WRCトップカテゴリーの歴史と2017年新規定の狙い【新規定WRカー講座・第1回】 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

WRCトップカテゴリーの歴史と2017年新規定の狙い【新規定WRカー講座・第1回】

 

2017年規定のワールドラリーカー(WRカー)がステージを走り出してから、はや2戦を消化した。新型のワークスマシンはいずれも迫力のエアロパーツを纏い、380馬力という大パワーを発揮する。これまでの1.6Lターボから段違いの進化を果たしたように見えるが、レギュレーションをつぶさに検証すると、新型WRカーも従来の延長線上にあることが見えてくる。全5回の連載でお送りする特別企画「WRカー講座」。初回は、WRCトップカテゴリーの歴史を簡単におさらいしつつ、2017年新規定の狙いをあらためて確認しておきたい。

1973年から始まったWRCのトップカテゴリーは、大きく分けると下のような変遷を遂げてきた。

LANCIA

1973-1982年 グループ4
1982年まではグループ4が最上位カテゴリー。Gr.4はグランドツーリングカー、Gr.2はツーリングカーに分類される。改造範囲は両方とも同じだが、生産台数(Gr.2は連続する12カ月に1000台、Gr.4は連続する12カ月に500台。75年には連続する24カ月に500台となり、76年からは連続する24カ月に400台となった)や最低乗車定員(Gr.4は2名、Gr.2は4名)、最低重量などが異なる。そのため、ランチア・ストラトスやフィアット・アバルト131、フォード・エスコートRSなど生産台数の少ないハイパフォーマンス車がGr.4の主役となっていた。

AUDI AG

1982-1986年 グループB
ラリーのトップカテゴリーを受け継いだグループBは、82年に導入された(82年はグループ4も参加可能だった)。「年産200台の量産グランドツーリングカー」は、そのうち20台の改造競技車両、すなわちエボリューションモデルを製作することが可能となり、これがマシンのモンスター化を促すきっかけとなった。Gr.4時代、すでにアウディが持ち込んでいたターボ+4WD、そしてエンジンのリヤミッドシップ搭載が勝利の方程式に書き加えられた。500馬力、600馬力とも言われるパワーは観客を惹きつけたが、相次ぐ死傷事故により、わずか5年で廃されることとなる。

TOYOTA

1987-1996年 グループA
87年からはそれまでプライベーターのためのサブカテゴリー的位置づけだったグループAが主役に。ベース車両の生産台数は年間5000台(93年からは2500台)と飛躍的に厳しく、改造範囲も大幅に制限されたカテゴリーだ。グループBで可能だった駆動方式の変更や過給器・補器類の追加は認められていない。つまり量産車の段階でのポテンシャルが大きく影響する。そのためランチア・デルタ、トヨタ・セリカ、三菱ギャランと一連のランサーエボリューション、スバル・レガシィとインプレッサ、フォード・シエラとエスコートのような高性能4WDターボ車が誕生する要因となった。

SUBARU

1997-2010年 WRカー(2.0)
グループA時代に大きく減少したヨーロッパの自動車メーカーを呼び戻すために策定されたワールドラリーカー規定は、年間2万5000台という大量生産車をベースに、ターボ類や4WDキットの装着を可能とした。トヨタ、スバル、フォード、さらにセアトやシュコダ、プジョー、三菱、ヒュンダイ、シトロエン、スズキなど多くのメーカーが覇を競った。この時代には車両の電子制御化が進み、低重心化および重量物の中央集中化がトレンドとなったが、コストカットのため2005年を最後に一部の電子デバイスは使用禁止とされた。この時代を最後に日本車はWRCのトップカテゴリーから姿を消している。

Naoki Kobayashi

2011-2016年 WRカー(1.6)
1997年から10年以上続いた2Lターボ時代が幕を閉じ、世界的な潮流に合わせてWRカーのエンジンは1.6Lの直噴ターボへとダウンサイジング。ボディ幅はさらにワイドになったが、全長規定は従来よりも100mm短くなり、ベース車両はBセグメントが主流となった。また、コスト削減のため電子デバイスなどに様々な規制が設けられたほか、センターデフは禁止、シフトは機械式MT(のちパドルシフトは解禁)などとされた。2L時代から引き続き参戦するシトロエン、フォードのほか、BMWミニ、ヒュンダイ、フォルクスワーゲンなどが新規参入を果たした。

2017年 WRカー2017
2017年型の車両規定は、従来までのWRカーにさらなる力強さとエキサイトメントを求めて施行された。従来比+55mmの拡幅と、大型エアロパーツの装着によって外観の迫力は段違いに増している。また、エンジンのパワーアップ(320馬力から380馬力へ)とアクティブセンターデフの解禁によって運動性能も向上。ただし、過去の反省点を鑑みコストの低減と安全性の確保には最大限の配慮がなされている。2016年限りでフォルクスワーゲンが撤退を表明したため、フォード、ヒュンダイ、シトロエン、トヨタの4車種で争われている。

Naoki Kobayashi

次回は、新規定WRカーの“見えない進化”に着目する。

2017WRカー講座 インデックス
第1回 WRCトップカテゴリーの歴史と2017年新規定の狙い – このページ
第2回 新規定WRカーの見えない進化、エンジン&駆動系
第3回 2017年のWRCはグループB以来のエアロパーツ大解禁
第4回 迫力と安全性を両立するワイドボディ化
第5回 迫力の外見に隠された巧妙なコンセプト

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