
©Jun Uruno
■レグ2
ラリー2日目は、前日の逆走となる「大川嶺リバース(13.57km)」と「大谷リバース(14.00km)」の2ステージを午前と午後でリピートする4SS、55.14km。夜半に降雨があったものの、朝の段階では曇り、午後からは日差しも見えてくる予報も出ている。トップのヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGRヤリス・ラリー2)と2番手につける新井大輝/立久井大輝(シュコダ・ファビアR5)の差は、わずか2.2秒。コバライネンは、ドライとウエットタイヤを組み合わせ、新井大輝はウエット4本を選び、午前中のセクションへと向かった。
SS5、ウエットが残る路面で新井大輝が鎌田卓麻/松本優一(ファビアR5)に8.0秒差のベストタイム。コバライネンは8.8秒差の3番手タイムに留まり、新井大輝がコバライネンに6.6秒差をつけての首位に浮上した。1分31秒2差の3番手には勝田範彦/保井隆宏(GRヤリス・ラリー2)、1分37秒3差の4番手に鎌田という順位で続き、このステージを13.4秒差の4番手タイムで走った福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアRSラリー2)が、5番手につける奴田原文雄/東駿吾(GRヤリス・ラリー2)との差を2.9秒差に縮めている。
SS6、スタートから5km地点でトップの新井大輝がマシンを滑らせてコースオフ。初日のクラッシュでオイルが出た場所に撒かれた石灰が夜間の雨で水を吸い、想定以上に滑りやすくなっていたことが原因だった。新井大輝はバックギヤを入れてステージに復帰したものの、コバライネンはこのステージだけで新井大輝に12.8秒差をつけ、再逆転。コバライネンは新井大輝に6.2秒のアドバンテージを握って、午前中のセクションを終えた。
その後方では、4番手につけていた鎌田が新井大輝と同じ場所でコースオフ。マシン前部にダメージを受け、ラリー続行を断念した。この結果、福永が4番手に順位を上げている。
サービスを挟んだ午後のセクション、晴れ間がのぞきつつあり、路面コンディションはほぼドライ。SS7は新井大輝がコバライネンに2.0秒差のベストタイムをマークし、その差を4.2秒に縮めて最終SSへと向かう。迎えた最終のSS8、コバライネンは新井大輝を2.1秒引き離す会心のベストを刻み、トップフィニッシュ。7戦目にしてシーズン初勝利を手にした。
SS6のコースオフでのタイムロスが響いた新井大輝が、6.3秒差の2位。2分14秒1差の3位に勝田、3分8秒0差の4位に福永、3分19秒0差の5位に奴田原、4分41秒7差の6位に新井敏弘/小坂典嵩(スバルWRX VBH)が入った。
「ラリーでようやく満足できる結果を出せて、本当に本当にうれしいよ。長く厳しいシーズンだったからね。今シーズンは、いつも何かがうまくいかなかった。ミスもしたし、技術的な問題もあった。あらためてチームには本当に感謝している。あと1戦残っているし、全力で頑張るよ」と、タイトルに望みをつないだコバライネンは喜びを噛み締めた。
「ヘイキさんとは戦略的にタイヤをどう使うかが鍵になりましたね。天候にも翻弄されました。結果的にオイルに乗ってコースオフしたことで優勝は逃しましたが、こうやって僅差でバトルできたことが本当に楽しかったです。負けましたが、良い戦いができました」と、新井大輝は清々しい笑顔を見せた。
JN-2クラスは、初日2番手の山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)が、SS5とSS6で連続ベストをマークし、首位を走る貝原聖也/西﨑佳代子(GRヤリス)との差を11.1秒差に縮める。しかし、午後最初のSS5は貝原がベストを取り返すと、最終SS8も山田を先行しての2番手タイムでまとめ、2位の山田との差を15.9秒に広げてフィニッシュ。初日に築きあげたマージンをしっかりと活かし、首位の座を一度も譲ることなく、待望の全日本選手権初勝利をついに手にした。1分48秒3の3位に大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスDAT)、3分19秒7差の4位に内藤学武/大高徹也(GRヤリス)が入った。MORIZO Challenge Cup(MCC)は、ニュージーランドから参戦するジール・ジョーンズ/バイデン・トムソン(トヨタGRヤリス)が、大竹直生/橋本美咲(トヨタGRヤリス)の連勝を止めて、待望のMCC初勝利を飾った。
初日からのリードを守り切った貝原は「今回は真っ向勝負で山田選手に勝つことができたので、本当にうれしいです。セットアップも今までで一番というくらい決まっていて、高速コーナーも低速コーナーもウエット路面もドライ路面も、自信持って走ることができました」と、喜びを噛み締めた。2位に終わった山田は「タイトル獲得に向け、今回の目標は2位以上で帰ってくることでした。最後、リスクを負って攻めるつもりはありませんでした。最終戦は勝ってチャンピオンを決めます」と、JN-2ランキング2番手からの逆転王座を誓った。
JN-3クラスは、初日トップの曽根崇仁/小川由起(トヨタGR86)がSS5でベストタイムをマーク。その後は、2番手以下とのマージンを活かし、慎重なドライブで、昨年のラリー北海道以来、約1年ぶりとなるJN-3クラス優勝を飾った。2番手争いは、SS6でベストタイムをマークした上原淳/漆戸あゆみ(スバルBRZ)が、ここで山口清司/丸山晃助(GR86)を逆転。SS7は山口がベストを獲り返し5.7秒差に迫るが、SS8を獲った上原がその差を11.3秒差に広げて2位表彰台を持ち帰った。山本悠太/立久井和子(GR86)は、首位から56.2秒差の4位に入っている。
今年からコンビを組むコ・ドライバーの小川とは初となる全日本勝利を決めた曽根は「かなり久々の勝利ですし、本当にうれしいです。難しいコンディションでしたが、コ・ドライバーがしっかりとペースノートをリーディングしてくれました。彼女のサポートがあって、勝つことができました」と、小川への感謝を語っている。山口を逆転し、2位に入った上原は「最後、制御系のトラブルがたくさん出てしまい、一生懸命対応した感じです。今回、フロントにドライ、リヤにウエットという初めての組み合わせで走ったことも面白かったです」と、笑顔を見せた。
JN-5クラスは、初日トップの河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ15MB)が、SS6以外の3ステージを制し、最終的には2位に2分55秒9の大差をつけ今季3勝目を獲得。自身初となる全日本ラリー選手権王座を確定させた。初日2.4秒差となっていた小川剛/山本祐哉(トヨタ・ヤリス)と、坂口知洋/野口智恵美(日産マーチNISMO S)の2番手争いは、SS7のスタートから約1km地点で小川がコースアウト。阪口が、首位の河本から2分55秒9差の2位でフィニッシュした。島根剛/粕川凌(ヤリス)が、3分47秒9差の3位で走り切っている。
最終戦を待たずに、全日本王座を決めた河本は「初めてのチャンピオンです。今シーズンは、しっかりとポイントを重ねる地道な戦いでした。最初から今回のラリーが勝負になると考えていたので、SS1からしっかり戦う準備ができていました。SS1でタイム差をつけられたのが一番大きかったです。正直、ここまで長かったです。全日本に出られるような選手じゃなかったところから、サポートしてもらって、少しずつ速くなって、この場所まで来ることができました」と、ここまでの道のりを振り返り喜びを噛み締めた。阪口は「ペースノートやドライビングなど、反省点がすごく多いラリーになりました。上位陣はコンディションに関係なく速いので、次のハイランドでは来年に向けてしっかりトライしたいです」と、2位表彰台にも反省の弁を語っている。
JN-Xクラスは、初日トップの天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、すべてのSSでベストタイムを記録。タイトル獲得後も手綱を緩めることなく、今シーズン負け知らずの7連勝を達成した。6分15秒2差の2位に清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)、16分21秒1差の3位に中西昌人/山村浩三(ホンダCR-Z)と、前日どおりの順位でフィニッシュしている。
今回も隙を見せず、勝ち切った天野は「今回は少しペースコントロールに課題があった気がします。距離の長いステージでは、少しのつもりでもタイムがドカンと下がったりするので……。RAV4でもセットアップが決まってきましたが、加速がいいので、誤魔化されている部分があると感じています」と、自身の課題に目を向ける。2位表彰台を獲得した清水は「初日も2日目も、路面コンディションを読むのが難しかったです。ステージの距離も長くて、難しいラリーでしたね。それでも、自分としては15km前後のステージの方が嬉しいです。途中でリズムを崩しても、取り戻せるので」と、笑顔を見せている。
全日本ラリー選手権第7戦久万高原ラリー 最終結果
1 JN-1 Heikki Kovalainen/北川 紗衣(AICELLO速心DLヤリスRally2) 1:28:14.8
2 JN-1 新井 大輝/立久井 大輝(YAHAGI シュコダ ファビア R5) +6.3
3 JN-1 勝田 範彦/保井 隆宏(GR YARIS Rally2) +2:14.1
4 JN-1 福永 修/齊田 美早子(スミロン☆焼肉ふじ☆CTE555ファビア) +3:08.0
5 JN-1 奴田原 文雄/東 駿吾(ADVANKTMSGRヤリスRally2) +3:19.0
6 JN-1 新井 敏弘/小坂 典嵩(SUBARU WRX VBH) +4:41.7
7 JN-2 貝原 聖也/西﨑 佳代子(ADS多賀製作所K1カヤバGRヤリスDL) +6:07.2
8 JN-2 山田 啓介/藤井 俊樹(FITEASYソミック石川DLGRヤリス) +6:23.1
9 JN-2 大倉 聡/豊田 耕司(AISIN GR Yaris DAT) +7:55.5
10 JN-2 内藤 学武/大高 徹也(YH TEIN Motys GRヤリス) +9:26.9
13 JN-3 曽根 崇仁/小川 由起(P.MU☆DL☆INGING☆GR86) +11:10.3
23 JN-5 河本 拓哉/有川 大輔(DLクスコWMタカタOTS・TWRデミオ) +14:54.5
24 JN-X 天野 智之/井上 裕紀子(TRT・DL・RAV4 PHEV) +15:46.6