FIAラリーディレクターのイブ・マトン、2020年シーズンの総括と今後の展望を語る – RALLYPLUS.NET ラリープラス

FIAラリーディレクターのイブ・マトン、2020年シーズンの総括と今後の展望を語る

©FIA / Harold Cunningham

FIAラリー委員会は、FIAラリーディレクターを務めるイブ・マトンのインタビューを公開した。新型コロナウイルスの世界流行により厳しいシーズンとなった2020年を振り返るとともに今後の展望についてを語っている。

Q:COVID-19の第一波後、多くのラリー競技が開催された。この成果をどのように評価するか
イブ・マトン(=YM):「多くの人々が何かしらの成果を収めようと非常にモチベーションを高め、時には直前の決定にも関わらずそれをやり遂げた。誰もが選手権を成立させようと必死に取り組んだ。WRCだけでなく、地域選手権レベルにおいてもだ。また、臨機応変に対応したり、慣例にとらわれることなく広い視野を持ったアプローチで開催されたイベントも多かった。決して簡単にできることではないが、最終的にみんなが関わることで成果につながり、相応の価値をもったタイトルを与えることができた選手権も多かった」

Q:イベントを開催するうえで越えなくてはならなかった壁は何だったか
YM:
「ラリーよりも早く再開したF1で採られた手法が役立ったこともあった。しかしラリーは、閉鎖されたサーキットで行われるレースとは違うため、ラリー独自の状況に調整しなくてはならなかった。シーズン中断後、最初の国際格式ラリーを開催したイタリアのローマ(ERC)や、WRCの再開ラウンドとなったエストニアでは、地元の主催者と政府が熱心に取り組み、新しいアプローチや新しいツールを駆使してイベントを運営した。しかし、彼らにとっては壮大なチャレンジであったことには違いなく、エストニアの関係者の言葉を借りれば、イベントを主催すること自体は「要素としては簡単な部分」だった。最も困難だったのは、COVID-19の感染防止対策の段取りを組み立てることだった」

Q:成功するという自信は常に持っていたか
YM:
「自信が揺らぐということはそれほどなかったが、ポジティブな時もあればネガティブな時もあった。これだけ長い間、再開を待たなくてはならなかったので、ローマやエストニアでイベントが開催された時にようやく、すべてのプロセスがつながり、イベントを開催できるのだと確信できた。数々のワーキンググループで話し合いが行われたが、唯一のビジョンは我々は置かれた状況に立ち向かう、そのために何かをやる、ということだった」

Q:ローマについて言及したが、2020年のERCの取り組み方についてどう考えるか
YM:
「もちろん、プロモーターであるユーロスポーツ・イベンツは、素晴らしい仕事をやり遂げた。イタリアで最初のロックダウンが解除されると、すぐに動き出した。第一波で感染の激しかった国だったが、常に状況に立ち向かい、プランを柔軟に変更していった。終わってみれば、非常に見応えのあるシーズンになったし、ラリーイズラス・カナリアスのようなうれしいサプライズもあった。このラリーでは雨が降ることは滅多にないが、様々なコンディションに挑戦できることはドライバーやコ・ドライバーにとってもいいことだ。これで、さらにタイトルの価値が高まった」

Q:ERCは開幕することができたが、シーズンを断念した選手権やトロフィーも多かった。そうしたシリーズの主催者にはどんなメッセージを贈るか
YM:
「イベントの開催に向けて必死にがんばったが、ギリギリでキャンセルを余儀なくされた関係者は本当に気の毒だった。開催時期に翻弄されたイベントも多く、イベントを運営しようという意欲が足りなかったのではなく、ただただタイミングが悪かったというケースがほとんどだ。そのいい例が、イープルラリーだ。予定どおり10月の上旬の会期であれば開催することができていた。会期を変更したことですべてがうまくいくと思われたが、パンデミックの状況があっという間に変わってしまった。どれが一番いい選択肢なのかを予測するのは難しく、運にもあまり恵まれなかった。2020年にイベントをキャンセルした主催者が、それまでの準備を2021年にそのままつなげて楽に開催できるようになることを願っている」

Q:多くの主催者グループの中でも距離を延長して対応したのが、WRCのラリーモンツァを支えたチームだ。このイベントについての評価は。このイベントの方式が将来的にひとつの形になると思うか
YM:
「短い期間で準備を進めたという点では、サーキットのステージと、山間部でのいわゆるラリーらしいステージを組み合わせた実に興味深いイベントを見事に作り上げた。サーキットでラリーを行うことはラリーのDNAではないと批判する人もいるが、あのイベントはまさに試練を演出した。将来的に、我々が違う形でラリーを主催しなくてはならなくなった場合も、ラリーのDNAを失わずにできる方法があることを我々は学んだ。私は、多様性を重んじていきたいと思っているし、同じようなイベントばかりを並べたくはない。選手権の中にラリーモンツァのようなイベントが1、2戦あることは、有意義なことだと思う」

Q:ワールドモータースポーツカウンシルは、WRCを含め2021年のカレンダーを承認した。そこにはどのようなメッセージが込められているのか
YM:
「2021年もチャレンジングな状況は続くと思うが、込められた思いはポジティブだ。WRCに関しては、現在の世界情勢や、マニュファクチャラーが2022年から投入する新規定のマシンを開発しなくてはならない状況を踏まえ、シーズンの後半まで遠征イベントを入れない、戦数を減らすなど様々な制約を考慮している。
WRCの成功に貢献してきた名門ラウンドで2021年のカレンダーに入っていないイベントもあることは承知しているが、今後、二度と開催されないというわけではない。保証することはできないが、今の段階では、ラリーモンテカルロは開催できるという自信はかなりある。もちろん、制約や変更しなくてはならないことはあるが、このようなイベントを開催することができれば、その先ももっとイベントを開催することができる。もちろん、ラリースウェーデンを開催することができないのは非常に残念なのだが」

Q:カレンダー以外で、2021年に向けて前向きに捉えていることは何か
YM:
「各選手権に参戦しようという興味が高まっていると、多くの人から聞いている。実際にどうなるかは、まだ様子を見なくてはならないが、様々なカテゴリーで相応のエントリー数が集まっているというポジティブなフィードバックを受けている。また、WRCにピレリが戻ってくるが、これはシングルタイヤのサプライヤーとしての合意に留まらない。持続可能性についても一緒に取り組み、新しいドライバーを選手権に呼び込もうと非常に意欲的だ。私も、心から楽しみにしている」



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