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全日本ラリー高山:初参戦の荒聖治「ラリーは子どもの頃からの憧れ」

©Takuji Hasegawa

全日本ラリー選手権最終戦ラリーハイランドマスターズ(岐阜県、ターマック)に、自身初めてとなる全日本ラリー選手権参戦に挑んだ、荒聖治。ル・マン24時間の総合優勝経験もある、日本屈指のレーシングドライバーだが、子どもの頃からラリーに憧れを持っていたという。

「父親がヤナセのメカニックだったので、4輪のデビューもフォルクスワーゲンのワンメイクレースでした。その頃、ヤナセが取り扱っていたアウディがWRCで活躍していたので、クワトロに憧れていました。自分はアウディR8でル・マンを勝ちましたが、自分のなかで、それよりも上の存在はラリーで勝ったグループBのクワトロ。ル・マンで1回勝ったくらいでは乗せてもらえない、伝説のクルマでした。そんなこともあり、幼少期からラリーにはずっと挑戦してみたいと憧れていました」と語る。

Naoki Kobayashi


今回は、全日本ラリー選手権でも敏腕メカニックとして活躍中するK.Z.Fの熊崎大介が、FIT-EASY Racingの運営を担うZEALの炭山裕矢と協力してプリペアしたトヨタ86で、ベテランと強豪が名を連ねるJN-3クラスに参戦した。

「ラリー参戦は初めてです。メカニックの熊崎さんと、応援してもらっているスポンサーさんに相談しているなかで実現しました。自分はこの年齢になってもBMWでGTワールドチャレンジ・アジアに出ていますが。今年はSUPER GTに乗っていないので、年齢的にもそろそろラリーに挑戦してもいいのかなと思っていたのですが、こんなに早く実現するとは思っていませんでした。本来ならこの週末はGTワールドチャレンジの最終戦・北京でレースをしているはずでしたが、クルマをドイツに送っていてレースを欠場していることもあり、色々なタイミングが重なって実現した感じです」と経緯を語る。

「ラリーカーはクルマとしてカッコいいし、いろいろな道やコンディションで走ることも魅力です。ドライバーの視点では、ラリードライバーはクルマのサスペンションを上手に動かして、状況が変わってもうまく操っていくので、そうしたところにも憧れますね」

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今回はコ・ドライバーに、ドライバー経験もある明治慎太郎(写真左)を迎え、ペースノートのトレーニングを2日間行って実戦に備えた。
「レッキやペースノートは未知の世界で、オンボード動画を観ても自分にはできないと思っていました。ペースノートのトレーニングをしたことで、レベルは低いながらも、感覚をつかむことができました。なんとかその流れで、自分なりにペースノートを作りました。レッキでリタイアするかと思いましたが(笑)、明治さんは経験値が高い方なので、ペースノートの作り方も相談しました。本当に初めてなので、まずは完走したいです」

今回の高山は、例年どおり落ち葉や泥が道を覆い、不安定な天気のなかウエットとドライが混在する非常に難しい路面コンディションとなった。
「86は、何年も前にワンメイクレースで乗ったくらい。すべての瞬間がチャレンジで、路面には泥も出てくるし『アスファルトじゃないじゃん!』って感じです(笑)。レース用のタイヤは軽量化したりトレッドも薄く作っているので、縁石に乗るなど、やってはいけないことが多いんですが、ラリーは“サーキットではやっちゃいけないこと”を、やるじゃないですか。考えることもいっぱいあるので、こなしながら慣れていきます」と語っていた荒。とにかく、ひと通りラリーを最後まで経験することが何よりも重要、という課題に徹し、タイムやペースは気にせずに粛々とステージを走り続けた。結果こそ、クラス優勝を飾りすでにタイトル3連覇を決めていた山本悠太(トヨタGR86)に6分近く遅れてのタイムとなったが、見事すべてのステージを走り切った。

Jun Uruno

「自分の目標としていた、ペースノートを聞いて走るということや、峠の走り方、ラリーの走り方にも少しずつ慣れてきました。初日の後半くらいから、やっとペースノートを聞きながら走れるようになってきて、最後の頃には、ペースノートと走りに一体感が出てきて、レベルは全然低いのですが、楽しくなってきました。ノートを聞いていて“これ違うじゃん”と自分で思うところが結構多く、もっとこういう作りをしなきゃいけないなとか、精度を上げていくことも楽しそうですし、もっと進化していきたいと思いました」とすっかりラリー走行の魅力にはまったようだ。

「実際にラリーに出てみて、やっぱり魅力的な世界だということを教えていただきました。経験がものを言う競技だと言われますが、そのことがよく分かりました。いきなり全日本に来て失礼な感じだったかもしれませんが、本当にいい経験をさせていただきました。ドライバーのみなさんも、このようなコンディションをあれだけの速さで走る技術を持っていて、すごくレベルが高いです。もっと、そういうことを広く知ってもらいたいですね」

今後もラリーに参戦する意志はあるのかという点について荒は「ヨーロッパのヒストリックラリーに出てみたい、という夢があり、いずれは実現したいと思っています。具体的にいつ、というのはまだなのですが。ル・マンで優勝したブランドで出てみたいですね」とうれしそうに語ってくれた。

Kentaro Shirahata

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