全日本ラリー北海道:接戦を制した新井大輝が今季初優勝。ポイントリーダーで最終戦へ – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本ラリー北海道:接戦を制した新井大輝が今季初優勝。ポイントリーダーで最終戦へ

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全日本ラリー選手権第9戦ラリー北海道は、すべての競技日程を終えて、スバルWRX STIの新井大輝/小坂典嵩が逃げ切り今シーズン初優勝を達成した。2位には新井敏弘/田中直哉、3位には鎌田卓麻/鈴木裕が入り、WRX STIが昨年のラリー北海道に続いて表彰台を独占するかたちとなった。

この日行われたのは、2本のSSを2度走行する4SS。オープニングステージとなるSS9オトフケ・リバース(6.12km)は前夜の降雨によりウエット路面となり、マシンコントロールの正確性が要求される。SS11でも再走するため、路面コンディションはさらに難しさを増すと多くの選手が予想していた。SS10/12のパウセカムイ(10.40km)はドライでの戦いとなる。残り33.04kmのスプリントバトルは、早朝5時のサービスから熱を帯びはじめた。

スバル3台が秒差のバトルを繰り広げているJN1クラス。ウエットのSS9で渾身のベストタイムをマークしたのは新井敏弘だった。首位新井大輝との差を0.6秒に削り、プレッシャーをかけていく。続くSS10は鎌田が制し、新井大輝も浮き砂利に足をとられながら新井敏弘のタイムを上まわって、1.0秒という僅差ながら首位をキープしてみせた。サービスに戻ってきた新井大輝は、「勝負は次のオトフケ・リバースになると思います」とコメント。その言葉どおり、SS9の再走となるSS11オトフケ・リバースで堂々の一番時計。総合2番手につける新井敏弘との差を2.9秒に広ることに成功した。そして迎えた最終SS。ここでは前日にシフトレバーのトラブルで戦列を去っていた勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)が今大会初のベストタイムを獲得。勝田から0.4秒遅れのSS3番手でフィニッシュした新井大輝は、これで今シーズン初優勝。変則的なシーズンということもあり、2019年ラリー北海道以来の勝利となった。2位は最終SSでタイムロスを喫してしまった新井敏弘、3位に鎌田が入り、スバルWRX STI勢が表彰台を独占する結果となった。
スプリントバトルを制した新井大輝は、「オトフケは路面状況がスリッパリーななかで、どれくらいタイム差がつくのかがポイントでした。今年の北海道は距離が短く、すべてのステージを全開で走らないと置いていかれてしまうので逆に疲れましたね。VABはターマックのセットアップの面で課題があるので、唐津までの間でしっかりとセットアップを出していきたいです」とコメント。ここ数戦、完璧な答えを見出せていないターマックのセットアップについても言及した。

前戦の丹後でターマック初優勝を果たした上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)がリードするJN2クラスは、最後に波乱が待っていた。この日午前中の2SSを両方ベストでまとめた上原だが、再走のSS11オトフケ・リバースに落とし穴があった。まさかの駆動系トラブルでストップ……3年連続でのリタイアを喫することとなってしまった。これでJN2クラス首位に立ったのは中平勝也/石川恭啓(トヨタGT86 CS-R3)。後続の中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)とは大きく差が離れているため、終盤にかけて順位は入れ替わることなく、中平が全日本ラリー選手権で初優勝を飾った。2位には中村、3位はシトロエンDS3 R3Tの山村孝之/井沢幹昌という順位となった。
初優勝となった中平は、「勝てたのはうれしいのですが、上原選手のことを考えると残念です。それでも初優勝ですし、ラリーではこういったことが起こるのだな、と思いました。次のラリーはスピードで競って、しっかり勝ちたいとあらためて思いました。舗装路の方が、このクルマは得意なんですが、前戦の丹後を考えると簡単ではなさそうです。唐津まで少し時間があるので、しっかり準備をして、トップ争いができるようにして挑みたいですね」と、意気込みを語っている。

JN3クラスは山本悠太/山本磨美(トヨタ86)がリード。2番手に曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)、3番手に長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)がつける。この日最初のSS9では、リヤ2輪に軟質ダート向けのダンロップ74Rを装着した曽根がベストタイムをマークし、山本との差を約10秒詰めることに成功する。しかし山本も落ちついてパウセカムイではきっちりとベストタイムを刻む。午後のループでも山本はペースを乱すことなく曽根のタイムを上まわり続け、今シーズン初優勝を挙げた。2位に曽根、3位には長﨑が入っている。
山本は「終始自分のペースを守って、マージンを使い切ることなく、安定して走ることができました。昨日のSS1が悪すぎたので、それがなければ、もっと余裕を持って戦えたと思います。JN3クラスはかなり混沌としてきたので、次も優勝とデイポイントもしっかり獲れるように準備したいと思います」と、最終戦への意気込みを見せた。また、2位となった曽根も「初日の遅れが痛かったですね。Sammy賞とデイポイントを獲れたので、最大限いい結果が残せたと思います。唐津は九州出身としては地元なので、ぜひ優勝してシーズンを締め括りたいですね」と語った。

古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が首位に立つJN4クラス。オープニングステージのオトフケ・リバースでは、4WDのトラクションを活かしてダイハツ・ブーンX4の小倉雅俊/平山真理、山口貴利/山田真記子がSS1-2番手で強さをみせ、クラス2番手の小倉は古川の2.7秒背後まで迫ってみせた。続くSS10では古川がベストタイムをマークし、その差を7.8秒まで押し戻した。この傾向は午後も変わらず、SS11では再び小倉が一番時計で古川との差を2.3秒まで詰めるが、古川は落ちついて最終SSをベストタイムでフィニッシュ。3.4秒差で今季初勝利を挙げた。2位に小倉、3位に須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)というトップ3となった。
古川は「狙いどおりの勝利でした。最後は思ったよりも詰められてしまいましたが、作戦通りに戦うことができました。安全マージンと、ライバルとのタイム差、道の傾向など、しっかり作戦を建てられました。これまではすべて全力で走っていたんですが、『このステージは負けても仕方がない』と割り切ることができました。次の唐津も参戦を決めています。ただ、走り切れればタイトルを獲得できそうなので、しっかり走ろうと思います」と、チャンピオン獲得に向けて視界良好だ。

巧者同士の接戦となっているJN5クラスは、SS9で首位の小濱勇希/東駿吾(トヨタ・ヤリス)にトラブルが発生。制御系の問題で大きくタイムロスを喫し、ここでベストタイムをマークした大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)に対し築いていたマージンを一気に吐き出してしまった。続くSS10では天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGRスポーツ)が一番時計。首位小濱を追いかけたい大倉だったが、後半でスローパンクに見舞われて、その差を詰め切ることは叶わなかった。午後のセクション、天野はSS11、SS12を制し3連続ベストタイムをマークするが、クラス3位となった松倉拓郎/岩淵亜子(マツダ・デミオ)を捉えることはできなかった。首位小濱はSS11でクラス6番手と奮わず、大倉が1.8秒差で背後に詰め寄る。そして最終SS、2番時計の大倉が小濱をかわし、1.5秒差で今季初優勝を決めた。以下、2位に小濱、3位松倉、4位天野。トップの大倉から4位天野までは13.7秒という僅差の戦いとなった。
この勝利で天野と同点のランキング首位になった大倉は「非常に接戦で面白い展開になりましたね。最後の2SSは落ち着いて攻めることができました。最後の唐津は勝った方がチャンピオンなので、全部振り出しに戻ったつもりでいきます。好きなコースですし、ターマックは優勝がないので、しっかりテストして挑みたいです」と、最終戦への意気込みを語っている。

JN6クラスは、すでに1分近くリードを築いている明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツCVT)が4SS中3SSを制して、危なげなく優勝。3連勝を挙げて、いちはやく今シーズンのチャンピオンを確定させた。2位には水原亜利沙/竹下紀子(トヨタ・ヤリスCVT)、3位には初グラベルラリーの海老原孝敬/遠藤彰(トヨタ・アクア)が入っている。
明治は「チャンピオンを決めることができました。やっぱり、いつものタフなラリー北海道と比べると、路面が掘れないステージが多かったので、クルマへのダメージも少なかった気がします。2017年同ポイントで逃して、2018年も最終戦でマシントラブルで逃して……と残念な思いをしてきたので、2016年以来久々のチャンピオンで感慨深いです」と笑顔でラリーを振り返った。2位の水原は「2日間通してしっかり走り切れて良かったです。オトフケ・リバースに関しては課題がありましたが、2本目では周りがタイムダウンするなか、タイムアップすることができました。クルマは軽いので、何かがあっても、自分の範囲の中で修正することができました」と、ヤリスCVTへの手応えを語っている。3位の海老原は「北海道は本当に楽しかったです。初めてのグラベルも楽しめました。唐津はコーナーと下りが多いので、他のクルマとも勝負できるのではないかと思っています」とコメントした。

併催されていた国際格式部門では、前日からのリードを強固なものとした福永修/齊田美早子(三菱ランサーエボリューション)が優勝。2位には今井聡/伊勢谷巧(三菱ランサーエボリューション)。3位には小出久美子/秋間忠之(三菱ランサーエボリューションⅨ)が入っている。とはいえ福永にも危ない場面があったようだ。
「最後セルモーターにトラブルが出たんですが、無事にフィニッシュできて良かったです。交差点で押しがけするわ、燃料がかぶるわ、もうダメかと思いました。その後の坂道でエンジンがギリギリかかってくれました。とりあえず完走できて、インターで優勝できて良かったです」と、薄氷を踏む思いだったことを明かしている。

次戦は11月27日(金)〜28日(土)に開催予定の全日本ラリー選手権第3戦Sammy ツールド・九州2020 in唐津。毎年春先に開催されているターマックラリーだが、今年は再編成によって晩秋の開催となるため、タイヤの使い方などに影響が出ることも予想される。約2カ月のインターバルで勢力図に変化はあるだろうか。

ラリー北海道 正式結果
1. 新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI) 1:05:48.7
2. 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) +4.8
3. 鎌田卓麻/鈴木裕(スバルWRX STI) +15.5
4. 奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX) +50.7
5. 堀田信/河西晴雄(三菱ランサーエボリューションX) +6:22.9
6. 山本悠太/山本磨美(トヨタ86) +8:04.9

8. 中平勝也/石川恭啓(トヨタGT86 CS-R3) +9:20.9
9. 大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT) +9:37.0
13. 古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ) +10:14.2
31. 明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツCVT) +21:38.8



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