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WRC第6戦ラリーイタリア・サルディニア(グラベル)は競技最終日となる6月8日、SS13〜SS16を走行し、トヨタ勢では、セバスチャン・オジエ/バンサン・ランデが首位を守り切り、優勝を目前にして逃した昨年のリベンジを果たしてトップフィニッシュを飾った。トヨタはこれで、開幕から負けなしの6連勝を達成した。カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネンも順位を守って3位でポディウムに上がった。4位にエルフィン・エバンス/スコット・マーティン、5位に勝田貴元/アーロン・ジョンストンと、トップ5にトヨタGRヤリス・ラリー1が4台食い込んだ。TGR-WRT2から参戦するサミ・パヤリ/マルコ・サルミネンも、終盤のドラマはあったが総合7位でフィニッシュを果たしている。
トヨタGRヤリス・ラリー2でエントリーしているTGR WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀は順位を上げて、RCクラス11位でフィニッシュ。14番手にポジションアップ。小暮ひかるはSS15でディッチにはまり、ラリーリタイアを喫した。
(以下、発表リリース)
WRC 第6戦 ラリー・イタリア サルディニア デイ3
オジエが昨年大会の雪辱を果たし優勝
TGR-WRTは開幕から負けなしの6連勝を達成する
6月8日(日)、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第6戦「ラリー・イタリア サルディニア」の最終日デイ3が、サルディニア島北東部の「オルビア」を中心に行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(GR YARIS Rally1 17号車)が優勝。カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)は総合3位、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)は総合4位、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)は総合5位でフィニッシュしました。また、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)は、総合7位でラリーを終えました。
ラリー・イタリア サルディニアの最終日デイ3は、サービスパークの北側および南側エリアで2本のステージを各2回走行。4本のステージの合計距離は77.78kmと、3日間で最短の一日でした。ステージはいずれも新しく、路面は全体的に荒れていることから、絶対的な距離は短くとも最終日も選手たちにとっては非常に苛酷な一日になりました。
サービスパークの上空には朝から美しい青空が広がり、ステージの路面コンディションはドライ。朝7時25分にスタートした1本目のSS13では、デイ2で総合2位のオィット・タナックに11.1秒差を築いた首位オジエがベストタイムを記録。タナックとの差を15.6秒に拡げました。続くSS14ではロバンペラがベストタイムでオジエは2番手タイム。SS15でもオジエはタナックに次ぐ2番手タイムを記録し、最終ステージを前に二人の差は17.2秒に。オルビアでの15分間のサービスを経て、最後の戦いの場となるSS16、パワーステージがスタートしました。昨年大会でも最終ステージの直前までオジエは首位を守っていましたが、最終ステージでタイヤの空気が漏れ出たことでペースが低下し、最終的には0.2秒差でタナックに逆転を許し総合2位でラリーを終えました。しかし今年、オジエはハーフスピンを喫して木に接触し、リバースギアを使ったことでタイムを失うも、パワーステージを7番手タイムで走破。ライバルであり友人でもあるタナックに7.9秒差をつけて優勝し、今シーズン3勝目を手にしました。オジエのラリー・イタリア サルディニアでの優勝はこれで5回目となり、2004年にこのラリーがWRCに加わって以降、もっとも多くの勝利を手にしたドライバーとなりました。オジエは今シーズン6戦のうち2戦を欠場しながらも、4戦3勝でドライバー選手権では2位に浮上。選手権首位を守ったエバンスに19ポイント差と迫りました。また、今回の優勝によりTGR-WRTは開幕戦ラリー・モンテカルロからの連続優勝記録を「6」に伸ばしました。
総合2位タナックと44.4秒差の総合3位で日曜日に臨んだロバンペラは、SS13とSS15で3番手タイムを、SS14ではベストタイムを記録するなど好調を維持。最終のパワーステージでは2番手タイムのライバルに8.1秒差をつけてベストタイムを記録し、総合3位でフィニッシュしました。また、スーパーサンデーでも1位を獲得したことにより、ボーナスポイントをフルに加算。ドライバー選手権ではオジエに先行を許しましたが、首位のエバンスとの差は30ポイントから、20ポイントへと縮まりました。
エバンスは、ドライバー選手権リーダーとして、金曜日のステージに不利な出走順一番手で臨み、ロードクリーニングを担ったことで大きくタイムを失いました。それでもエバンスは忍耐強く走り続け、最終日も安定した戦いで総合4位でフィニッシュ。スーパーサンデーとパワーステージでもボーナスポイントを獲得し、厳しい戦いを乗り越えて選手権首位の座を守りました。
デイ2でステージの途中でタイヤ交換を行ないタイムを失った勝田は最終日、SS14で総合7位から総合5位にポジションアップ。そのまま最後まで順位を守り切りました。勝田が総合5位でフィニッシュしたことにより、TGR-WRTは4人のドライバーがトップ5に入り、マニュファクチャラー選手権では首位をキープ。2番手のライバルチームとの差を69ポイントに拡げました。
デイ2終了時点で総合5位につけていたパヤリは、デイ3オープニングのSS13でスピン。その際サスペンションにダメージを負い、その状態でさらに2本のステージを走行した結果、大幅にタイムを失い総合7位に順位を下げました。しかし、最終サービスを経てパワーステージを走り切り、総合7位でラリーを終えました。
Rally2クラスでは、GR Yaris Rally2で出場したオリバー・ソルベルグ(スウェーデン/プリントスポーツ)が、最上位でフィニッシュ。今回はWRC2にエントリーしていなかったソルベルグは、ラリー序盤にクルマのフロント部にダメージを負いながらも、Rally2クラスで9本のステージ優勝を飾り、総合でも6位に入るなど好結果を残しました。また、サポート選手権のWRC2ではカイエン・カイエタノビッチ(ポーランド/ラリーラブ・テクノロジー)が、ウイナーと5.8秒差の2位でフィニッシュしました。
ヤリ-マティ・ラトバラ(チーム代表)
このラリーで優勝できたことを本当に嬉しく思います。過去、私たちにとっては決して簡単なラリーではありませんでしたし、今年は金曜日に3台が出走順トップ3でステージに臨むことからスタートしました。しかし、それでも6戦で6勝目を挙げることができました。これは本当に信じられないことです。ラリー中は多くのドラマがありましたし、なぜかサルディニアのパワーステージでは常にドラマが起こるのですが、序盤から素晴らしいパフォーマンスを発揮したセブは、幸いにも勝利を持ち帰ってくれました。カッレは日々パフォーマンスを向上させ、パワーステージでは素晴らしいタイムを記録してラリーをフィニッシュしました。また、エルフィンは出走順がトップだったため最も厳しい状況で戦うことになりましたが、クレバーな走りを続けポイントを獲得しました。5台のクルマが全てリタイアすることなくフィニッシュし、ポイントを獲得したので、チャンピオンシップとしては全体的にポジティブな週末になったと思います。
エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
全体的には、この週末の結果に満足するべきでしょう。金曜日に出走順がトップだったことを考えれば、現実的に考えて4位は最上の結果だと思います。このラリーは常に消耗戦となるため、大きな問題なく最後まで走りきることが非常に重要でした。トップ 3 のペースはかなり速かったですが、ポジティブに感じられる点もあり、特に再走ステージのコンディションでは、フィーリングに関して明らかに進歩が見らました。自分たちにとって、これはギリシャに向けてポジティブに思える材料です。
カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
今週末の結果は満足できるものだと思います。金曜日はロードクリーニングの負担が大きかったですが、その後はクリーンかつクレバーなドライビングを続け、日曜日には最大限のポイントを獲得することができました。パワーステージでは全力で走りましたが、あのような道幅が狭くてスローなセクションでのフィーリングは良くなかったので、大きなタイム差がついたことに驚きましたし、ポイントを獲得することができて良かったです。ペースという点に関しては、サルディニアの週末としては自分にとって過去もっとも良かったと思うので、良いクルマを用意してくれたチームに感謝します。
セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車)
この勝利を手にすることができて本当に嬉しいです。オィットとの接戦が最後まで続き、今朝は少しリードを築く機会がありました。パワーステージではフルポイントの獲得は狙っていなかったのですが、轍と戦うことになり、タイトなコーナーで捕まってしまったため、クルマを止めてバックする判断をしました。理想的なことではなく、日曜日に得られるはずだったポイントは失いましたが、私たちのメインターゲットである優勝を獲得する上ではまだ余裕がありました。ラリー・ポルトガル以降、テストを行うことなくクルマのセッティングとスピードを改善したチームは、素晴らしい仕事をしたと思います。クルマは運転を楽しめる仕上りで、よりイージーに良いタイムを記録することができました。
勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
予想通り非常に厳しい週末でしたが、総合5位でフィニッシュできたのはそれほど悪いことではありません。週末を通じて横転や他の問題に直面しましたが、このようなラリーでは起こり得ることです。最終的にはクルマに自信を持つことができました。パワーステージではプッシュを試みたのですが、終盤ミスを犯し、非常に柔らかくて滑りやすい路面でスタックしてしまいました。ですので少し複雑な気持ちですが、次のギリシャに向けては良い方向に進んでいると思います。
サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
自分たちにとっては難しい最終日でした。良いフィーリングのままフィニッシュするつもりでしたが、最初のステージで何かに当たり、サスペンションに小さなダメージを負ってしまいました。それでも、リエゾン区間で修理を試みた結果、走行を続けることができました。その後、もっとも重要だったのはフィニッシュまで到達し、ポイントを獲得することでした。昨日までは、自分たちにとってポジティブな週末だったと思います。より自然にスピードが上がるようになったので、ギリシャに向けて何か得られるものがあったと思います。
ラリー・イタリア サルディニアの結果
1 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1) 3h34m24.5s
2 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1) +7.9s
3 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +50.5s
4 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +5m05.7s
5 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1) +7m29.6s
6 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (トヨタ GR Yaris Rally2) +8m32.9s
7 サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +10m29.0s
8 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ Fabia RS Rally2) +10m58.7s
9 ロベルト・ダプラ/ルカ・ググリエルメッティ (シュコダ Fabia RS Rally2) +12m15.3s
10 カイエタン・カイエタノビッチ/マチェイ・シュチェパニャク (トヨタ GR Yaris Rally2) +12m21.1
(現地時間6月8日15時30分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
第6戦終了時点でのドライバー選手権順位
1 エルフィン・エバンス 133ポイント
2 セバスチャン・オジエ 114ポイント
3 カッレ・ロバンペラ 113ポイント
4 オィット・タナック 108ポイント
5 ティエリー・ヌービル 83ポイント
6 勝田 貴元 63ポイント
7 アドリアン・フォルモー 44ポイント
8 サミ・パヤリ 31ポイント
9 グレゴワール・ミュンスター 18ポイント
10 ジョシュ・マッカーリーン 12ポイント
第6戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位
1 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 312ポイント
2 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 243ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 87ポイント
4 TOYOTA GAZOO Racing WRT2 48ポイント
次回のイベント情報
WRC次戦は、6月26日(木)から29日(日)にかけて、ギリシャで開催される第7戦「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」です。中央ギリシャ地方の首都ラミアを中心に開催されるこのラリーは、サルディニアと同様グラベル(未舗装路)イベントですが、山岳地帯の路面は全体的にサルディニア以上に荒れていることが多く、気温も非常に高いため、クルマとタイヤに非常に厳しいラリーとして知られています。2024年大会は9月に開催されましたが、2025年は6月に移動。そのため、前年とはやや異なるコンディションでの戦いになる可能性もあります