WRCフィンランドで2位フィニッシュの勝田貴元「自信につながるラリーになりました」 – RALLYPLUS.NET ラリープラス
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WRCフィンランドで2位フィニッシュの勝田貴元「自信につながるラリーになりました」

©TGR WRT / McKlein

WRC第9戦ラリーフィンランド(グラベル)を2位でフィニッシュし、第2戦スウェーデン以来となるポディウムに上がったトヨタの勝田貴元。ラリー後の月曜日に、オンラインで合同インタビューに応えた。同じ高速グラベルラリーでも、エストニアとフィンランドではかなり特性が異なり、チームが「大苦戦となった」エストニアから、短い期間で調整を重ねた努力を明かした。

フィンランドの結果については「ラリー前から、ここでいい結果を出すことが、シーズンの後半戦に向けてももちろん、来季に向けても、非常に重要な一戦だったと感じていました。その分、プレッシャーもありましたが、しっかりと結果に繋げることができたので、いろいろありましたがよかったかなと思っています」と勝田。

前戦エストニアは、パワーステージを前にリタイアを決めたが、これについては「エストニアでは、シェイクダウンが始まった時から、タイムもフィーリングも悪くはなかったのですが、データを見ると伸びてない部分があったり、変な部分があったので様子を見てもらっていて。それが土曜日に、自分が乗っていても感じてくるくらい、エンジンの調子がどんどん悪くなってきてしまって。いろいろチェックしてもらった結果、パワーステージの前にリタイアすることになりました。というのも、1年間に2基、エンジンが使えて、その2基をローテーションしていくのですが、もし1基が壊れてしまうと、もう1基だけで残りのラリーを回していかないといけない。規定上、パワーステージを走り切ってしまうと新しいエンジンが得られず、パワーステージを走らずにリタイアすれば、新しいエンジンが得られるということになっています。自分は、エストニアではマニュファクチャラー登録をして3台目として走っていましたが、1年に2基というのは、ドライバーではなくクルマに対して付属しているので、自分がエストニアでリタイアしたことによって、セブがフィンランドで乗るクルマに新しいエンジンが乗ることを選んだ状況です。なので、自分としては、エストニアでリタイアしても、特に関係はなかった状況です」と説明した。

そのエストニアは、マニュファクチャラーズ登録外のオリバー・ソルベルグがトヨタGRヤリス・ラリー1で優勝を決めたものの、ヒョンデ勢が2位、3位、5位を獲得。トヨタ勢としては苦戦を強いられた。そこからフィンランドまでの状況として勝田は「エストニアを終えて1週間ほどしか時間がないなかで、テストの段階から新しいセットアップの方向性などをいろいろ試していきました。自分は2日目にテストをしましたが、トライをしていくうえで方向性がだいぶ見つかり、最終的にはテストで使ったセットとまったく使わなかったセットと分けて。少し賭けではありましたが、それを入れるようにして、シェイクダウンからそれをトライしながら微調整していくという、そんな流れでした」

TGR WRT / McKlein

「シェイクダウンは、まったく使ったことないセットアップから始めたら、タイムこそ2番手でしたが、やっぱり乗り味が全然違って、すごくフィーリング悪くて。これでは、タイムは良くても、プッシュできないという感じだったので、その後いろいろ探りながら、3回目の走行で一番自信が持てるようなセットアップに戻して。細かい部分はさらに微調整をして一番いいフィーリングが得られたので、そこで最終的なシェイクダウンでのトップタイムが出ました」

ラリー序盤は、木曜日のSS1で6番手タイム、翌金曜日に入ってSS2はセカンドベストで首位に上がるものの、そこから5番手、7番手、そしてSS5では再び2番手タイムと浮き沈みの激しい展開となった。

「金曜日は、特に午後は雨が降ったり止んだりというコンディションが続きましたが、どちらも乗っていてフィーリングは悪くなくて。時々アンダーステアが非常に強くなってしまう傾向があったので、そういう時に無理をせず、そこでも最小限にタイムのロスを抑えることを試みながら、金曜日は総合4番手で終えました。自分としては、安定して高いスピードをキープできていたような感覚だったので、あとは、もう一歩自分の中で足りない部分、クルマの方でもちょっと欲しい部分っていうところを、土曜日の1日の流れのなかで試していきたいなという感じで、この日を終えました」

そして、セッティングの模索を続ける土曜日、ラリー全体の流れも大きく動く。
「金曜日のフィーリングを踏まえて、土曜日は簡単に言うと、クルマをもっと固めに振っていきたかったのですが、夜にかなり強い雨が降ったとウェザークルーから聞いていたので、濡れていたり泥とか出ているとグリップを得られない状況になってしまうので、あまり思い切った方向で振っていけず、むしろ少し柔らかくして行きました。ですが、その影響で土曜日の1本目がかなり乗り味が悪く、タイムもロスしてしまって。微調整していきながらタイムは上がっていきましたが、トップのカッレに10秒以内でついていきたいと思っていたのが、現実的に難しい状況になっていってしまったんです。その時に、ライバル勢のパンクもあったり、コースも岩が所々に出てきたり。ハイスピードのラリーなので、どうしても、ちょっと岩に引っかけるだけでも、大きなインパクトに繋がってしまうので、リスクマネージメントをしながら、ライバル勢が脱落して自分が2番手に上がってからも、そこを意識しながら走るような感じでした。セブやエルフィンが後ろから追ってきていましたが、あまり無理しすぎずに、あえてリスクがある部分だけペースを落として、行けるところでプッシュするという感じで、土曜日を2番手で終えました」

TGR WRT / McKlein

今年のフィランド、最終日は名門オウニンポウヤを2回走行するだけの「オウニンデイ」という、斬新なフォーマットとなったが、これは勝田にとっては後押しになったという。
「初めてのフォーマットでしたが、自分としてはありがたかったというか。かなり僅差でしたが、オウニンポウヤは23kmの超ハイスピードステージ。もちろん少しでも躊躇すれば、簡単にひっくり返ってしまいます。セブもエルフィンもチャンピオンシップを戦っている最中で、彼らのギャップも1秒ちょっとくらいだったので、少しでも躊躇したら多分やられてしまうという状況でしたが、週末を通していろいろな方向性のセットアップを試していった結果、最終的に自分でもあのクルマのベストのフィーリングを得ることができて最終日に臨みました。走り始めからのフィーリングは悪くなく、あまり無理しすぎないように、ただ最小限にロスを抑えたいという感じで1回目を走って、1.7秒差の4番手。このペースだったらいけるという手応えを得て、パワーステージに挑みました。今回は、いつものパワーステージのような限界プッシュというよりは、ある程度、安定させた上でプッシュすることを意識して走ったのですが、タイムも悪くなくて。1カ所、大きなミスしてしまってタイムロスしてしまいましたが、それ以外はうまくまとめることができて、SS2番手タイムで総合2位でフィニッシュできました」

「金曜日、土曜日と良かったり悪かったりとありましたが、クルマのフィーリングが非常にいい状態で日曜日に持ち込むことができたので、全体としてはすごくいい流れを作ることができました。自分自身も、ワールドチャンピオンと、エルフィンのような、いつでも勝てるようなドライバーたちとの戦いを、なんとか抑え切ってフィニッシュすることができて、ひとつの自信にも繋がったかなと思えるラリーになりました」



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