全日本ラリーカムイ:波乱の展開を凌ぎ切った勝田範彦が今季初優勝 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本ラリーカムイ:波乱の展開を凌ぎ切った勝田範彦が今季初優勝

©Hiroaki Ibuki / JN-1クラス首位を走る勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリスJP4-ラリー2)

2023年シーズン全日本ラリー選手権第6戦「2023 ARK ラリー・カムイ」が、7月7日(金)~9日(日)にかけて北海道虻田郡ニセコ町を拠点に開催され、JN-1クラスはトヨタGRヤリスJP4-ラリー2をドライブした勝田範彦/木村裕介がシーズン初勝利を飾った。2位にはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子、3位にシトロエンC3 R5の今井聡/高橋芙悠が入っている。

第2戦新城から続いてきたターマック4連戦を終え、全日本ラリー選手権は第6戦カムイで今季初のグラベルイベントを迎えた。カムイのグラベルステージは、スムーズな路面に、高速、中速、低速コーナーがバランス良く組み合わせられており、「走っていて楽しい」とドライバーからの人気も高い。ただ1回目の走行ではライン上の砂利、2回目の走行では深く刻まれた轍と、コンディションの変化には注意が必要となる。

前戦のラリー丹後に続き「SUBARU RALLY CHALLENGE」は、新井敏弘と鎌田卓麻の欠場を決定。また、今シーズンから眞貝知志/安藤裕一がJN-1クラスでドライブするDAT仕様のトヨタGRヤリスは、開発期間を確保するため投入が見送られ、眞貝は昨年まで使用してきたMT車両でJN-2クラスにエントリーしている。

■レグ1
7月8日(土曜日)に行われたラリー初日は「STREAM(10.35km)」、「SCHUNK REVERSE(6.74km)」、「MAGNOLIA REVERSE (5.28km)」の3SSをニセコアンヌプリ国際スキー場でのサービスを挟んでループする6SS、44.74km。ラリー前日までに降雨のあったセクションも存在するが、初日スタート当日は晴れとなり、路面は適度に湿り気を含んだ絶好のコンディションとなった。

スタートするヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) / Naoki Kobayashi


午前9時に行われたニセコアンヌプリ国際スキー場でのセレモニアルスタートに続き、クルーは初日最長の10.35kmを走るSS1へと向かう。このオープニングステージで、予想外のドラマが待っていた。ここまでターマック4連勝と圧倒的な強さを見せてきたヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)が、フィニッシュ手前1.5km地点の右コーナーでコースオフを喫したのだ。

シーズン初グラベルで、SS1を走り切ることができなかったコバライネンは「本当に奇妙なアクシデントだった。何が起こったのか、僕自身も分からなかった。フィニッシュまであと少しのポイントでコースオフしてしまった。兆候はまったくなく、それまでのフィーリングは良かった。でも、これもラリーだよ」と、残念そうな表情を見せた。サービスに戻ってきたコバライネンのファビアR5は、左フロントのロワアームの破損が判明。チームは再出走はせず、このラリーをリタイアすることを決めた。

SS1でベストタイムをマークしたのは、グラベルに向けて入念なテストをこなして挑んだ勝田。最大のライバルであるコバライネンの不在もあり、勝田は午前中に行われた3SS すべてでベストタイムを記録する。クラス2番手につける福永はSS2で右フロントタイヤをバーストし、さらにコバライネンの脱落により先頭スタートを強いられてペースも上げられず、午前中だけで勝田に51.9秒もの大差をつけられてしまった。

JN-1クラス首位の勝田範彦 / Naoki Kobayashi


サービスを挟んだ午後のセクションも勝田はアクセルを緩めることなく、SS4とSS5で連続ベスト。SS6はJN-2クラスの奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)にベストタイムを譲ったものの、クラス2番手につける福永との差を1分3秒1に拡大して、初日を終えた。2分53秒9差のクラス3番手はトヨタGRカローラをドライブする松岡孝典/坂口 慎一。2分56秒2差のクラス4番手には今井聡/高橋芙悠(シトロエンC3 R5)が続いている。

「ヘイキ(コバライネン)さんがいないからといって、万事OKという感じではありません。見えない敵と戦う必要はないけれど、昨年の彼のタイムと比較すると、まだ少し負けている箇所もあります。2ループ目は勝てたステージもありましたが、奴田原(文雄)選手のタイムを見ても、さらに削る必要がありそうです。WRCを走るドライバーと比較すると、セッティングや僕自身のドライビングなど、まだやるべきことが多いです」と、余裕の首位にも勝田は課題を語った。一方、コバライネン脱落という千載一遇のチャンスで勝田の先行を許してしまった福永は、最終SSのスタートでエンスト。「最後のSSではちょっとしたトラブルがあり、僕がクラッチペダルを滑らせてしまって、ローンチコントロールが使えずにエンストしました。もったいないことをしてしまいました。明日はたぶん問題ないはずです」と、肩を落とした。

JN-2クラス首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) / Jun Uruno


JN-2クラスは奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、すべてのステージでベストを揃えて、クラス首位を快走。この日の最後を締めくるSS6では総合ベストタイムもマークし、総合トップの勝田から22.4秒差の総合2番手につけた。38.6秒差の2番手は、久々にMT仕様をドライブする眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス)。1分47秒6差の3番手には三菱ランサーエボリューションⅩを持ち込んだ長江修平/中岡和好、2分6秒9差の4番手には2007年以来の4WDターボでの参戦となった川名賢/前川冨哉(トヨタGRヤリス)がつけている。

圧倒的なスピードで後続に大差をつけた奴田原は「大きなミスもなく、順調に走れました。クルマはダンパーをもう少し乗りやすく変えたいですね。2日目も今日のようにミスなく走りたいです。総合順位に関しては、JN-1クラスとJN-2クラスの差は、日本のナンバー取得の差だけですから……」と、冷静にコメント。総合でも3番手に相当するタイムで初日を走り切った眞貝は「大きなミスもなく走れました。去年と同じクルマですが、よく動いてくれましたね。セクション1は思ったよりもタイムが出ましたが、午後になって轍が深くなってくると、奴田原選手にドンと離されてしまいます。そこはドライバーの差を感じました」と、自身の課題を指摘する。GRヤリス勢にランサーで割って入った長江は「自分の運転技術ではこれ以上無理なレベルで攻めました。ランサーはかなり重たいので、これが限界です(笑)。僕はプライベーターなので、無理せず完走を目指します」と、快活に語る。

JN-3クラス首位の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) / Jun Uruno


JN-3クラスは、ポイントリーダーの山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、この日最長の10.35kmを走るSS1でトップに立つと、サービスを挟んだ午後のセクションは3連続ベストをマーク。2番手の曽根崇仁/石田一輝(トヨタGR86)に17. 2秒差をつけて初日を折り返した。30.9秒差の3番手は2.0リッターエンジンの旧型スバルBRZで参戦する加納武彦/横手聡志、36.2秒差の4番手には山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)が続く。グラベルを得意とする上原淳/漆戸あゆみ(トヨタ86)は、ABSを切らないままの参戦となり、5番手と大きく出遅れてしまった。

盤石の展開で首位を快走した山本は「1ループ目と2ループ目で路面に変化があって、それなりに難しかった印象です。最初は砂利が多くてコントロールするのが難しかったのですが、2ループ目はダートラ場か? と言うくらい路面が固くて、轍もできていました。ある程度アドバンテージを得ましたが、明日はまた新しい道を走るので、気を抜かず頑張ります」と、慎重に語る。2番手の曽根は「山本選手と20秒以下の差なので、ほぼ予定どおりです。いい感じで走れているので、このままの位置をキープしていきたいです」と、笑顔を見せた。

JN-4クラス首位の香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプRユーロ) / Jun Uruno


今シーズン、スズキ・スイフトスポーツ勢が全戦を制しているJN-4クラスは、ホンダ・シビック・タイプRを持ち込んだ小倉雅俊/田中直哉がSS1でトップに立つ。ところが、続くSS2で小倉が高速セクションでスピンを喫して、マシンにダメージを負ってストップ。これで、SS2でベストを刻んだ香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が首位に浮上する。SS3とSS6は東隆弥/中谷篤(スズキ・スイフトスポーツ)、SS4は西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)、SS5は内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)がそれぞれベスト記録するが、安定したペースで走り続けた香川がトップをキープ。4.7秒差の2番手に東、14.4秒差の3番手に須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)、15.9秒差の4番手に内藤が続いた。

ベストは1回のみだったもののリードを死守した香川は「首位に立っていますが、あちこちで負けてしまって、最後は東選手にがっつり負けてしまいました(笑)。かなりの接戦ですが、明日はやれるだけやってみます」と、苦笑い。2度のベストをマークした東は「路面がかなり乾いてきて、午後はだいぶタイムアップできました。JN-4クラスはベストを獲り合う展開になって、なかなか胃が痛いです。明日は新しい道になるので、無理せずにこのペースで走りたいです」と、平常心を誓う。ベストはなかったものの、内藤を上回り3番手につけた須藤は「色々とやっていますが、ベストタイムを獲得できないんですよね。良い箇所がなぜ良いのか、悪い箇所が悪い理由も分からない状態です。まだ諦めてはいないのですが……」と、首をひねる。

JN-5クラス首位の松倉拓郎/尼子祥一(マツダ・デミオ) / Jun Uruno


JN-5クラスは、松倉拓郎/尼子祥一(マツダ・デミオ)が5度のベストタイムをマークし、選手権リーダーの大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)に16.2秒差をつけて初日首位に立った。首位から46.8秒差の3番手には2年ぶりのグラベルラリー参戦となった吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)がつけた。

今シーズン、ここまで勝利のない松倉は「大倉選手にタイム差をつけることができましたね。ただ、フロントのアンダーステアに苦しめられて、SS5ではコースオフしかけてしまいした。とにかく無事に戻ってこられて良かったです。明日はしっかりと走り切ることを目標に頑張ります」と、笑顔で振り返った。大倉は「松倉選手が速すぎて。これ以上プッシュできないというところまで攻めてます。道もすごく荒れていて、しっかりケアしないと、クルマを壊してしまいそうです。何度も運に助けられるような状況でした」と、松倉のスピードに驚きを隠さない。

JN-6クラス首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ) / Hiroaki Ibuki


JN-6クラスは、開幕5連勝中の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ)が、全SSベストタイムを叩き出し、2番手の福島賢大郞/原田晃一(トヨタ・アクア)に2分以上の大差をつけて初日トップ。3番手に中西昌人/山村浩三、4番手に鷲尾俊一/鈴木隆司と、ホンダCR-Zをドライブするチームメイトのふたりが続いている。

盤石の展開でラリーをリードする天野は「午前中のセクションは燃費計算にミスがあり、燃料的にかなり厳しい走りを強いられました。グラベルとターマックでは燃料消費の違いが大きいようで、苦労させられました。タイム差はだいぶあるので、明日もこのままのペースをキープしたいです」と、余裕のコメント。今回が初グラベルラリーとなった福島は「グラベルでの走りを勉強しながら走っています。中西選手、鷲尾選手と3台で2番手を争っているので、すごく楽しいです。SS3でグラベルの走り方をつかんで、SS4とSS5で実践したら、良いタイムが出せました」と、笑顔で振り返っている。

JRCカムイ レグ1結果
1 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリスJP4-ラリー2) 33:01.5
2 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +22.4
3 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス) +1:01.0
4 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo) +1:03.1
5 長江修平/中岡和好(三菱ランサーエボリューションX) +2:10.0
6 川名賢/前川冨哉(トヨタGRヤリス) +2:29.3
7 三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI) +2:35.8
8 関根正人/松川萌子(トヨタGRヤリス) +2:41.2
9 松岡孝典/坂口慎一(トヨタGRカローラ) +2:53.9
10 山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス) +2:55.9


17 松倉拓郎/尼子祥一(マツダ・デミオ) +3:59.7
18 山本悠太/立久井和子(トヨタGR86) +4:15.3
20 香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプR ユーロ) +4:19.2
40 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクアGRスポーツ) +6:39.1

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