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WRC第10戦ラリーパラグアイ(グラベル)は競技最終日となる8月31日、SS16〜19の走行が行われ、トヨタはセバスチャン・オジエ/バンサン・ランデが優勝。南米イベントでの初めての勝利を手にした。エルフィン・エバンス/スコット・マーティンも順位を上げて2位でフィニッシュし、トヨタが1‐2フィニッシュを果たした。カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン5位、TGR-WRT2からエントリーするサミ・パヤリ/マルコ・サルミネンは6位でフィニッシュ。金曜日にデイリタイアを喫した勝田貴元/アーロン・ジョンストンは16位でラリーを終えた。
WRC2部門では、トヨタGRヤリス・ラリー2のオリバー・ソルベルグが今季4勝目をマークして、選手権首位を維持している。
(以下、発表リリース)
WRC 第10戦 ラリー・デル・パラグアイ デイ3
WRC初開催のパラグアイでオジエが優勝、今シーズン4勝目を獲得
エバンスは総合2位でフィニッシュしドライバー選手権首位の座を守る
8月31日(日)、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第10戦「ラリー・デル・パラグアイ」の競技最終日デイ3が、パラグアイ南東部エンカルナシオンのサービスパークを起点に行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(GR YARIS Rally1 17号車)が優勝、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合2位で、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)が総合5位で、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)が総合6位で、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)が総合16位でフィニッシュしました。
WRC初開催となるラリー・デル・パラグアイの最終日デイ3は、サービスパークの東北エリアで「ベラ・ヴィスタ」と、ユネスコ世界遺産の名を冠した「ミッション・イエズスティカ・トリニダード」という2本のステージを、ミッドデイサービスを挟むことなく各2回走行。その合計距離は79.50kmと、3日間で最短でした。
エンカルナシオン周辺の空は朝から雲が広がり、一部エリアでは降雨も。オープニングのSS16はウェット区間を含む路面での戦いになりました。デイ2終盤のSS14で首位に立ったオジエは、滑りやすいコンディションとなったSS16でベストタイムを記録。総合2位アドリアン・フォルモー(ヒョンデ)がコースオフでタイムを失ったことにより、リードを10.3秒から29.2秒に拡げました。その後方では、前日総合3位のエバンスがコースを外れてタイムを失い、オィット・タナック(ヒョンデ)に抜かれ総合4位に後退。続くSS17が始まるころには天気が回復し、土煙が立つセクションもありました。このステージでオジエは5番手タイムとなり、フォルモーとの差は27.1秒とやや縮まりました。再走ステージの1本目、SS18でオジエはロバンペラに次ぐセカンドベストタイムを記録し、フォルモーが遅れをとったことにより差は39.1秒に拡大。このステージでは総合3位につけていたタナックも大きく遅れ、エバンスがフォルモーと3.3秒差の総合3位に復帰しました。
そして迎えた最終のパワーステージ、SS19「ミッション・イエズスティカ・トリニダード2」は非常にドラマティックな展開に。途中から降り始めた雨は一気に強くなり、出走順が後方のトップドライバーたちは雨の影響を大きく受けることに。オジエは大幅にグリップが低下した路面でタイムを失い、ベストタイムのティエリー・ヌービル(ヒョンデ)から19.8秒遅れの10番手タイムに。それでも、総合2位につけていたフォルモーも雨で大幅に遅れ、ステージフィニッシュ後にリタイアとなった結果、オジエは総合2位に順位を上げたエバンスに26.2秒の差をつけて、今シーズン4勝目を獲得しました。オジエはスーパーサンデー5位による1ポイントも獲得。今シーズン出場したラリー全てで表彰台に立つという非常に安定した戦いぶりもあり、ライバルより出場回数が2戦少ないながらも、ドライバー選手権では、2位ロバンペラと2ポイント差の3位の座を守りました。今回の勝利によりオジエのWRC通算優勝回数は65となり、これまであまり巡り合わせが良くなかった南米のラリーで、初めて表彰台の最上段に立ちました。
総合2位でフィニッシュしたエバンスはパワーステージ4番手、スーパーサンデー3位によりボーナスポイントも獲得。ドライバー選手権首位の座を守り、2位のロバンペラに対するリードを3ポイントから、7ポイントへと拡げました。デイ2の終盤まで首位につけるも、タイヤのダメージにより総合6位に後退したロバンペラは、フォルモーのリタイアにより総合5位でフィニッシュ。パワーステージ2番手、スーパーサンデー2位によりボーナスの8ポイントも手にしました。なお、TGR-WRTはオジエ、エバンス、ロバンペラが獲得したポイントにより、マニュファクチャラー選手権首位の座を堅持。選手権2位のライバルとのポイント差は100に拡がりました。なお、今回の勝利はトヨタにとってWRC通算102勝目となり、シトロエンと並びもっとも多くの優勝を獲得したマニュファクチャラーとなりました。
デイ1でタイヤにダメージを負い大きく順位を落としてしまっていたパヤリは総合6位で、デイ1でのデイリタイアを喫し大きく後退した勝田は、総合16位でラリーをフィニッシュ。勝田はパワーステージ5番手により、ボーナスの1ポイントを獲得しました。
サポート選手権のWRC2では、金曜日朝のスローパンクチャーによる1分以上の遅れを挽回してクラス2位につけていたGR Yaris Rally2のオリバー・ソルベルグ(スウェーデン/プリントスポーツ)が、デイ3オープニングのSS16でついに首位に立ち、そのまま最後までリードを守り切り優勝。今シーズンWRC2クラス4勝目を獲得し、総合でも7位と健闘。WRC2の選手権リードを11ポイントに拡げました。なお、ソルベルグがポイントを獲得することができるラリーは、今シーズンあと1戦となります。
ユハ・カンクネン (チーム代表代行)
1-2フィニッシュという、チームにとって素晴らしい結果を得られたことを心から喜びたいと思います。始まる前は比較的シンプルな展開のラリーになるかと思われましたが、実際は多くの出来事が起こり、誰もが大きな浮き沈みを経験することになりました。そして最終日も降雨があり、さらに興味深い展開になりました。セブは今週末、速さだけでなく経験も活かした素晴らしい走りを見せ、エルフィンも終盤に追い上げて2位を獲得しました。我々の他のドライバーたちは運に恵まれませんでしたが、マニュファクチャラー選手権にとっては良い結果です。現在かなり大きなリードを築いていますが、ラリーでは一瞬で状況が変わるため、シーズン終了まで集中力を保ち続けなくてはなりません。
エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
現地に来て皆が予想していた以上に難しく、過酷なラリーでした。だからこそ、最終的にこのような結果を得られたことに満足しています。今日に向けては改善点を見つける必要がありましたが、それを成し遂げることができました。今朝1本目のステージで危ない瞬間をやり過ごすことができたのはラッキーでした。パワーステージで降った雨は自分たちの目標達成を難しくしましたが、それでも最終的にはポジションを維持するだけでなく、2位に順位を上げることができたので、悪くない結果だといえます。
カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
今日は可能な限りの結果を目指しました。コンディションはトリッキーで、ドライバーが走るごとに変化するような状況でしたが、自分としては良いフィーリングを掴み切れていませんでした。しかし、自分が走り終えた後に降った雨が多分助けとなり、最終的には日曜日に獲得可能な最大10ポイントのうち、8ポイントを獲得できたので悪くない結果だと言えます。昨日の出来事は残念でしたが、チャンピオンシップ争いはまだ接戦状態なので、チリで再びチャレンジします。パラグアイのファンの皆さん、本当にありがとう。ラリーを通して本当に素晴らしい雰囲気でした。
セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車)
今週末の自分たちのパフォーマンスを誇りに思います。金曜日にタイムを失った後も決して諦めずにプッシュし続け、とても楽しむことができました。最終日は雨によってコンディションが急速に変わりました。好調にループを走行し、リードを広げながら最大ポイントの獲得を目指していました。しかし残念ながらパワーステージで雨に見舞われて大幅にタイムを失い、獲得ポイントも目減りしましたが、幸いにも最も重要な、優勝に必要なリードは守ることができました。これまで自分にとってあまりラッキーな場所ではなかった南米でついに勝利を手にし、素晴らしいファンの皆さんの前で表彰台の最上段に立てたことを、心から嬉しく思います。
勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
金曜日の出来事以降、自分にとっては厳しい週末でした。ペースは良かっただけに、昨日は出走順一番手でステージを走ることになり、その後も簡単に行かなかったことは残念です。このラリーでは学ぶことが多く、クルマのセットアップをいくつか試しながら走り続けました。今日は雨が降りコンディションの見極めが難しかったですが、うまくいったと思います。自分が望んでいたような結果にはなりませんでしたが、とても良いラリーでしたし、ファンの皆さんも素晴らしかったので、本当に楽しむことができました。
サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
この週末、本当に素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝します。自分にとって新しいイベントは常に刺激的で、金曜日に3位をキープしながら確実なペースを保つことができたのは本当に良かったです。その後に起きたことは残念でしたが、自分たちは諦めず、良いペースを保ちながらチャレンジを楽しもうとしました。今回、力強いパフォーマンスを発揮することができたのは確かなので、次のイベントが楽しみです。
ラリー・デル・パラグアイの結果
1 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1) 3h00m06.6s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +26.2s
3 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1) +27.2s
4 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1) +30.6s
5 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +2m05.2s
6 サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +3m35.5s
7 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (トヨタ GR Yaris Rally2) +6m53.8s
8 ヨアン・ロッセル/アルノー・デュナン (シトロエン C3 Rally2) +7m16.3s
9 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ Fabia RS Rally2) +8m48.2s
10 ファブリツィオ・ザルディヴァー/マルセロ・デル・オハネシアン (シュコダ Fabia RS Rally2) +9m17.0s
16 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1) +22m10.9s
(現地時間8月31日16時00分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
第10戦終了時点でのドライバー選手権順位
1 エルフィン・エバンス 198ポイント
2 カッレ・ロバンペラ 191ポイント
3 セバスチャン・オジエ 189ポイント
4 オィット・タナック 180ポイント
5 ティエリー・ヌービル 150ポイント
6 勝田 貴元 88ポイント
7 アドリアン・フォルモー 71ポイント
8 オリバー・ソルベルグ 58ポイント
9 サミ・パヤリ 56ポイント
10 グレゴワール・ミュンスター 21ポイント
第10戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位
1 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 513ポイント
2 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 413ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 143ポイント
4 TOYOTA GAZOO Racing WRT2 96ポイント
次回のイベント情報
WRC次戦は、9月11日(木)から14日(日)にかけて、南米のチリで行われる第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」です。ラリー・デル・パラグアイ終了後、チームはエンカルナシオンのサービスパークでクルマの整備を行い、南米連戦2戦目となるラリー・チリに備えます。2019年に初めてWRCとして行なわれたラリー・チリは、今年で4回目の開催。ラリーの中心となるのは、チリ中南部ビオビオ州の州都「コンセプシオン」。路面はグラベルで、森林地帯のテクニカルな中高速ステージが大部分を占め、全体的に路面はスムースですが、タイヤに厳しいセクションも多くあります。