開幕戦ハンガリー目前、2024年ERCの見どころ – RALLYPLUS.NET ラリープラス

開幕戦ハンガリー目前、2024年ERCの見どころ

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2024年のヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)は、4月12日〜14日のラリーハンガリーで開幕する。ラリー2マシンが28台エントリーするなど、活況を見せており、2023年チャンピオンで今季もタイトル防衛を目指しての参戦を表明しているヘイデン・パッドンは「とてもいいラリーがたくさんあるし、ハッキリ言って政治的なことはあまりない」とシリーズを賞賛する。

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WRCプロモーターがERCのマネージメントも行うようになって3シーズン目を迎え、プロモーション力が高まっており、コロナウイルスによるパンデミックの影響もほぼなくなった今、ERCは多くのエントリーを集めているだけでなく、新規イベントも増えるなど注目を集めている。そんな2024年のERCの見どころをまとめた。

1:マックス・マクレー、ジュニアERCタイトルに挑戦
ラリー界のレジェンド、コリン・マクレーを叔父に持つ19歳のマックス・マクレーは、ハンガリーのタガイ・レーシング・テクノロジーから、プジョー208ラリー4でジュニアERCに挑む。チームメイトにはベテランのマッズ・オストベルグがおり、そのオストベルグはシトロエンC3ラリー2で総合タイトルを狙う。ジュニアERCは、2023年と同じイベントは一戦しかなく、経験値でのアドバンテージが活かせる範囲は少ないと言える。一方でマクレーは、ほとんどのラリーでマシントラブルに見舞われた昨年のような事態を避けたいと考えており、それが実現できれば、本来のペースを発揮できる可能性も広がる。今季のジュニアERCは、17名がエントリーしており、ハンガリー、カナリアス(スペイン)、スカンジナビア(スウェーデン)、エストニア、ケレディジョン(英国)、シレジア(ポーランド)の6戦で構成される。

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2:アイルランドのジョン・アームストロングがラリー2でフル参戦
モータースポーツ・アイルランド・ラリーアカデミーの支援を受けるジョン・アームストロングが、フォード・フィエスタ・ラリー2でフル参戦に臨む。Mスポーツ・フォードは、WRCワークスドライバーのアドリアン・フルモーとともにフィエスタ・ラリー2の大改造に取り組んでおり、マシンのパフォーマンスアップにも期待がかかっている。アームストロングも、2023年はERC3のタイトルを獲得するなど著しい成長を見せており、Mスポーツ・フォードのディレクター、マルコム・ウィルソンからの信頼も厚い。新たに迎えるコ・ドライバー、オーイン・トレーシーも、モータースポーツ・アイルランド・ラリーアカデミーの支援を受ける29歳。アームストロングにとって、キャリアアップの絶好のチャンスを迎えており、参戦プロジェクトを担うMスポーツ・ポーランドも不可欠なパートナーとして扱っていることもあり、必要以上のプレッシャーを背負わずに参戦に臨むことができそうだ。

3:英国ウェールズで、久しぶりの国際格式ラリー
8月には新規イベントのラリーケレディジョンが、英国ウェールズで開催される。英国にとっては、待望の国際格式ラリーの開催復帰だ。WRCラウンドの開催で経験豊富な主催者チームは、ウェールズの壮大なターマック路を盛り込んだルート作成に取り組んでいる。ERCの常連強豪であるシモーネ・カンペデッリやオストベルグは、ウェールズのターマックラリーへの参戦を非常に楽しみしていると語っている。英国ラリー選手権も併催されるこのラリーで、ERCの精鋭たちとの対戦が期待される。今季のERCはさらにポーランドのラリーシレジアが、10月中旬にシリーズ初開催。ラリーエストニアは2016年以来となるカレンダー復帰となる。

4:モータースポーツ・アイルランド・ラリーアカデミーが支援を拡大
故クレイグ・ブリーンも支援を惜しまなかったモータースポーツ・アイルランド・ラリーアカデミーからは、23年にジュニアERCデビューを飾ったイファ・ラフテリーに加えて、19歳のジャック・ブレナンがプジョー208ラリー4でジュニアERCに参戦。フィリップ・ケース率いるPCRSラリースポーツは、2台体制で選手権に臨む。

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5:エントリー増でERCがますます盛り上がる?
開幕戦ラリーハンガリーには、多くの強豪を含めた57台がエントリー。さらに第2戦、第3戦から今季のプログラムを開始するドライバーも多いため、さらにエントリー増が見込まれる。ハンガリーには、ディフェンディングチャンピオンのパッドンをはじめ、マルティン・セスク、オストベルグと23年のシリーズトップ3が再び参戦してくるほか、2022年王者のエフレン・ラレーナのほか、ミコ・マルチェク、エリック・カイス、ミコロス・コスモス、マシュー・フランチェスキ、アンドレア・マベリーニ、トヨタGRヤリス・ラリー2を投入するフィリップ・マレスなど、いずれもラリーで勝利を収めることのできるドライバーが名を連ねている。

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2024年ERCのルール変更

今季のERCは新規イベントが加わるだけでなく、ルール変更も行われる。

レグ1の走行順は、これまで予選ステージのトップタイム順に走行順を選択する方式をとっていたが、今季から対象ドライバーは、ターマックラリーでは予選ステージのタイム順がそのままスタート順に、グラベルラリーでは予選ステージのタイムをリバースしてスタートする。

ERC1勢のスタート間隔はレグ1では2分、その後のレグは上位15台が2分間隔でスタート、それ以外は1分間隔でのスタートとなる。

イベントのプログラムは、レッキの開始からパワーステージの終了まで4日間となる。ただし、主催者はFIAの特認を受けることで、レッキを1日追加することが可能となっている。

ERC for タイヤサプライヤーが新設され、タイヤメーカーがERCタイトルを争う機会が設けられた。各タイヤサプライヤーは、最終リザルトで、自社タイヤを装着するERC登録のラリー2勢、上位2名分のポイントを獲得できる。今季はハンコック、ミシュラン、MRF、ピレリがノミネートしている。

ERCのプロモーターを務めるWRCプロモーターは、フィエスタ・ラリー3トロフィーを新設。チャンピオンの特典として、2024年WRC第12戦セントラルヨーロピアンラリーに全資金を支援しての参戦パッケージなどの賞典が用意されている。
(Graham Lister)



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