WRCフィンランド:勝田貴元、困難を乗り越え速さを示す – RALLYPLUS.NET ラリープラス

WRCフィンランド:勝田貴元、困難を乗り越え速さを示す

©TOYOTA

TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの勝田貴元は、地元ラリーとも言えるWRC第10戦フィンランドに参戦した。勝田のヤリスWRCはこのフィンランドからワークス3台と同じフロントフェンダーを装着して参戦しており、“地元”ラリーにかけるチームの意気込みが感じられる。勝田は2日目のコースアウトによりデイリタイアを余儀なくされたが、3日目に再出走を果たしてパワーステージで4番手タイムをマークし、ポイントも獲得。総合37位でフィニッシュした。なお、初コンビを組んだアーロン・ジョンストンとは今後2戦についてもコンビを組む方針だという。

(以下チームリリース)


ラリー・フィンランドは、ラリーの開催地であるユバスキュラに生活拠点を置く勝田にとって、ホームイベントといえるものです。それだけに、このラリーに対して特別な思いを抱き、キャリアベストのラリーとするために準備を進めてきました。しかし、新型コロナウイルスの影響により、本来ヤリスWRCで出場する予定だった昨年の大会は中止となり、今回初めてこのラリーにトップカテゴリーのWRカーで挑みました。通常、ラリー・フィンランドは夏季に行われますが、今年は例外的に秋季の開催となり、路面コンディションは今までとは大きく異なりました。気温が低く、また路面がやや湿り気を帯びているため、グリップは全体的に低下。非常に滑りやすいセクションも多く、勝田にとっては新たな挑戦となりました。また、前戦のアクロポリス・ラリー・ギリシャではコ・ドライバーのキートン・ウイリアムズが家族の事情により急きょ出場できなくなり、勝田も出場を断念。そこで、新たにアイルランド出身のアーロン・ジョンストンをコ・ドライバーに迎え、今回がふたりで戦う最初のラリーとなりました。

このように、勝田は決して理想的とはいえない状況でラリー初日の金曜日に臨みましたが、ユバスキュラの市街地が舞台のSS1ではベストタイムを記録。幸先の良いスタートを切りました。しかし、続く森林地帯でのSS2で勝田は高速スピンを喫し、大きくタイムをロス。幸いにしてクルマにダメージはありませんでしたが、勝田はその後思うようにペースが上がらず、総合8位でデイ1を終えました。ラリー最長の距離を走る土曜日のデイ2は、勝田にとって非常に困難な1日となってしまいました。2本目のSS8でコースを外れ、岩に当たりクルマの右後ろにダメージを負いデイリタイアに。しかし、チームによって修理されたクルマで勝田は競技最終日の日曜日に再出走。出走順がトップだったため、路面はかなり滑りやすい状態でしたが、それでもパワーステージを含む2本のステージで4番手タイムを刻み、2ポイントを獲得。ポジティブな形でラリーを締めくくりました。

TOYOTA


勝田貴元
ラリーのスタートは、ステージ優勝という形で非常に上手く行きました。短いステージでしたが、それでも最速タイムを出せたのは良かったです。しかし、最初の森林ステージでかなり危ない瞬間があり、その後自信とフィーリングを取り戻すのに苦労しました。土曜日のステージではもう少しプッシュしようとしたのですが、出走順が早かったため簡単にはいきませんでした。SS8では、途中の区間タイムは良かったのですが、フィニッシュ前の高速コーナーが予想以上に滑りやすく、コースから少しはみ出て岩に当たってしまい、ストップせざるを得ませんでした。日曜日に再スタートできるように、クルマを直してくれたチームに感謝します。日曜日は出走順がトップでしたが、タイムは決して悪くありませんでした。全体的には残念な週末でしたが、これがモータースポーツですし、将来に向けてさらに学びを深めたいと思います。

ユホ・ハンニネン(インストラクター)
貴元はこのラリーに大きな期待を寄せていましたが、新しいコ・ドライバーと初めて仕事をするという意味で、フィンランドは理想的な環境とはいえませんでした。また、ここ最近ラリーでヤリスWRCに乗る機会が少なかったこともあり、走りのフィーリングを少し失っていたようにも思います。しかし、金曜日にスピンをした後は、徐々に自信を取り戻していきましたし、全ての状況を考えるとなかなかのタイムが出ていました。土曜日に入るとスピードが上がり始め、パイヤラのステージの区間タイムはかなり良く、好タイムを期待できそうでした。しかし、残念ながらジャンプの着地でコースからはみ出し、大きな岩に当たってデイリタイアを余儀なくされました。それでも、日曜日の再出走を強く望み、もっと走りたい、アーロンとの経験を多く積みたいと貴元が思えたのはいいことです。実際、最終日のタイムは良かったですし、何よりもアーロンとの仕事が上手く行ったことは大きな収穫でした。

Result
ラリー・フィンランド デイ3の結果

1 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ ヤリス WRC) 2h19m13.7s
2 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +14.1s
3 クレイグ・ブリーン/ポール・ネーグル (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +42.2s
4 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (トヨタ ヤリス WRC) +58.8s
5 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (トヨタ ヤリス WRC) +2m54.4s
37 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ ヤリス WRC) +1h21m33.5s

次回のイベント情報
勝田のWRC次戦は、10月14日から17日にかけて、スペインのサロウを中心に開催される「ラリー・スペイン」です。2年ぶりのWRC開催となるスペインは、今回久々に純粋なターマック(舗装路)ラリーとして行われ、新たなステージも加わります。スペインのステージは全体的に流れるような中速コーナーが多く、路面もスムーズなため、サーキットレース出身の勝田にとっては実力を発揮しやすいラリーといえます。



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