
©Jun Uruno
2025年シーズン全日本ラリー選手権第4戦「加勢裕二杯 MONTRE 2025」が、6月6日(金)~8日(日)にかけて、群馬県安中市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスは新井大輝/立久井大輝(シュコダ・ファビアR5)が優勝。新井大輝は、昨年に続いての連覇となる。2位にヘイキ・コバライネン/北川紗衣(GRヤリス・ラリー2)、3位に勝田範彦/保井隆宏(GRヤリス・ラリー2)が入った。
■レグ1
今年の全日本ラリー選手権、開幕戦から続いてきたターマック4連戦の最後を飾るモントレーは、今回も国際格式イベントとして開催。昨年に続き、群馬県安中市の「安中しんくみスポーツセンター」にサービスパークが置かれ、周辺のターマックステージを走行する。ラリー初日は「Yokura Touge(14.04km)」、「Old Usui Touge(9.10km)」の2ステージを、午前と午後でリピートする4SS、46.28kmが設定された。
6月7日土曜日、安中しんくみスポーツセンターのサービスパークでセレモニアルスタートを実施。朝から青空が広がり、多くのスペクテイターがステージへと向かうラリーカーを見送った。SS1、前戦飛鳥でシーズン初勝利を手にした新井大輝が、コバライネンに8.8秒、勝田に8.9秒、鎌田卓麻/松本優一(ファビアR5)に13.8秒差をつける会心のベストタイムを刻む。奴田原文雄/東駿吾(GRヤリス・ラリー2)は17.5秒差の5番手タイム、福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアRSラリー2)は18.9秒差の6番手タイムと一歩遅れた。
多くのスペクテイターが集まった旧道碓氷峠を走るSS2は、コバライネンが新井大輝に2.1秒、鎌田に3.6秒をつける初ベスト。午前中のステージを終えて首位の新井大輝と、2番手のコバライネンとの差は6.7秒。SS2は9.0秒差の5番手タイムに沈んだ勝田をかわした鎌田が、15.3秒差の3番手に浮上している。
サービスを挟んだ午後のセクション、コバライネンが鎌田に5.5秒、新井大輝に9.8秒差をつける連続ベストタイムをたたき出す。これでコバライネンが新井大輝に3.1秒差をつけて首位に躍り出た。この日を締めくくるSS4は新井大輝がベストを獲り返し、首位コバライネンとの差を0.8秒にまで詰めて初日を終えた。
22.8秒差の3番手に鎌田、その5.7秒差の4番手には勝田がつける。45.1秒差の5番手は奴田原、50.9秒差の6番手に福永。2分05秒6差の7番手には、足まわりにアップデートを施して挑んだ新井敏弘/小坂典嵩(スバルWRX VBH)が続いている。
首位を争うふたりが2本ずつベストを獲り合う展開となったが、コバライネンは「自分としては、今回もまだ完璧なフィーリングとは言えない状況だね。正直、SS3のタイムには自分でも驚いている。まだ足りていない部分があるし、バランスが完璧ではない。明日も改善できるようトライしていくよ」と、納得のいかない様子を見せた。
僅差の2番手となった新井大輝は「午後はこれまでと異なるセットアップを試してみたら、SS3で想定以上にタイム差をつけられたので、すぐに元に戻しました。それでも、0.8秒差で2番手なら追う方が楽だと考えています。明日は湧水が流れているステージがあるので、そういったところは自分の方が得意な気がしますしね」と、最終日に逆転を誓う。
JN-2クラスは、この日行われたすべてのステージで山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)がベストタイムをマーク。SS1でエンジンの不調に見舞われた小泉敏志/村山朋香(GRヤリス)が、SS4で貝原聖也/西﨑佳代子(GRヤリス)をパスし、小泉が首位の山田から34.3秒差の2番手で初日を折り返した。3番手の貝原とは、わずか2.5秒だ。首位から52.9秒差の4番手には三枝聖弥/木村裕介(GRヤリス)が入った。
盤石の走りで2番手以下に大差をつけた山田は「前戦飛鳥から良いフィーリングがあって、それをそのままモントレーでも持続させることができました。セットアップも少しずつ良くなっていますし、ドライビングの進化も体感できました。トップを獲りにきているのではなく、今年はさらに速さを求めて取り組んでいます」と、冷静にコメント。小泉は自身のドライビングを振り返り「午後はクルマがしっかり動いてくれるセットアップに変更したのですが、トラクションを上げる方向に変更できていなかったのか、タイムが出せていません。まだ、そのバランスを探っている感じです。明日に向けて、タイムを出せるようなセットアップに持っていきたいですね」と分析した。
トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、開幕戦から3連勝中の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、SS1でトップタイムをマークし、SS2でも首位をキープ。ところが、SS3を走行中に突然エンジントラブルに見舞われストップ、ここでリタイアとなった。山本の脱落により、ここまでベストこそないもののコンスタントに好タイムを重ねた渡部弘樹/横山慎太郎(トヨタ86)がトップに立つ。6.2秒差の2番手には渡部と同じく2Lエンジン搭載のBRZを駆る鈴木尚/島津雅彦。12.4秒差の3番手に2.4Lエンジン搭載のBRZを駆る上原淳/漆戸あゆみ、13.0秒差の3番手に山口清司/澤田耕一(トヨタGR86)が続く。
山本の思わぬリタイアによって、トップで初日を折り返した渡部は「1本1本のSSを全力で走ったので、総合のリザルトよりもベストを尽くせたことがうれしいです。監督のアドバイスのおかげで碓氷は大幅にタイムを伸ばせました。SS3は最初にできなかったサイドターンもできて満足だったんですが、まだベストが獲得できていないので、明日は獲りにいきたいです」と、2日目の目標を明確に掲げた。僅差の2番手につける鈴木は「午後は最初のループよりタイムが上がったんですが、前を走る渡部選手もペースが上がったことで差が広がりましたね。最終日はかなり距離が短いんですが、油断していると後ろに負けてしまうので気合いを入れて走ります」と、後続の2.4リッター勢を警戒する。
JN-4クラスは、前戦飛鳥で全日本ラリー選手権初優勝を飾った藤原友貴/宮本大輝(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS1で高橋悟志/箕作裕子(スイフトスポーツ)を13.3秒も引き離す圧巻のベストタイムをたたき出す。高橋はSS2、SS3、SS4と3連続ベストを奪って応戦するが、藤原もこの3本を2番手タイムで並べてみせる。この結果、藤原が高橋に6.8秒のアドバンテージを残して首位で初日を折り返した。43.2秒差の3番手に筒井克彦/本橋貴司(スイフトスポーツ)、1分04秒4差の4番手に鮫島大湖/船木佐知子(スイフトスポーツ)が続く。
SS1での好タイムにより初日をリードした藤原は「SS1はタイトなセクションが多く、新しい対向ブレーキに自分のフィーリングを合わせながら走りました。SS4はスタートから8kmくらいでフロントガラスが曇ってしまいました。こんなに急激に気温が下がるとは思っていませんでした。明日は、このリードをどれくらい活かして走れるかですね」と、慎重に語る。3本のベストタイムを刻んだ高橋は「午後は差を詰めることができましたね。ただ、本来の自分とは異なるスタイルでドライブしているので、かなりフラストレーションが溜まりました。でも、こっちの走らせ方の方がタイムが出ているので……」と振り返った。
JN-5クラスは、SS2とSS3で連続ベストタイムを並べた中溝悠太/佐々木裕一(トヨタ・ヤリス)が、2番手の松倉拓郎/山田真記子(ヤリス)に15.9秒差をつけて首位を快走する。ところが、初日の最後を締めくくるSS4で、中溝がコースオフを喫して石垣にマシンをヒット。レグ離脱を余儀なくされたことで、松倉が河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)に15.2秒差をつけてトップで折り返した。1分41秒5差の3位に阪口知洋/野口智恵美(日産マーチ)がつける。
中溝の脱落により、労せずしてトップに立った松倉は「まろやかにトップに立ちましたね。SS4で中溝選手がクラッシュしていたことで、ペースをかなり落とすことになりました。明日は得意なステージ中心なので、このリードを活かして走ります」と、コメント。2番手の河本は「これまで苦手に感じていた旧道碓氷峠のステージでフィーリングが合って、SS4でベストタイムを獲得できました。中溝選手が脱落したうえでの2番手ですが、フィーリングも良いので、しっかり追いつけるように頑張ります」と、最終日に逆転を狙う。
今シーズンから従来のJN-6に代わり「駆動方式を問わず気筒容積が2500cc以下のAE車両」という新たな環境対応クラスへと変更されたJN-Xクラス。開幕戦からトヨタRAV4 PHEVを投入した天野智之/井上裕紀子が、今回もSS3以外の全ステージでベストタイムをマークする貫録の強さを見せ、SS3でベストを刻んだ清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)に、初日だけで1分10秒1差をつけている。1分17秒5差の3番手には、初日午前中の段階では2番手につけていた海老原孝敬/蔭山恵(ホンダCR-Z)が続いた。
今回も危なげなくトップに立った天野だが、「順調に走れているんですが、想定しているようなタイムが出ていません。これだけパワーがあるのに、昨年のアクアとタイムがほとんど変わらないんです(笑)。やはり使いたいタイヤを装着できれば、このパワーを活かせるのでしょう」とコメント。天野に大差をつけられてしまった清水は「色々とセットアップを変えたんですが、フィーリングに対してタイムが合っていません。ラリーはレースと比べると、タイムに絡んでくる要素が多いので、やっぱり難しいですね」と、首を振った。