新規定WRカーの見えない進化、エンジン&駆動系【新規定WRカー講座・第2回】 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

新規定WRカーの見えない進化、エンジン&駆動系【新規定WRカー講座・第2回】

 

全5回の連載でお送りする特別企画「WRカー講座」。第2回は新規定WRカーの“見えない部分の進化”について。

今年デビューした新規定のWRカーは、そのルックスの変化度から大幅な進化を遂げた印象があるが、前回紹介したWRCトップカテゴリーの変遷と比べると、実はそれほど大きなものではない。グループBからグループAへ移行した時は、それこそ革命レベルの大変革であったし、WRカー(2.0)やWRカー(1.6)の導入時には基本コンセプトを大きく転換するという目的があった。それらの例に比べれば、今年の規定は旧規定の延長線上にある変更と言えるだろう。

Naoki Kobayashi

エンジンは、これまでと同じ1.6L直噴ターボのGRE(グローバル・レース・エンジン)を使用する。リミッターが8500回転までに抑えられているのも同様だ。エネルギー回生システムの導入については検討こそされたものの、最終的に採用は見送られている。

吸気リストリクター径は33mmから36mmへと拡大され、エンジンの最高出力は従来の320馬力から380馬力程度にまで向上した。このパワーアップはリストリクター径の緩和のみで達成されている。つまり規定上は新しいエンジンの開発が必ずしも必要ではないということだが、各チームとも内部抵抗の低減やパッケージングの改良、レスポンスの向上などに余念がない。シトロエンにいたってはボア×ストロークの変更も行っている。

2017 WRカー エンジンスペック比較

 トヨタ・ヤリスWRCフォード・
フィエスタWRC
ヒュンダイi20
クーペ WRC
シトロエンC3 WRC
型式直列4気筒DOHC
+直噴ターボ
搭載方法横置き
ボア×ストローク83.8mm × 72.5mm83.0mm × 73.9mm(未発表)84.0mm × 72.0mm
排気量1600cc
最高出力380PS以上380bhp380bhp/6500rpm380bhp/6000rpm
最大トルク425Nm以上450Nm450Nm/5500rpm400Nm/4500rpm

駆動系では、アクティブセンターデフの装着が許可された。さらに、最低重量もこれまでよりマイナス10kgの軽量化(スペアタイヤ1本込みで1190kg。クルー込みで1350kg)が許される。これらの“見えない進化”によって、マシンのパフォーマンスは向上し、これまでより俊敏なマシンの動きを見ることができるようになっている。

その狙いについて、FIAテクニカル・ディレクターのベルナール・ニクロは「ラリーをより見応えのあるものにしなくてはならない」と語る。
「センターデフのみを電子制御することによって、従来のWRカーのアンダーステア気味である特徴を修正できると考えている。2017年度のWRカーはより『キビキビ』し、より『反応が良い』ものに仕上がるはずで、そのためにドライビングがより楽しくなるだろう。さらに観戦する方もより楽しいはずだ」

Naoki Kobayashi

ティエリー・ヌービルは新しいWRカーをドライビングすることについて次のように語っている。
「正確に言い表せる言葉は、エキサイトメント。自分にとって“新しい体験”とも言える。このマシンを見れば誰もが感動するし、スピードも高まっている。ドライバビリティの点では、センターデフが復活したので、ドライビングスタイルを少し合わせなくてはならないかもしれない。あとは、脳みそを速さに慣らすことだね」

次回は、迫力のエアロパーツを写真とともにチェックしていこう。

2017WRカー講座 インデックス
第1回 WRCトップカテゴリーの歴史と2017年新規定の狙い
第2回 新規定WRカーの見えない進化、エンジン&駆動系 – このページ
第3回 2017年のWRCはグループB以来のエアロパーツ大解禁
第4回 迫力と安全性を両立するワイドボディ化
第5回 迫力の外見に隠された巧妙なコンセプト

Red Bull TV
RALLY PLUS