小林直樹カメラマンがワールドラリーカレンダー2021の写真を解説します(第1回) – RALLYPLUS.NET ラリープラス

小林直樹カメラマンがワールドラリーカレンダー2021の写真を解説します(第1回)

©Naoki Kobayashi

11月に発売予定の「ワールドラリーカレンダー2021」。写真を撮影した小林直樹カメラマン本人による解説を、4回にわけてシリーズでお届けします。すでにお伝えしているとおり、今年は取材のチャンスが限られてしまったこともあり、小林直樹カメラマンが選ぶ思い出のラリーということでセレクトしました。A2変形判(縦420mm×横594mm)という迫力のサイズでお届けします。そのなかから、今回は表紙と1月〜3月分を解説!

また、こちらの商品はラリプラメンバーズ特典に含まれています。メンバーズにご入会いただいた皆さまには特典としてお届けいたしますのでお楽しみにお待ちください。

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こんにちは。カメラマンの小林直樹です。今年は新型コロナウイルスの影響もあって、WRCの取材はモンテカルロの1戦しか行けておらず……。カレンダーを制作するのに色々と考えた結果、これまで20年以上WRCを追いかけてきた中で、思い出に残っている写真をお見せしようということになりました。ただ思い出といっても、20年も行っていると相当な数があって、セレクトしてもキリがないくらいになってしまいます。この先ももしかしたらこのシリーズが続くかもしれませんし、2021年版は日本車にスポットを当てたセレクトをしてみました。

◆表紙
2020年ラリーモンテカルロ
トヨタ・ヤリスWRC

Naoki Kobayashi


表紙は、今年唯一行ったモンテカルロから選びました。やっぱり現在の日本車、日本人ドライバーが活躍しているということで、ヤリスWRCの勝田貴元選手にしています。写真はギャップのあたりです。モンテカルロらしさやヨーロッパの集落の感じを表現したかったので、クルマの背景に入るものを注意してアングルを決めています。

ちょうど山の陰で陽は当たっていないのですが、マシンのフロントとサイドが9:1〜8:2くらいに見えて、後ろに集落が入り、ギャラリーも土手の上で見ているといういい場所がありました。ポイントはクルマとお客さんと、後ろの集落をどうやって入れ込むか、というところですね。

◆1月
2008年ラリーモンテカルロ
スズキSX4 WRC

Naoki Kobayashi


1月は2008年のモンテカルロ、チュリニ峠のSX4です。スズキがフル参戦をスタートした1戦目でした。スバルに加え日本車チームがもうひとつ増えて、この年はスズキを撮ることが一番の目標みたいなところがありましたね。特にモンテカルロは1戦目でしたから、気合いを入れて撮った1枚です。場所は毎年おなじみのチュリニ峠ですが、これをどう撮るかというのもテーマでした。

チュリニは色々な走行パターンがあって、俯瞰で撮るなど撮り方も色々ありますが、この年は順光でバックにレストランが入るルートだったので、低いアングルからガードレールのへりまでお客さんが入っている様子を入れ込みました。今はギャラリーエリアが下げられてしまい、こういった写真は撮れなくなってしまいましたね。ブラインドコーナーから飛び出してくる一瞬を逃さないよう、クルマが1/3でも見えたらシャッターを切り出すイメージです。エンジン音を聞いて、周囲のお客さんの反応も見ながら、シャッターを切るタイミングを計る。緊張する一瞬ですね。

◆2月
2006年スウェディッシュラリー
スバル・インプレッサWRC2006

Naoki Kobayashi


2月はスウェーデン。ヘアピンのイン側から狙っています。おそらく朝だったと思うのですが、空の色合いを入れてスローシャッターで、マシンが近づいてくれることを願いながら撮っていました。広角レンズで狙っているので距離感がつかみづらいのですが、写真のペター(ソルベルグ)はかなり寄ってきていて、タイヤの跡を見たらフロントバンパーに手を伸ばせば届くくらいの場所でした。スタッドタイヤに踏まれたら大変ですよね(笑)。

ただ、ヘアピンでスピードはそれほど出ていませんし、失敗してイン側に入ってきているわけではないので、ペターもこちらが見えていて「ギリギリを行ってもカメラマンはかわすだろう」と思っていると思います。シャッタースピードは1/60くらいで、雪をはね飛ばす感じと、周りの森を流しつつ迫力を出しています。

◆3月
1999年サファリラリー
トヨタ・カローラWRC

Naoki Kobayashi


この99年は、キャリアで2度目のサファリ取材でした。特に初年度の98年は「いいところだけど怖いところだから気をつけろ」と周りに脅かされて、ちょっとドキドキしながら行きましたね(笑)。アフリカの高原の中を走るラリーはすごかったけど“どこで撮るか”がかなり難しいラリーでしたね。距離が長くてレッキできないことも多かったのですが、コマ図どおりにクルマがこなかったり、色々難しいところはありましたね。特に観戦ポイントみたいなものもないですし。

撮影した場所は村の近くのようで、たくさんの人が木陰から見ていたことを良く覚えています。クルマもアニマルバーやウォータースプラッシュ用のシュノーケル、ウイングランプなどを装備して、ドライバーもTシャツ短パン姿で……色々な意味で特別なラリーだったと思います。サービスに帰ってくるとドライバーたちは汗だくで、バケツの水を頭からかぶって顔を洗ってたり。今はなかなか見られないそういうシーンも、人間味があって面白かったですね。

次回は4月〜6月分の解説を行いますのでお楽しみに!

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