全日本ラリー嬬恋:スバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一が2020年以来の勝利 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本ラリー嬬恋:スバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一が2020年以来の勝利

©Jun Uruno / JN-1クラス首位の鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)

2023年全日本ラリー選手権第1戦「Rally of Tsumagoi 2023」が、2月4(土)~5日(日)に開催され、スバルWRX STIをドライブした鎌田卓麻/松本優一がJN-1クラスで勝利した。2位にはシュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美早子、3位にスバルWRX STIの新井敏弘/小藤桂一が入っている。

2019年を最後に全日本ラリー選手権開催から離れていたスノーイベントが、4年ぶりの開催を実現。代わりに同じ群馬を拠点とするモントレーがカレンダーから外れることになった。また、首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることを受けて、主催者は来場者の安全を確保すべく無観客開催を決定している。

ラリーは嬬恋村役場の嬬恋会館駐車場に設置されたサービスパークを拠点に、当初は初日に7SS、2日目に4SSを走行する合計11SS、60.68kmが設定されていたが、雪不足を理由にSS5/8のフィニッシュラインをそれぞれ約1km短縮。SS総距離は59.14kmで争われることとなった。また、全日本ラリー選手権に加えて、FIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)と日本スーパーラリーシリーズ(JSR)が併催される。

■レグ1
今シーズンから、全日本ラリー選手権のクラス区分は大きく変更されることになった。トップカテゴリーのJN-1クラスは、国交省が許可したラリー出場のための特別ナンバー取得したFIA公認車両と、JAFによるASN公認/承認車両が参戦。JAFが定めるRRN車両やRJ車両(国内ナンバーを取得している車両)は、JN-2クラスに分けられる。

トヨタGRヤリス・ラリー2のJN-1クラス投入を発表したトヨタ・ガズーレーシングは、第2戦新城から登場予定。また、昨年のJN-1クラス王者、ヘイキ・コバライネンもフィンランド・ラリー選手権参戦のため、第2戦からの出走を予定している。

SUBARU RALLY CHALLENGEとして、新井敏弘と鎌田卓麻がタッグ / Naoki Kobayashi


例年よりも雪の少ない嬬恋には、今シーズンから「スバル・ラリーチャレンジ」として参戦する新井敏弘と鎌田卓麻が、昨年のマシンをJN-1クラスにコンバートした仕様でエントリー。彼らは、シーズン途中からスバルWRX S4ベースのニューマシン投入を予定している。次戦新城からシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoにスイッチする予定の福永修は、旧スペックのシュコダ・ファビアR5を持ち込んだ。また、コバライネンの代わりに、チーム・アイセロの牧野タイソン代表がファビアR5でエントリーしている。

ラリー初日は、2月4日13時にサービスパークが置かれた嬬恋会館でセレモニアルスタートを実施。クルーはSS1とSS2を走行後、サービスを挟んで夕方から夜にかけて5つのステージを連続で走る。SSの総走行距離は32.84km。オープニングのSS1は、鎌田が幸先良くベストタイム。4.4秒差の2番手にはWRCラリージャパンにおけるアクシデントからの復帰戦となった新井が続く。「低μ路でも優勝を狙う」と語った福永は、8.3秒差の3番手と一歩遅れている

JN-1クラス2番手の福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5) / Naoki Kobayashi


SS2は福永がベストタイムをマークし、新井を抜いて2番手に浮上。福永はサービスを挟んだSS3とSS4でも連続ベストをたたき出し、鎌田との差を3.0秒にまで縮めてみせた。このまま鎌田を捉えるかと思われたが、SS5で福永が痛恨のスピン。マシンにダメージを負っただけでなく、15秒以上もタイムロスしてしまう。このステージで今回初ベストの新井が2番手に浮上すると、続くSS6でも福永に1.1秒差をつけて連続ベストタイム。この日の最後を締めくくるSS7は福永が意地のベストを刻み、0.1秒差だが新井を捉えて2番手に順位を戻した。

首位の鎌田は、後半のセクションでベストタイムこそなかったものの、安定したペースで走行。2番手の福永に12.9秒、3番手の新井に13.0秒差をつけて初日をトップで折り返した。4番手の牧野タイソン/北川紗衣は2分以上離れており、優勝争いはこの3人に絞られたと言ってもいいだろう。

「スノーバンクを使うリスクを冒さず、ペースをコントロールすることができました。特に後半の2SSは、焦らずにコントロールしながら走れました。今回はまったく無理をせずに悪くないタイムが出せているので、明日もこのままの調子でいきたいです」と、鎌田は納得の笑顔を見せた。

一方、3度のベストタイムを記録しながらも、一度のスピンで2番手となった福永は「とにかくSS5でのスピンが痛かったです。クルマのダメージはサービスで修復できるくらいなので問題はありません。新井選手と僅差ですし、ここには勝つために来ているので、明日は首位の鎌田選手を追いかけたいです。4本すべてのステージでベストを獲るつもりで攻めます」と、最終日の逆転を誓った。

まだ腕に痛みが残りながらの走行になった新井は、「いつものようにステアリングを回せないですし、全然本調子ではありません。普段のようにある程度無理を効かせたドライブができないので、かなりタイムロスした箇所もありました。明日もこのままリスクを避けたドライビングで走ることになると思います」と、初日を振り返っている。

JN-2クラス首位の堀田信/河西晴雄(トヨタGRヤリス) / Jun Uruno


JN-2クラスは、社員育成のためにカヤバ(KYB)が新たに立ち上げた「KAYABA Rally Team」から、奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が開幕戦に参戦。第2戦以降は、「KAYABA Rally Team」とジョイントしつつ「NUTAHARA Rally Team」からの出場となる予定だ。今回の奴田原はラリー用スタッドレスタイヤではなく、横浜タイヤの一般用スタッドレスタイヤ「iceGUARD」を履いての出走となる。ラリー初日は、同じGRヤリスをドライブする堀田 信/河西晴雄がコンスタントに好タイムを並べてリード。初日を終えてペースの上がらない奴田原に10.6秒のアドバンテージを得ている。2分以上離れた3番手には、野苅家宏一/新井正和(トヨタGRヤリス)がつけた。

「一応トップを走っているので、あまり攻めすぎて自爆しないよう慎重なドライブを心がけました。コ・ドライバーからもかなり抑えられています(笑)。ただ、終盤のナイトステージでは視界が悪く、何度かスノーバンクにぶつけてしまいました。それでも、大きなタイムロスをせずに走り切れて良かったです」と、堀田は安堵の表情を見せた。一般用スタッドレスタイヤで走行する奴田原は我慢の展開に、「順調に走ることはできていますが、堀田選手にプレッシャーをかけるのは難しいでしょうね。今回はしっかり帰ってくることが目標です。このタイヤにとっては、路面が凍結路や圧雪路ではなくシャーベット状になると、かなり厳しいです」と、肩をすくめた。今回、GRヤリスでの初参戦となった野苅家は「このクルマでラリーを走るのは初めてなので、少し乗りにくい面もあります。でも、これまで乗っていたスバルWRX STIと比べて、クルマの軽さを感じています」と、コメントを残した。

JN-3クラス首位の上原淳/漆戸あゆみ(トヨタ86) / Naoki Kobayashi


JN-3クラスは、トヨタ86で挑む上原淳/漆戸あゆみのみのエントリー。FRには厳しいスノーラリーだが、自分のペースを守って初日を走り切った。「我慢のラリーになりました。最後のセクションは2WDに許されているスパイクタイヤを履きましたが、スタッドレスタイヤよりもかなり走りやすかったです。タイトコーナーの立ち上がりが3秒くらい違います。ただ、クルマは86ですからタイムはこんなものでしょう」と、上原は納得の笑顔を見せる。

JN-4クラス首位の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) / RALLY PLUS


JN-4クラスは、スズキ・スイフトスポーツ勢のワンメイク状態に。現在、クラス2連覇中の西川真太郎/本橋貴司は、SS6では4WD勢にも割って入る総合4番手タイムを記録するなど、この日行われた全SSでベストタイムを並べてみせた。終わってみれば、2番手の筒井克彦/古川智崇に1分以上の大差をつけて独走。また、3番手に付けていた佐藤喜一/増田徹は、SS3でコースオフを喫し、リタイアを決めている。

「今までのラリー人生でトップ3に入るくらい、できすぎの展開になっています。総合4番手タイムを出せたり、私自身も困惑しているほどです(笑)。このシーズンオフは雪道での走り方をチーム監督の平塚(忠博)さんに、みっちり叩き込まれたので、それを実践しているだけです。無理をせず淡々と走っているのが逆にいいのかもしれません」と、西川は満面の笑みで振り返った。「自分としては上々の走りができていますし、マイペースを心がけています。今回の西川選手は隙がないので自分のペースを守っている感じです」と、筒井は、自分のペースを崩さずにラリーを戦う。

JN-5クラス首位の鶴岡雄次/山岸典将(トヨタ・ヤリス) / RALLY PLUS


JN-5クラスはトヨタ・ヤリスをドライブする鶴岡雄次/山岸典将のみが出走。経験の少ないスパイクタイヤではなく、あえてスタッドレスタイヤで初日を走り切った。「迷いましたが、テストではスタッドレスタイヤを使っていたので、あえてスパイクタイヤを選択せずに走りました。スパイクタイヤ勢が削ってくれた氷の屑が路面に散らばっていたので、逆にグリップが上がって走りやすかったです。明日は上を狙うことなく自分のペースを守ります」と、コメント。

JN-6クラス首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) / Jun Uruno


今シーズンから1800cc以下のハイブリッド車両と電気自動車のAE車両に限定されるJN-6クラス。この新生JN-6クラスに、数々のタイトル獲得経験を持つ天野智之/井上裕紀子が、旧型のトヨタ・アクアで参戦してきた。迎え撃つ昨年のJN-6クラス王者の海老原孝敬/遠藤 彰も、トヨタ・ヴィッツからホンダ・フィット・ハイブリッドRSにマシンを変更している。乗り慣れないマシンにも関わらず天野は、SS4以外の全ステージでベストを獲得。2番手の海老原に初日だけで56.5秒差をつけてみせた。

「上りのセクションは厳しかったですが、下りセクション中心のステージでは2WD勢トップのタイムも出せました。あらためて、スパイクタイヤの威力を感じています。もう少しスピードが出せたらいいんですが、このクルマだとこれが精一杯でしょう」と、天野は納得の表情。一方、天野の先行を許した海老原は「1本は勝てましたが、やはり天野選手は速いですね。僕自身はまだ新しいクルマに慣れているところです。制御の問題など、これからクルマの扱い方を含めて詰めていければと思っています」と、コメントを残した。

ラリーオブ嬬恋 レグ1結果
1 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) 25:57.3
2 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5) +12.9
3 新井敏弘/小藤桂一(スバルWRX STI) +13.0
4 堀田信/河西晴雄(トヨタGRヤリス) +1:23.9
5 奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス) +1:34.5
6 牧野タイソン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) +2:23.5
7 西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) +3:22.7
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9 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) +4:21.4
13 鶴岡雄次/山岸典将(トヨタ・ヤリス) +7:46.1
14 上原淳/漆戸あゆみ(トヨタ86) +8:12.8

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