トム・ファウラー、新規定ラリー1のハイブリッドパワー運用について語る – RALLYPLUS.NET ラリープラス

トム・ファウラー、新規定ラリー1のハイブリッドパワー運用について語る

©TOYOTA

TOYOTA GAZOO Racing WRTのテクニカルディレクターを務めるトム・ファウラーはオンラインで行われた取材で、最新のラリー1車両についての質問に答えた。

ハイブリッドシステムの機能について、ブーストの展開はどのようなで行われますか。

ブーストの展開は、実際には時間をベースにしたストラテジーではなく、エネルギーベースのストラテジーとなる。つまり、次の加速時にブーストを展開するためには、ブレーキング時に特定の量のエネルギーを回生させなくてはならない。また、加速時に使用できるエネルギーの量はステージの長さに関連して制限されている。たとえばバッテリーが完全に充電された状態でスタートし、特定の量のエネルギーを回生し、ブーストを展開し、バッテリーには最後何も残っていない状態にする。FIAのレギュレーションを極めて簡単に説明すればそういうことになる。

ル・マンでのトヨタのLMP1マシンにはいつ、サーキットのどの場所でブーストを使うかという戦略に関して正確なECUのプログラムがありましたが、そのようなことはできるのでしょうか?

FIAはそれを可能にすることを望まなかった。つまりそれは、サーキットに関する精密な地図を作ることを意味する。それだけでも大変な作業になるが、ラリーの場合には仮にステージが200kmだとしても、その200kmは“再利用”されないわけだ。年間12戦か13戦分の精密な地図を作るとなれば、膨大な距離になってしまうし、シミュレーションと計算だけでもかなり大変になる。おまけに非常に高いコストもかかってくる作業になるんだ。

現在、ブーストがどのように提供されるかというマッピングについては、3種類のトルクマップを使うことができる。ひとつは凍結路や滑りやすいグラベル、もうひとつは比較的グリップがあるグラベル、そしてターマックという感じで使い分けることになるかもしれない。

ドライバーはどの程度のエネルギーを使うことができるか、ディスプレイに表示されたりするのでしょうか。

電気モーターから提供されるトルクは、ドライバーのスロットルペダルによるリクエストに統合されなくてはならないため、ドライバーは例えばブーストを追加するためのスイッチを使ったり、どのようにブーストが提供されるか分かったりするわけではない。ブレーキングでエネルギーが回生され、それが特定の量に達するとブーストの「チケット」のようなものが使えるというイメージだ。使うことのできるブーストがあれば、エンジンとモーターが一緒にそれを提供するし、なければエンジンのみからパワーが供給されるということになる。

するとドライバーが能動的にそれを使うことができるわけではないのですね。

そのとおり。現在、内燃エンジンで行っているのと同じような感じで、ドライバーはどの程度のトルクが出ているかというフィードバックしか分からない。スロットルを操作した際、それは身体に返ってくる感覚でしか分からないんだ。



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