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全日本ラリー久万高原:競技初日は1.8秒差で福永修がリード

©Jun Uruno

10月30日(土)にスタートを迎えた全日本ラリー選手権第4戦久万高原ラリー。もともと5月に開催される予定だったものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって10月に延期され、実質的な最終戦としての開催となった。2020年には新型コロナの影響で開催を断念していたため、2年ぶりの開催だ。ただし、これまで久万高原ラリーの代名詞とも言える尾根沿いの『大川嶺』が崩落のために使えず、SSは森の中のワインディングロードが舞台となった。

競技初日の天候は晴れ、ドライコンディションのもとで2SSを3回走行する計6SS、63.54kmという構成だ。ループごとにサービスが設けられる変則的なスタイルがとられている。これまでも使ってきたことのある林道だが、2年ぶりということでコケが生えている部分があったり、インカットで砂利が掻き出される部分があるなど、ひと筋縄ではいかないと、レッキを終えた選手たちは語っていた。さらに2日目の日曜日には降雨の予報も出されており、各選手とも警戒しながらの初日スタートとなった。

JN1クラスは勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス)が福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5)に3点のリードという緊迫した状況だ。オープニングステージのSS1は、勝田が先制。SS2番手に新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)、SS3番手に鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)が続き、福永は7.6秒差の4番手に。しかし福永もここから怒濤の巻き返しに転じ、SS2〜SS4まで3連続ベストタイムをたたき出して勝田に8秒差をつける首位に躍り出た。この日2度目のサービスで2本新品のタイヤを投入した勝田はSS5で一番時計をマークし、福永との差を1.8秒にまで縮めることに成功した。そして最終SS6では福永、勝田ともに10分55秒9という同タイムでのベスト。緊迫した戦いは最終日の2SSに持ち越しとなった。

3番手には新井大輝、4番手には新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)とスバル勢が続く。今回のラリーで使用できるタイヤの最大本数は8本。新井敏弘と大輝は最初の2SSを終えた段階で想定以上にタイヤの摩耗が進んでいたため、4本とも新品に交換。この日を終えた段階ですでに8本分を使い切ってしまった。5番手には奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)、翌日に備えて4本のみで走り切った鎌田は6番手で初日を終えた。

鎌田と同じくタイヤ4本で初日を走り切った首位の福永は「最後のSSはタイヤも厳しいなか、かなり頑張りました。出し尽くしたくらい踏みました。溝の中を走ったり、紙一重の場所もありましたし、ここまでこのクルマで踏んだことはなかったですね。明日は今日の最後の走りができれば、いけると思っています。とにかく頑張ります」と振り返った。2番手につける勝田は「僕は今日6本使ってしまったので、明日の天候がどうなるかです。いたわりながら走ったので使える部分を残しましたが、厳しいですね」とコメントしている。3番手の新井大輝は、「8本もタイヤを使ってしまいました。それに尽きます」と苦笑い。「サスペンションのセットアップがすごく良くなりました。KYBと一緒に開発しているんですが、去年の今頃は1kmあたり1秒くらい離されていたのが、ちゃんと戦えています。トラブルも一切なかったですし、クルマも乗りやすくなっているんですが、トップが速すぎますね」と、この日を振り返った。

JN2クラスは前戦のハイランドマスターズでチャンピオンを決めたヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)が6SSすべてでベストタイムを並べ、クラストップを快走。2番手には中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3)がつけている。やや離れた3番手はレクサスRC Fで参戦する石井宏尚/竹下紀子が続いている。4番手には中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)という順位。

2番手の中平に対して58.8秒のリードを築いたトップのコバライネンは、「すべてOKだし、問題ないよ。タイヤのウォームアップも問題ないし、アタックしてもスタビリティもばっちりだった。目標にしていた最初のループからいい走りができたし、ペースノートもここまで悪くないし、すごくハッピーだよ」と笑顔を見せる。2番手につけた中平はセットアップで苦戦し、午後にかけて様々なセットアップを試しながらの走行に。「色々なセットアップを試して、ようやくクルマの動きとして、満足できるところまできました。ただ、自分の体感と実際のタイムが離れていってしまっていて、困っています。気持ち的には速くなっているはずなんですが、伸びがそこまで大きくないという状況です。明日に向けては、かなり泥が出ていると思うので、今日の段階でノートをチェックしたいと思います」と1日を振り返った。3番手の石井は「道には慣れてきたんですが、後半はリヤが厳しかったです。明日はやっぱり天気がどうなるかですね。中村選手との一騎打ちになると思うんですが、今日のマージンを吐き出して、いい勝負になりそうです」と語っている。

JN3クラスは、チャンピオン候補の3台による首位争いが展開された。トップは鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)、8.9秒差の2番手に長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)が続き、長﨑から30.2秒離れた3番手には大竹直生/藤田めぐみ(トヨタ86)という順位になっている。首位の鈴木は前戦ハイランドマスターズでも勝利を挙げており、その勢いを今大会でも維持したいところ。鈴木と長﨑はベストを獲り合い、SSごとに順位を入れ替える接戦を展開、最終的に鈴木がリードを収めている。一方、第10戦を終えた段階でランキングトップの大竹はSS4でパンク。タイムロスは最小限に抑えたものの、最後の2SSではリズムに乗り切れずに遅れを喫している状況だ。4番手には山口清司/丸山晃助(トヨタ86)、5番手には全日本ラリーとして初めて新型BRZを持ち込んだ竹内源樹/木村悟士がつけている。

首位の鈴木は「疲れました。最終SSのSS6でリードを広げようと頑張って攻めたんですが、思ったようなリードは得られませんでした。あってないような差ですが、あっても損はしないので、これで良かったかなと。明日はこれからの天気次第で、色々と変わってくると思います」とSS6を終えてコメント。対する長﨑も、「行けるコーナーと行けないコーナーの見極めが重要ですね。ちょっと離されてしまいましたが、雨が降るみたいなので、差はあってないようなものなのかなと。それは前も後ろも同じなんですが。雨の量がどのくらいになるのか。どのくらい残っているのかがキモになると思います」と天候の行方を注視する。3番手の大竹は「悔しいですね……。2ループ目のパンクが良くなったです。最後もリズムに乗れなかったので、明日のロングSSで頑張るしかありません。雨でコケが元気になってしまうのは困るので、明日はそれだけは注意したいです」と苦笑いでこの日を振り返った。4番手の竹内は「暫定仕様ではありますが、セットアップを変えながら、ようやく走れるようになってきました。色々とやりたいことも見つかりました。明日は雨が降るということですが、このクルマはすごく合っていると思うので、明日は明日でしっかり巻き直して走りたいです」と、新型の感触を確かめた。

JN4クラスは、前戦でチャンピオンを決めた西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が欠場。岡田孝一/河本拓哉(スズキ・スイフトスポーツ)が4連続ベストタイムをマークし、2番手の鮫島大湖/船木佐知子(スズキ・スイフトスポーツ)に7.0秒のリードを築いてクラス首位に立っている。3番手は、ステージの木漏れ日が見づらくペースをつかみ切れなかったという香川秀樹/松浦俊郎(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)。
僅差で首位を走る岡田は「減衰を変えてからクルマが良くなりましたね。道もだいぶ分かってきたので、2ループ目から行けるところは攻めました。プッシュした甲斐があってSS5で逆転して、SS6でも少し差をつけることができました。明日は雨の予報ですが、どうなりますか」と、翌日の天候を警戒する。2番手の鮫島は「少しずつ課題は修正できているんですが、岡田選手が中盤からどんどんペースを上げていて、なかなか追いつけないですね。まだまだです。もう少しペースを上げていきたいですね。雨が降ってしまうと、また別の課題がでてきてしまうので、天気はなんとかもってほしいですね」と振り返った。3番手の香川は「思ったよりも、クルマが走っていないですね。前戦のハイランドから見直してきたんですが……。今日は3周同じタイヤで行ったんですが、消耗が激しくダメでしたね。タイムも全然伸びなくて。明日は完走をしっかり目指します」と、難しい表情をみせた。

JN5クラスは天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS)がトップ。12.2秒差の2番手には大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)、3番手には小川剛/梶山剛(ホンダ・フィット)、4番手に内藤学武/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)というオーダーに。序盤から3連続ベストタイムで首位を快走していた渡部哲成/佐々木裕一(トヨタ・ヤリス)はSS4で側溝に落ち、脱出に時間がかかり大きくタイムロス。勝負権を失ってしまった。
天野は「今日は登りがけっこうあって、そこでタイムを落としてしまっています。タイヤもブレーキもいいんですが、やはり重量があるので根本的にヨーが大きく、ヒラヒラとは走ってくれないですね。最後のループではフレッシュタイヤを入れたので、SS5でもベストタイムが獲得できました。SS6もベストだったので、ひとまずは良かったです。天気が悪くなったら、フロントだけ切り替える感じです」と振り返っている。2番手の大倉はGRヤリスRSではなくヴィッツでの参戦。「ちょっとブレーキとタイヤが厳しくて、それを考えながらの走りでしたが、全体的には良かったと思います。渡部選手はもったいなかったですね。彼のペースには追いつかなかった。明日はウエットのようなのでショックを変更して臨みます」と語った。3番手の小川は、「タイヤが厳しかったのですが、ショックのセッティングを変えたことで、安全に走れました。タイヤを温存できたので、雨が降ってくれれば、楽しみです」と、笑顔を見せた。

山本雄紀/井上草汰(トヨタ・ヤリスCVT)がリードするJN6クラス。前戦ハイランドマスターズで全日本ラリー初優勝を飾った山本は、この日の6SSすべてでベストタイムをマークする走りを見せ、2番手の海老原孝敬/原田晃一(トヨタ・ヴィッツ)に対して1分28秒3というリードを築いている。3番手には水原亜利沙/美野友紀(トヨタ・ヤリスCVT)という順位となっている。
山本は「思っていたよりも走りやすく、自分が好きな感じの道でしたが、SS4~SS6はあまりタイムが伸びませんでした。明日は雨の予報もありますし、ノートをしっかりチェックして、リードをキープしたいです。ただ濡れているのはOKなんですが、荒れた路面で濡れてしまうと、おさえすぎてしまうので、前戦からの課題ですし、今回はもう少し上手く走りたいですね」と初日の走りについてコメント。2番手につけた海老原は「後半にようやく少し差を縮めることができましたが、まだ負けてしまっています。明日雨が降れば少しはパワー差がなくなると思います。こっちが20馬力くらい低いので、それがどうなるかですね」と意気込みを語る。3番手の水原は「1ループ目の後にセッティングを変えてもらって、ショートステージではタイムアップできました。戻ってしっかりと明日に備えたいと思います。雨でひと波乱ありそうなので、自分たちも気をつけたいです」と、この日を振り返った。

競技最終日の10月31日(日)は、23.38kmを2回走行する2SS、46.56km。初日の2SSをつなげて逆走するという構成だ。初日にインカットで掻き出された砂利が、今度はコーナーの進入に影響を及ぼす部分も出てくる。天候は夜半から雨の予報が出ており、その雨がいつ止むか、どのくらい降るのか、様々な不確定要素が絡む展開が予想された。なお、2021年全日本ラリー選手権統一規則には、『安全上必要と判断した場合、競技長の宣言により規定本数に追加して2本使用することができる』と記載されている。雨が降るなどしてこの宣言が出れば、タイヤの最大使用可能本数は8本+2本で計10本に。しかし、この宣言がなされるかどうかは路面状況による部分が大きく、競技初日を終えた段階では、宣言が出るかどうかは分からないまま。各選手とも天候を気にしながら、競技2日目を迎えることとなった。

久万高原ラリー SS6後結果
1 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5) 48:49.3
2 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス) +1.8
3 新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI) +37.0
4 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) +44.2
5 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +1:03.3
6 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) +1:13.7
7 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3) +1:46.9

10 鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ) +2:43.6
21 天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS) +4:50.5
23 岡田孝一/河本拓哉(スズキ・スイフトスポーツ) +5:22.8
31 山本雄紀/井上草汰(トヨタ・ヤリスCVT) +8:00.0

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