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トヨタは、7月17日〜20日にかけてエストニアのタルトゥを拠点に開催されるWRC第8戦ラリーエストニア(グラベル)に、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン、勝田貴元/アーロン・ジョンストン、TGR-WRT2からサミ・パヤリ/マルコ・サルミネンに加え、初めてトヨタGRヤリス・ラリー1で参戦するオリバー・ソルベルグを加えた5台のラリー1マシンをエントリーする。
トヨタGRヤリス・ラリー2は、昨年ERCイベントとして開催されたラリーエストニアで優勝を飾った地元エストニアのゲオルグ・リンナマエを含めた7台がエントリー。TGR WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀もWRC2部門に参戦する。さらに3期生の後藤正太郎と松下拓未も、ルノー・クリオ・ラリー3でWRC3部門に参戦する。なお、2期生の小暮ひかるは、前戦アクロポリスでプログラム終了となったことも伝えている。
(以下、発表リリース)
WRC 第8戦 ラリー・エストニア プレビュー
ハイスピードグラベル2連戦の初戦エストニアに
新たにソルベルグを加えた5台のGR YARIS Rally1で参戦
TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)は、7月17日(木)から20日(日)にかけて、エストニアで開催される、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第8戦「ラリー・エストニア」に、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(GR YARIS Rally1 33号車)、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)に、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)と、今回がTGR-WRTでの初戦となるオリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン組(99号車)を加えた、合計5台のGR YARIS Rally1で参戦。今シーズン7回目の優勝を目指します。
TGR-WRTは全14戦で行われる2025年WRCの前半戦で、開幕から6連勝を達成。第7戦アクロポリス・ラリー・ギリシャではセバスチャン・オジエが総合2位に入り、マニュファクチャラー選手権での首位を堅持しました。また、グラベル(未舗装路)ラリーでは不利となる出走順トップで直近の3戦に挑みながらも、好成績を残し続けたエバンスが、ドライバー選手権トップの座を守っています。そして迎えるシーズン後半戦、最初のイベントは、バルト3国の一国であるエストニアで開催される、第8戦ラリー・エストニア。2年ぶりにWRCのカレンダーに復帰したこのラリーは、続く第9戦ラリー・フィンランドと共に「ハイスピード・グラベルラリー」に分類されます。第5戦から第7戦までの3戦は非常に荒れた路面も多く走行する「ラフ・グラベルラリー」であり、同じグラベルラリーであってもキャラクターは大きく異なるため、選手とチームにとっては新たなるチャレンジとなります。
エストニアは全体的に道幅が広く、路面はフラットで、流れるようなコーナーが続く、WRC屈指のハイスピードなラリーとして知られています。また、ジャンプやクレスト(丘越え)も多いなどステージはラリー・フィンランドと多くの共通点がありますが、異なる点もあります。エストニアはフィンランドよりもツイスティでテクニカルなセクションが多く、路面はフィンランドよりも全体的に軟らかいため、同じステージを2回目に走行する際は路面が掘れ、深い轍がドライバーたちを苦しめます。
現在ドライバー選手権をリードするエバンスは、このラリーでの優勝はありませんが、2022年大会では総合2位を獲得。また、ラリー・フィンランドでは2回勝利を手にするなど、高速グラベルラリーを得意としています。2022、2023年の世界王者であるロバンペラにとって、エストニアは2021年にWRC初優勝を達成した記念すべきラリーであり、彼はその後2023年まで3年連続で勝利を重ねています。また、2月の北欧を舞台に開催された第2戦ラリー・スウェーデンでエバンスに次ぐ総合2位を獲得した勝田は、今回マニュファクチャラーズポイント獲得資格をもってエストニアに出場します。さらに、サポートシリーズのジュニアカテゴリーで2回エストニアを制しているパヤリは、今回初めてGR YARIS Rally1でエストニアに挑みます。
今シーズンもセレクトしたイベントにのみ出場するオジエはエストニアを欠場しますが、スウェーデン人ドライバーのソルベルグが初めてGR YARIS Rally1のステアリングを握ります。2003年のWRCチャンピオン、ペター・ソルベルグの息子であるオリバーは今シーズン、サポート選手権であるWRC2に、プリントスポーツのGR Yaris Rally2で出場。ここまで3回優勝し、現在選手権をリードしています。ソルベルグは本来エストニアにもプリントスポーツのGR Yaris Rally2で出場する予定でしたが、若く才能あるドライバーにトップカテゴリーで戦うチャンスを提供するという、TGR-WRTの取り組みがFIA(国際自動車連盟)に認められ、エントリーが承認されました。
ソルベルグのRally1参戦に伴い、今回のエストニアには全部で7台のGR Yaris Rally2が激戦区のWRC2に出場します。ふたりのフィンランド人ドライバー、ローペ・コルホネンとトゥッカ・カウッピネンはラウティオ・モータースポーツからエントリー。ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)の一戦として開催された、昨年のラリー・エストニアで優勝した地元のゲオルグ・リンナマエは、レッドグレイからの出場。今回地元でWRC2デビューを飾る、ヨーセップ・ラルフ・ヌガナがチームメイトを務めます。その他にもマルコ・ブラチア(ボリビア/デルタ・ラリー)、ファビオ・シュワルツ(ドイツ/アルミン・シュワルツ・ドライビングエクスペリエンス)、TGR WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀が、GR Yaris Rally2のステアリングを握ります。また、エストニアが今シーズン4回目のWRC出場となる、WRCチャレンジプログラム3期生の後藤正太郎と松下拓未は、ルノー・クリオRally3でサポート選手権のWRC3に挑みます。なお、2期生としてこれまで活動をしてきた小暮ひかるは、前戦のギリシャをもってプログラムが終了となりました。
ラリー・エストニアは、今年も「タルトゥ」を中心に行われます。首都タリンの南東約180km、クルマで2時間ほどの場所に位置するタルトゥは、エストニア第2の都市です。サービスパークはこれまでと変わらず、ラーディ飛行場跡に設けられたエストニア国立博物館の敷地内に展開し、木曜日から4日間にわたり競技が行われます。初日の17日(木)はタルトゥ中心部の歴史的な市庁舎広場でのセレモニアルスタートに続き、デイ1としてサービスパークのすぐ近くで、夜8時過ぎから全長1.76kmのスーパーSSが1本行われます。本格的な戦いは18日(金)のデイ2から始まり、午前はサービスパークの北側で2本のステージを各2回走行。ラーディでのミッドデイサービスを経て、午後はサービスパークの南側で1本のステージを2回走った後、最後にエルヴァで全長1.72kmのスーパーSSを、SSS8として走行し一日を終えます。競技3日目の19日(土)は、サービスパークの南側エリアが舞台に。午前は2本のステージを各2回走行し、ミッドデイサービスを経て、午後は別の2本のステージを各2回走行します。さらに、一日の最後には木曜日に走行したスーパーSSを、SSS17として再走。9本のステージの合計距離は125.76kmと、4日間で最長の一日となります。最終日の20日(日)は、サービスパークの南側エリアで3本のステージをミッドデイサービスを挟むことなく走行。そのうち、SS19の再走となる最終ステージのSS21は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに対し、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されています。ラリーは4日間で20本のステージを走り、その合計距離は308.35km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1240.54kmとなります。
ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)
非常にラフで厳しいグラベルラリー3戦を終え、チームとしてはハイスピードな道が舞台となる次のエストニアとフィンランドが楽しみですし、この2戦は我々のドライバーとクルマに合っていると思います。それでも、ここ数戦は接戦が続いているので、勝利を手にするためにはベストを尽くす必要があります。エストニアは、今年の新しいタイヤで走る最初の高速グラベルラリーとなるため、ギリシャ以降、全体のパッケージを最適化するための重要なテストを行ってきました。また、今シーズンGR Yaris Rally2で好成績を残してきたオリバー・ソルベルグに、このようなチャンスを提供できることも嬉しく思います。彼にとってはRally1のパフォーマンスを経験する絶好のチャンスですし、我々にとっても彼がステップアップにどう適応するかを確認する機会となります。
エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
前戦までとはまったくキャラクターが異なる、非常にハイスピードな道を走行する、これからの2戦がとても楽しみです。昨年エストニアはカレンダーに含まれませんでしたが、このイベントについては多くの知識がありますし、ハイスピードなステージに戻るのに適したイベントだと思います。このラリーではクルマに良いフィーリングを持つことが重要ですが、先週のテストはいくつかのアイデアを試すいい機会になりました。ただし、実際にラリーで直面するコンディションは天候に大きく左右されることもわかっているので、金曜日を出走順トップで走行する私たちとしては、降雨を願っています。
カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
今年、再びラリー・エストニアに戻れることは素晴らしいことです。自分にとってはWRCで初優勝を飾ったラリーですし、その後も良い結果を残してきたので、このイベントには良い思い出があります。高速で流れるような道を運転するのは本当に楽しいですし、自分のドライビングスタイルにも合っているのでワクワクしています。今年、ここまでのグラベルでのペースは、まだ自分が望むレベルには達していません。そのため、先週エストニアで行ったテストは速さに慣れ、このようなハイスピードなラリーでベストなセッティングを見つけるための重要な機会でした。フィーリングはかなり良かったので、良いラリーを戦える自信はあります。
勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
エストニア、フィンランドと続くハイスピードなラリーは、WRCのカレンダーの中でも特に好きなイベントなので、楽しみです。ハイスピードな道に再び適応するのは簡単なことではありませんし、新しいタイヤで臨む最初のハイスピードグラベルラリーなので、慣れる必要もあります。それでもテストでのクルマのフィーリングは良かったので、プッシュする準備は整っています。エストニアのステージは特に森の区間で難しい部分があり、ハイスピードながら道幅は狭いので、金曜日は最もタフな一日になるかもしれません。それでも良い仕事をできる自信はあるので、できる限りの準備をして臨みたいと思います。
サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
次の2戦は、これまで出場してきたラリーと大きく異なり、自分にとってはWRCカレンダーの中で最も楽しめるラリーになるかもしれません。ステージはハイスピードで流れるようなコーナーが続き、路面コンディションも良好なので、問題を回避することよりも、速く走ることに集中できるでしょう。エストニアの路面はフィンランドより柔らかく、轍ができやすいので決して簡単ではありませんが、サポートカテゴリーの時代に出場した自分にとっては良いラリーでした。シーズンの中盤に差し掛かった今、ペースを上げようと試みるのは自然なことですし、次の2戦はそれを実行しやすいと思いますが、クレイジーな走りをするつもりはありません。
オリバー・ソルベルグ (GR YARIS Rally1 99号車)
GR YARIS Rally1でラリー・エストニアに出場できることは、自分にとって素晴らしい機会ですし、夢が叶ったような気分です。今週フィンランドでクルマをテストできただけでも、信じられないようなフィーリングでした。ここまで素晴らしいシーズンを送ってきたので、トップレベルで学び、経験を積む準備は整っています。エストニアは大好きなラリーの一つですが、とてもテクニカルでありながら非常にハイスピードなコースなので、簡単ではありません。ラリーを通じて段階的にステップアップし、どんどんクルマに慣れ、できるだけ多くの経験を積むことが目標なので、楽しんで走りたいと思います。