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2025年シーズンWRC第8戦ラリーエストニア(グラベル)は、7月20日(日)に最終日の3SSを走行し、ラリーをリードし続けてきたトヨタのオリバー・ソルベルグが初の優勝を飾った。23歳でのWRC総合優勝は史上3番目の若さとなる。25.2秒差の2位にオィット・タナック(ヒョンデ)、48.3秒差の3位にティエリー・ヌービル(ヒョンデ)が続く結果となった。勝田貴元はエンジンのトラブルに見舞われて最終SSを前にリタイアを余儀なくされている。
この日は、サービスパーク南東側のエリアが舞台。オープニングのSS18「Hellenurme(11.79km)」を走行後、「Kääriku(24.20km)」をSS19/20として2度走行する。このSS20が最終パワーステージとされ、3SSの合計距離はわずかに60.19kmだ。注目はSS2以降ラリーをリードし続けているソルベルグと、それを追うヒョンデ2台のバトル。前日終了時点で首位ソルベルグと2番手タナックの差は21.1秒、3番手ヌービルとの差は25.1秒となっている。その他のドライバーも、スーパーサンデーを狙うか、パワーステージを獲りにいくか、順位キープ最優先とするかで戦略も分かれそうだ。ラリー1勢は全車ソフトタイヤ5本積みでステージへと向かっていく。
留まるところを知らない勢いを見せてオープニングのSS18を制したのはソルベルグ。弱い雨が落ちるステージでSS2番手のタナックに1.6秒、SS3番手タイムのカッレ・ロバンペラに3.4秒差をつけて、攻めの姿勢を崩さないことを示した。このSSではヌービルがジャンプスタートで10秒のペナルティを科されている。これで総合2番手タナックと総合3番手ヌービルの差は、4秒から18.6秒へと大きく拡大することとなった。
続くSS19はパワーステージとしても使用するSS。こちらでも弱い雨は続き、路面は徐々に湿り気を帯びつつある状態だ。ここでも、主導権を握っていたのはソルベルグ。SS2番手タイムのロバンペラに3.1秒差をつける好ペースで、最終SSを前にリードをがっちりと固めていく。このSSでは右リヤセクションをバンクにヒットし総合7番手だったエバンスがひとつ順位を上げて勝田をかわし、総合6番手に浮上している。パワーステージを前にして、総合首位ソルベルグと2番手タナックの差は26.3秒。日曜日のみのタイムでも、ソルベルグがタナックに対し5.2秒差でリードしている。また、SS18終了時点にエンジンの不調を訴えていた勝田は、パワーステージを前にリタイアを決断、完走は叶わなかった。
迎えたパワーステージ、SS20。ステージには日が差し、ステージのコンディションは回復しつつある。WRC2の上位勢に続いて、ラリー1勢はMスポーツ・フォードのグレゴワール・ミュンステールからコースイン。ミュンステールは11分34秒2の暫定ベストタイムをマークし、このタイムを後続のマルティンス・セスクス(Mスポーツ・フォード)、トヨタのサミ・パヤリ、そしてエルフィン・エバンスが上書きするかたちでステージは進み、4番手のロバンペラがさらにタイムを更新する。そしてトップ3のヌービルはSS2番手タイムでフィニッシュ、3位以上を手中に収めた。続くタナックはヌービルのタイムを上まわり、これで2位以上を確定させて最終走者のソルベルグを待つ。
そして上位陣最終走者のソルベルグは、ベストタイムのロバンペラから2.5秒差のSS3番手でフィニッシュ。フィニッシュラインを越えた瞬間、コ・ドライバーのエリオット・エドモンドソンと固い握手をかわし、自身初のWRC総合優勝を噛みしめた。ストップコントロールには両親のペターとパニラが祝福に訪れ、ヤリス・ラリー1のルーフに駆け上がったソルベルグは、拳を天に突き上げ、エドモンドソンと抱き合って喜びを表した。
最終SS終了時点での暫定総合順位は、ソルベルグ、タナック、ヌービル、ロバンペラ、フルモー、エバンス、パヤリというオーダー。パワーステージはロバンペラ、タナック、ソルベルグ、ヌービル、エバンスがそれぞれ5〜1点のボーナスポイントを得た。スーパーサンデーはソルベルグ、ロバンペラ、タナック、エバンス、ヌービルという順になっている。この結果、ドライバーズポイントはウイナーのソルベルグが33点(25点+5点+3点)をマーク。2位のタナックが24点(17点+3点+4点)、3位のヌービルが18点(15点+1点+2点)、4位のロバンペラは21点(12点+4点+5点)を獲得した。ドライバーズランキングは首位が入れ替わり、タナックが162点で総合トップに立った。161点の2番手にエバンス、141点の3番手にオジエ、138点の4番手にロバンペラがつけている。マニュファクチャラーズポイントはトヨタが399点、ヒョンデが347点、Mスポーツ・フォードが111点、TGR-WRT2が68点となった。
次戦の舞台はラリー大国フィンランド。7月31日〜8月3日にかけて、中部の街ユバスキラを拠点として“森と湖の国”を駆け抜けるハイスピードグラベルラリーだ。TGR-WRTにとっては地元ラリーであるほか、勝田貴元にとっても地元と言えるラリーのひとつ。昨年はトヨタのセバスチャン・オジエが勝利を挙げている。
WRCエストニア 暫定結果
1. O.ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2:36:35.1
2. O.タナック(ヒョンデi20Nラリー1) +25.2
3. T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1) +48.3
4. K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +55.6
5. A.フルモー(ヒョンデi20Nラリー1) +1:33.0
6. E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) +1:43.4
7. S.パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +2:55.6
8. M.セスクス(フォード・プーマ・ラリー1) +3:36.0
9. J.マカリアン(フォード・プーマ・ラリー1) +5:29.8
10. G.ミュンステール(フォード・プーマ・ラリー1) +5:57.5