WRCプロモーターは6月1日、開催中のWRC第6戦ラリーイタリア・サルディニアの会場で、ラリーサウジアラビアと2025年から10年間のWRCラウンド開催契約を締結した。中東でのWRC開催は、2011年のヨルダン以来となり、WRCプロモーターは、ワールドワイドに開催を広げていくことで、ファンにより新鮮な経験を提供するとしている。
サウジアラビアがWRCイベントを開催するのは初めてとなるが、ダカールラリー、F1、サッカー、ゴルフと、世界レベルのスポーツイベント開催に定評がある。
この日の調印式には、サウジアラビアから、カリッド・ビン・スルタン・アル・アブドラ・アル=ファイサル殿下が出席。アル=ファイサル殿下は、サウジアラビア自動車・モーターバイク連盟の会長およびサウジアラビア・モータースポーツ・カンパニー会長を務め、FIAカウンシルメンバーでもある。サルディニアでは、シェイクダウンでティエリー・ヌービルがドライブするヒョンデi20Nラリー1ハイブリッドに同乗走行する姿も見られた。
「2025年に初めてFIA世界ラリー選手権が開催されることを、うれしく思う。サウジアラビアに世界的に有名なレーシングシリーズが新たに加わることで、サウジアラビアがこの地域のモータースポーツの主要拠点へと変貌を遂げつつあることを示すことができる」とアル=ファイサル殿下。
「2025年からは、フォーミュラ1、フォーミュラE、エクストリームE、ダカールラリー、WRCがサウジアラビアで開催されることになり、これは快挙である。モータースポーツイベント開催の実績を広げ、WRCのような重要なモータースポーツイベントをこの国で開催するというコミットメントをさらに高めることで、サウジアラビア人全員の生活向上を目指す『Vison 2030』の目標に忠実であり続けようと考えている」
「サウジアラビアのWRCラウンドが2025年シーズン、そしてその先のシーズンでも傑出したイベントのひとつとなるよう、数々の世界クラスのモータースポーツイベントを開催してきた経験を活かしていく」
UAE出身で中東ラリー選手権でドライバーズタイトルを獲得したこともあるFIA総裁のモハメド・ビン・スライエムも「中東のモータースポーツにとって素晴らしい瞬間だ。WRCが最後に中東を訪れてから10年以上が経つ。自分自身の経験からも、2025年にラリーサウジアラビアが開催される際には、ドライバーとコ・ドライバーは独特の試練に直面することを確信している」と歓迎のコメントを寄せる。
「サウジアラビアでラリーを推進し、発展を続けてくださっているカリッド・ビン・スルタン・アル・アブドラ・アル=ファイサル殿下に心から感謝している」
WRCプロモーターのマネージングディレクター、ヨナ・シーベルも、サウジアラビアをWRCカレンダーに加えることに同様の熱意を示している。
「中東がWRCカレンダーに戻ってくること、それが誇り高きラリーの伝統を持つ国で実現することに、とても沸き立っている」とシーベル。
「ラリーサウジアラビアでは、各デイそれぞれにまったく異なるチャレンジが用意され、街並みから砂漠、山から海まで、サウジアラビアが提供するあらゆるものがハイライトとなる。我々は、このラリーが選手権に独自の個性を加えてくれると確信している」
WRCの新規イベントとしてサウジアラビアをカレンダーを加えた経緯には、WRCの世界戦略の一環として中東が重要な地域であり、現在参戦しているマニュファクチャラーにとっても重要な市場であるという背景がある。WRCプロモーターは近年、サファリ、アクロポリス、ジャパンなど過去のイベントを新たに開催した実績もあり、2026年から開催予定の米国でのラリーも含め、2011年以降訪れていなかった中東もカレンダーに欠けている部分のひとつだと考えていた。ラリーサウジアラビアは中東ラリー選手権の活性化にも繋がり、世界レベルのイベントを開催することで地域選手権への参戦も促進され、総合的なラリーの知名度に繋がると考えているとしている。
サウジアラビアでは5年連続でダカールラリーが開催されており、2025年も同国でのルートが発表されている。WRCイベントとなるラリーサウジアラビアは、ダカールのスタートやフィニッシュが設定されることでも知られる同国西部のジェッダ近郊で開催。「3つの物語のラリー」をテーマに、各日で山、火山、砂漠を走行するという。ダカールでは砂丘が難所として知られているが、ラリーでは素晴らしい山道も訪れるという。
WRC開催に向けては、2025年に中東ラリー選手権開幕戦をテストイベントとして実施。2025年のWRCカレンダーはまだ発表されていないが、WRCイベントとしてのラリーサウジアラビアの開催は、ラリージャパンの後、11月になると見られており、最初の5年間はWRC最終戦になることが決まっていることが伝えられている。
*FIAワールドモータースポーツカウンシルの承認待ち
(Keiko Ito)