スタートを切りましたが、続くSS2のグラベルが多く散乱したコーナーでコースアウト。サスペンションにダメージを負い、デイリタイアとなりました。しかし、松下は翌日の日曜日に再出走し、クラス4番手タイムを2回記録してERC3クラス9位で完走しました。一方、後藤とコ・ドライバーのユッシ・リンドベリはSS1でERCクラス5番手タイムを、SS2と3で4番手タイムを、SS4と5で3番手タイムを、一日の最後のSS6ではベストタイムを記録。クラス3位につけました。しかし、日曜日最初のSS7でコーナーを深くインカットした際、サスペンションを破損。ラリーからのリタイアを余儀なくされました。
ユホ・ハンニネン(インストラクター)
山本にとって今回のラリーの主な目的は、WRCでは久々の出場となるターマックイベント、ラリージャパンに向けて準備を行うことでした。そのため、このラリーのためにタイヤ選択を最適化するのではなく、日本で履くことができるタイヤを使うことに重点を置きました。山本にとって予選セッションは難しいものとなり、その結果競技初日である土曜日のスタート順位は最適ではありませんでした。それもあって午前はリズムを探りながらの走行になりましたが、午後は明らかに良い走りを見せていました。日曜日は非常に厳しいコンディションでしたが、彼はそれにうまく対応しつつ、とても良い走りを続けました。あらゆるコンディションとタイヤのオプションを経験することができたので、日本戦に向けて良い準備ができたと思いますし、彼が日本で良い結果を出せることを願っています。後藤と松下にとっては、これまで経験してきた中で最も難しいコンディションのターマックイベントとなり、目から鱗が落ちるような経験だったと思います。残念ながら松下は土曜日の早い段階でリタイアとなりましたが、日曜日は雨と泥のコンディションで経験を積むことができました。一方、後藤は土曜日にドライ路面での経験を積み、日曜日は早々にリタイアを喫しました。両者とも今シーズンは非常に良い進歩とペースを見せてきましたが、今回のようなラリーは将来に向けて、彼らと取り組むべき点をより一層明らかにする助けとなります。
山本雄紀
ラリー・イスラス・カナリアス以来となる、久々のターマックラリーで、しかも全く異なる路面とコンディションで走ることができて良かったです。感覚をすぐに取り戻すことは簡単ではありませんでしたが、着実かつクレバーなアプローチで戦うことができたと思います。昨年のラリー・クロアチアと比べると、スタート時のペースは悪くなく、土曜日を通して常に向上していました。そして、SS6でもパンクをするまでスプリットタイムは良好でした。日曜日のようなコンディションは初めてで容易ではありませんでしたが、特にタイヤに関して貴重な知見を得ることができました。危ない場面も何度かありましたが、完走し全走行距離を消化できたのは良かったです。ラリージャパンに向けて良い準備ができたので、日本で良いパフォーマンスを発揮できることを期待しています。
後藤正太郎
このラリーは全くの初体験だったので、可能な限り多くの経験を積むことが目標でした。初日の土曜日は計画通り順調に進みました。序盤は安定したペースではあるものの、トップとの差は大きかったですが、終盤にかけてペースを上げることができました。そして、他の多くの選手が問題に見舞われる中、自分はトラブルと無縁でした。それは非常に良かったのですが、日曜日は雨の影響で完全に別のラリーになりましたた。前日と同じプランで走ろうと試みたのですが、あるコーナーでインをカットし過ぎて側溝から抜け出すことができなくなり、クルマにダメージを負ってしまいました。少し不運でしたがこれも学びの一部です。全体的に、今年は本当に楽しい一年でした。何度かミスをしましたが良い時もあり、初年度よりもさらに多くのことを学ぶことができました。
松下拓未
これまで経験したことがないようなコンディションでの、新たな体験でした。初日はSS1で良いスタートを切りましたが、残念ながらSS2でリタイアとなってしまいました。そのコーナーはペースノートに記していなかった大量のグラベルに覆われていて、グラベルが出ていた他の場所よりも砂が多く滑りやすかったので、速度を落とすためにもう少し調整すべきでした。2日目は本当に過酷でトリッキーなコンディションでしたが、それでも楽しむことができました。多くのことを学び、経験を得られたので満足しています。総合的に見て、今年は満足のいく年だったと思います。四輪駆動車での初挑戦だったにも関わらず、いくつかのラリーではクラス上位の選手たちと互角に戦うことができたので、非常に良い一年でしたし、多くの学びを得ることができました。
ラリー・クロアチアの結果(総合)
1 Jon Armstrong/Shane Byrne (Ford Fiesta Rally2) 1h50m57.4s
2 Mads Østberg/Lorcan Moore (Citroën C3 Rally2) +45.7s
3 Miko Marczyk/Szymon Gospodarczyk (Škoda Fabia RS Rally2) +1m46.1s
4 Romet Jürgenson/Siim Oja (Ford Fiesta Rally2) +2m47.3s
5 Robert Virves/Jakko Viilo (Škoda Fabia RS Rally2) +3m25.7s
6 Lauri Joona/Kristian Temonen (Škoda Fabia RS Rally2) +3m58.6s
11 山本 雄紀/ジェームズ・フルトン (Toyota GR Yaris Rally2) +5m22.9s
ラリー・クロアチアの結果(ERC3クラス)
1 Taylor Gill/Daniel Brkic (Ford Fiesta Rally3) 2h00m00.1s
2 Tymek Ambramoski/Jakub Wróbel (Ford Fiesta Rally3) +3m26.1s
3 Hybert Kowalczyk/Jarosław Hryniuk (Renault Clio Rally3) +4m00.5s
4 Błażej Gazda/Michał Jurgała (Renault Clio Rally3) +8m35.5s
5 Adrian Rzeźnik/Kamil Kozdroń (Ford Fiesta Rally3) +10m32.1s
6 Martin Ravenščak/Dora Ravenščak (Ford Fiesta Rally3) +14m01.6s
9 松下拓未/ペッカ・ケランダー (Renault Clio Rally3) +51m49.1s
R 後藤正太郎/ユッシ・リンドベリ (Renault Clio Rally3)
■次回のイベント情報
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2025年シーズンは、11月6日(木)から9日(日)にかけて日本で開催される、FIA世界ラリー選手権(WRC)第13戦「ラリージャパン」が最後の戦いに。山本が、昨年に続きGR Yaris Rally2でホームイベントに挑みます。