三菱の増岡浩総監督「クルマは想像以上の完成度。最高の結果を求めていきたい」 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

三菱の増岡浩総監督「クルマは想像以上の完成度。最高の結果を求めていきたい」

©Naoki Kobayashi

三菱自動車は6月30日に、今年のアジアクロスカントリーラリー2023(AXCR、8月13〜19日)の参戦体制を発表した。車両は来月発表される新型トライトンで、ドライバーには日本から田口勝彦/保井隆宏というクルーを加えての3台体制での参戦となる。先日、タイでテストを終えた『チーム三菱ラリーアート』を率いる増岡浩総監督に話を聞いた。

Naoki Kobayashi


──昨年に続き2度目のアジアクロスカントリーラリー(AXCR)参戦です。
前回、久々に『チーム三菱ラリーアート』の復帰戦で優勝を飾ることができました。今は2年目の大会に向けてしっかり準備をしていますが、もうあと1カ月半です。前回の大会は11月だったので、間が1年もないんですよね(笑)。短い期間でスタッフが頑張ってくれています。

──今回はドライバーに田口勝彦選手が加わりました。
やはり日本人ドライバーにも活躍してもらいたいので、田口選手に加わってもらいました。彼も久しぶりのラリー復帰ということで期待していますし、いい意味でチームのドライバーが切磋琢磨して、最終的に上位の結果を残すことができればと思っています。いい布陣だと思います。

──田口選手はクロスカントリーラリーの参戦は初めてとのことですね。
彼は、アジア・パシフィックラリー選手権で長く走っていてチャンピオンになったり、経験が豊富です。特に、このAXCRはハイスピードがあったり、マディだったり、南国特有の気象条件や路面コンディションがあります。彼はそうした状況にも対応できるベテランですから。そこに期待して、今回乗ってもらうことになりました。

──チーム運営などは昨年同様、タイのタントスポーツが担当する体制とのことですが。
昨年勝利を挙げたことで、アマチュア的なチームからプロフェッショナルチームのようになりました。スタッフの統率感が取れていて、個人の作業分担もキッチリ分けられているので、見ていて本当に安心できます。モチベーションもすごく上がっていますし、連勝にかける意気込みを、ひとりひとりから感じられます。メカニック、エンジニア、ドライバー、ナビゲーターがワンチームとして機能することは、本番では非常に重要ですから。こうしてチームの成長を見られたというのは、監督の立場としては頼もしいですね。また、チームにはナビゲーターが3人いるので、全員が協力して情報共有してほしいと伝えてあります。やっぱりナビゲーターは色々な情報を持っているものですから。我々は去年もチームワークで難局を切り抜けてきたので、情報共有して翌日のステージに備えることができれば、ミスも減ると思います。

──各ドライバーの印象を聞かせてください。
チャヤポン(ヨーター)選手は、コーナーの進入が非常に丁寧で、綺麗に入ってくる。コーナー出口の走らせ方についてアドバイスはしました。昨年、彼を選んだのは僕なのですが、元々サーキットドライバーでポルシェカップなどでも上位に入る選手です。ハイパワーのクルマを速く走らせるには、操作が丁寧でないといけませんから。
リファット(サンガー)選手は、昨年はパンクという不運もありましたが、今年は前回の失敗も踏まえて、しっかりやってくれるでしょう。今回のテストで彼自身もひとつ殻を破れたかなと思います。ドライバーって、『自分はこの路面ではここまでだ』と限界を決めてしまうことがある。でも、その先っていうのが、まだあるんです。大きなトライではあるけど、そうやってどんどん速くなっていきますから。
田口選手はもう、期待どおり。やっぱり、一番実戦に則したスピードと大胆さと繊細さを合わせ持っている印象です。ハンドリングに対する感覚などは、すごくいいですね。これまでディーゼルエンジンはあまり乗ったことがないと思うので、その特性に合わせてエンジンやギヤを使ってもらえれば、さらにペースアップできるはずです。

Naoki Kobayashi


──今回は新型トライトンでの参戦となりますね。
発表・発売とラリーが非常に近いということで、部品の入手など色々と大変ななか、特に岡崎側も頑張ってくれて、スタッフ一丸となってなんとかここまでこぎつけることができました。クルマはとても満足のいく仕上がりになりつつありますね。大きな目標である2連勝に向かって、一歩、前へ進めたかな。

──テストコースはかなりラフでしたが、感触はいかがですか。
かなり悪い条件ですよね。そこでクルマを鍛えて鍛えて、そこで耐えるものにしていかなければなりません。本番よりキツいようなコースを走ってもまったくノートラブルで、セッティングに集中できた点は良かったし、クルマの耐久性も確認できました。想像以上の完成度の高さを感じましたし、この結果には、チーム全員が自信を持てたと思います。

──監督自身もステアリングを握ったり、助手席からアドバイスをしていましたね。
国内での耐久試験から始まって、今回のテストでも少しステアリングを握ってきました。もちろんクルマのポテンシャルも上がっているし、旋回性、安定性はものすごく高くなっている。選手としては、自信をもって踏んでいけるクルマだと思います。我々の仕事は、とにかくトラブルを出さないこと。選手が120%の力を発揮でき、それに耐えるだけのクルマの性能と、メンテナンス体制をしっかり整えることです。とにかく気持ち良く走ってもらいたい。信頼性は非常に高いので、安心して選手たちを送り出せるかなと思います。

──本戦に向けての意気込みをお願いします。
昨年は、レグ1で大勝ちして、ずっとそれを最後まで保って走り切れました。今年はそうはいかないと思っています。いすゞさん、トヨタさんなどライバルも、当然リベンジに燃えてくると思うので。そこは我々も落ち着いて臨み、最後に結果がついてくればと思っています。我々はディフェンディングチャンピオンなので、やはりチームの大きな目標として優勝を目指します。3人のドライバーには平等にチャンスを与えていますから、3人とも日頃の力を100%発揮してもらいたいですね。やはりミスがない選手が一番最後まで残る。その点は全員肝に銘じてもらって、最高の結果を求めていきたいと思います。

Naoki Kobayashi



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