全日本ラリーカムイ:波乱の展開を凌ぎ切った勝田範彦が今季初優勝 – ページ 2 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本ラリーカムイ:波乱の展開を凌ぎ切った勝田範彦が今季初優勝

©Hiroaki Ibuki / JN-1クラス首位を走る勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリスJP4-ラリー2)

■レグ2
7月9日(日曜日)に行われたラリー2日目は、「NEW SUN-RISE(3.63km)」、今大会最長の距離を走る「ORCHID SHORT(12.35km)」、「KNOLL(7.56km)」をサービスを挟んでリピートする6SS、47.08km。前日に続き、コンディションはドライ。クルーは15分のモーニングサービスをこなし、SS7のスタートへと向かった。

ラリー初日を終えて、クラス2番手につける福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)に1分以上のアドバンテージを握った勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリスJP4-ラリー2)は、最終日もペースを緩めることなく順調に走行を続ける。前日の最終サービスでダンパーにオイル漏れの症状が発覚したことから、GRヤリスJP4-ラリー2の足まわりをすべて交換した勝田は「少しバランスが崩れてしまった」と、違和感を指摘しながらも、SS7からSS9まで3連続ベストをたたき出す。これで福永との差は1分37秒2にまで広がった。

JN-1クラス優勝の勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリスJP4-ラリー2) / Naoki Kobayashi


ニセコアンヌプリ国際スキー場の駐車場に置かれたサービスを挟んだ、午後のセクション。最初の走行で深く轍が刻まれ、さらに日陰にはウエットが残る難しいコンディションに、各クラスでコースオフが多発するなか、勝田はSS10からSS12まで3連続ベスト刻む。終わってみれば、この日行われた全SSを制して、今シーズン初勝利。加えて、GRヤリスJP4-ラリー2での初優勝を手にした。

5分27秒1差の3位に今井が入り、全日本ラリー選手権トップカテゴリーでの初表彰台を獲得。今シーズンから投入したGRカローラで初のグラベルに挑んだ松岡孝典/坂口慎一は、6分2秒2差の4位で走り切っている。

JN-1クラスの表彰式 / Naoki Kobayashi


待望のシーズン初勝利を持ち帰った勝田は「ラリー前のテストで転倒してしまいましたが、メカニックの頑張りで、無事にスタートすることができました。ヘイキ(コバライネン)選手がSS1でトラブルから脱落してしまい、タイム差を比べられなかったのは残念ですが、それでもチームや応援してくださるファンの皆さんに、この結果を持ち帰れたことをうれしく思います」と、チームへの感謝を語った。1分42秒5差の2位に終わった福永は「今日の午後は、セットアップを変えたことで奴田原選手にはすべて勝つことができました。次のラリー北海道に向けて、良いフィードバックを得られたと思います。残念なのは初日のSS2でのバーストです。5kmくらいをパンクしたまま走行したことで、40秒くらいロスしてしまいました」と、悔しさをのぞかせた。

JN-2クラス優勝の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) / Jun Uruno


JN-2クラスは奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、危なげなくシーズン4勝目。トータルタイムでも勝田に次ぐ2位に入るスピードを披露した。眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス MT)はSS7でコースオフを喫しながらも、クラス2位。こちらもトータルで4位相当のタイムをマークしている。長江修平/中岡和好(三菱ランサーエボリューションⅩ)、川名賢/前川冨哉(トヨタGRヤリス)、三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)による3位争いは、川名が駆動系のトラブルで後退。三枝を5.7秒差で凌ぎ切った長江が、うれしいシーズン初表彰台を獲得している。

シーズン4勝目を決めた奴田原は「路面コンディションも良く、楽しく走れました。クルマに関してはいくつかグラベルでの課題も見つかって、まだやりたいことが出てきました。ラリー北海道に向けて、現状は悪くないです」と、コメント。久々のMTでもしっかり2位を持ち帰った眞貝は「最終日の最初のSSでコースオフし、冷却系を傷めてしまいました。クルマは何とか持ち堪えてくれましたし、サービスではチームがしっかりと直してくれて、問題なく最終セクションを走ることができました。2位という結果だけでなく、内容の部分で学びが多く、成果と課題の両方を見つけられたラリーでした」と、成果を語った。今シーズンは今回が最後の全日本参戦になるという長江は「最初のループよりも、2回目の走行は少しでも速く走ろうと頑張りました。カムイを走って、あらためてもっと運転が上手くなりたいと思いました。それでも満喫できましたし、楽しかったです」と、笑顔を見せている。

JN-3クラス優勝の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) / Jun Uruno


JN-3クラスは初日トップの山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、最終日の全ステージをベストタイムで並べ、シーズン4勝目を飾った。一方、終盤まで2番手をキープしていた曽根崇仁/石田一輝(トヨタGR86)は、最終のSS12でまさかのコースオフ。3番手を走行していた加納武彦/横手聡志(スバルBRZ)が2位表彰台を獲得した。SS11で山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)をかわした上原淳/漆戸あゆみ(トヨタ86)が3位を得ている。

選手権のライバルだった曽根がノーポイントに終わったことで、2戦を残して山本の王座が確定。「比較的路面もきれいでしたし、楽しいラリーを戦えました。最後のループは思ったよりも路面が掘れていて、アジャストするのが簡単ではありませんでした。その中で、すべてのステージでベストを記録できたのは良かったですね。競っている時の方が走りやすいので、気を抜かないで走るのが難しかったです」と、山本は成果を語った。予想外の2位を得た加納は「新城でエンジンが壊れた段階で、ターマックは諦めてグラベルに賭けていました。人より先にグラベルに慣れようと、4~5回は練習しています。丹後の後、多くの人がグラベルステージに適応するのが難しかったでしょうし、少しだけアドバンテージがあった気がします(笑)。ラリー北海道は、この旧型で最後に勝ちたいですね」と、次戦ラリー北海道での勝利を目標に掲げている。

JN-4クラス優勝の香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプRユーロ) / Hiroaki Ibuki


JN-4クラスは、初日首位の香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)を、2番手で追っていた東隆弥/中谷篤(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS9でコースオフ。このステージでは、現在ポイントリーダーで5番手につけていた西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)も戦列を去っている。この日3度のベストタイムをマークした香川は、その後のステージも危なげなく走り切り、うれしいシーズン初勝利を飾った。須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)とのバトルを制した内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、2位表彰台を得ている。

スズキ・スイフトスポーツの連勝利記録をストップさせた香川は「本当に勝てて良かったです。ずっと東選手や内藤選手に追われていたので、最後まで必死でした。どこかでひとつミスしてしまったら、抜かれてしまいますから……。勝った自分が言うのはなんですが、すごく楽しかったです」と、笑顔で振り返った。2位に入り、タイトルの可能性を残した内藤は「スタート時点で完走できれば良いと思っていましたが、ベストタイムも獲得できましたし、この順位なので、良い出来だったと思います」と、コメント。最後は内藤に突き放されてしまった須藤は「今回は良いところなしでした。セットアップを進化させてきたのですが、良いところ、悪いところが色々と出てしまって……。最後まで解決できずにラリーが終わった感じで、不完全燃焼です」と、悔しさをのぞかせている。

JN-5クラス優勝の松倉拓郎/尼子祥一(マツダ・デミオ) / Naoki Kobayashi


JN-5クラスは、初日首位の松倉拓郎/尼子祥一(マツダ・デミオ)が、前日とは打って変わってポジションキープの走りに徹し、待望のシーズン初勝利を手にした。18.8秒差の2位に大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)、1分32秒2差の3位には、吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)が入った。

今シーズン、勝利のチャンスがありながら、なかなか実を結べなかった松倉は「今日は勝ちに行くべく、セーフティに走りました。初日のリードをうまく使いながら、デイポイントも獲れるように走りました。いつも大倉選手にターマックでやられていることを、グラベルでやり返した感じですね(笑)」と喜びを語った。2位に終わった大倉は「今回は特に低速セクションで松倉選手との差を感じました。それでもグラベルで、昨年よりはしっかりと走れている実感は得られました。ラリー北海道までにテストをして、もう少し戦えるようになりたいです」と、次戦での挽回を誓う。シーズンを通して厳しいラリーが続いてきた吉原は「やっと完走です。今回も自分で壊したりもありましたが、メカニックの皆さんに直してもらって、無事に走り切ることができました」と、安堵の表情を見せた。

JN-6クラス優勝の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ) / Hiroaki Ibuki


JN-6クラスは、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、最終日も全SSでベストタイムを記録し、破竹の開幕6連勝。2戦を残して、早くも全日本選手権チャンピオンを確定させた。天野にとっては10年連続16回目、井上にとっては14年連続16回目の獲得となる。2位には初グラベルで自身のペースを守って走った福島賢大郞/原田晃一(トヨタ・アクア)。最終ステージでチームメイトの中西昌人/山村浩三(ホンダCR-Z)を逆転した鷲尾俊一/鈴木隆司(ホンダCR-Z)が、3位表彰台を得ている。

新たなクラスにニューマシンで挑戦したシーズンも、ライバルを突き放す圧倒的な強さを見せつけた天野。2戦を残してのタイトル確定にも「このアクアは、まだ速くなる要素があると思っています。クラス内の勝負でしっかり優位性を見せながら、JN-5をターゲットにしていきたいです」と、さらに上の目標を語った。ほとんど経験のなかったグラベルラリーで表彰台に上がった福島は「クラス2位を獲得できて、本当に良かったです。最後は、抑えて走ろうとしたら轍から外れたり、しっちゃかめっちゃかになってしまって……(笑)。鷲尾選手も追い上げてきましたし、ギリギリのところでした」と、笑顔で振り返っている。

JRCカムイ 最終結果
1 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリスJP4-ラリー2) 1:06:33.3
2 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +57.8
3 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +1:42.5
4 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス) +3:12.6
5 長江修平/中岡和好(三菱ランサーエボリューションX) +4:56.2
6 三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI) +5:01.9
7 関根正人/松川萌子(トヨタGRヤリス) +5:21.6
8 川名賢/前川冨哉(トヨタGRヤリス) +5:23.4
9 今井聡/高橋芙悠(シトロエンC3 R5) +5:27.1
10 松岡孝典/坂口慎一(トヨタGRカローラ) +6:02.2


15 山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) +8:19.1
16 松倉拓郎/尼子祥一(マツダ・デミオ) +8:40.4
17 香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプR ユーロ) +8:41.5
31 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) +13:31.1

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