全日本モントレー:波乱の展開となった初日、コバライネンがパンクを乗り越えリード – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本モントレー:波乱の展開となった初日、コバライネンがパンクを乗り越えリード

©RALLY PLUS / JN-1クラス首位のヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)

6月10日(金)〜12日(日)にかけて、群馬県富岡市を拠点に開催されたアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)アジアカップ第2戦、および全日本ラリー選手権第5戦モントレーは、11日(土)の競技初日を終えて、シュコダ・ファビアR5のヘイキ・コバライネン/北川紗衣が両部門でトップ。

APRC2番手のマイケル・ヤング/エイミー・ハドソン / RALLY PLUS


APRCの2番手には、トヨタC-HRのマイケル・ヤング/エイミー・ハドソン、同3番手にはスバルWRX STIの青山康/竹下紀子という順位に。全日本では、2番手にトヨタGRヤリスの眞貝知志/安藤裕一、3番手に同じくトヨタGRヤリスの柳澤宏至/加勢直毅が続く格好となった。4番手には若手の三枝聖弥/石田裕一(スバルWRX STI)が食い込んだ。

今回のラリーは全8戦で争われる全日本ラリーにとって後半戦のスタートであり、開幕戦から続くターマック5連戦の締めくくりとなる。ラリーの拠点は富岡市の群馬サファリパークに置かれ、ステージは群馬県南西部のエリアを中心に設定された。また、モントレーとしても3年ぶりに有観客ラリーとして、観戦可能なSSを設けたほか、群馬サファリパークの駐車場にはスバルやラリージャパンがブースを出展するラリーパークも展開された。梅雨時ということや、変わりやすい山の天気に加え、特にSS1〜SS2については路面の荒れているセクションが多く、レッキを終えたドライバーは警戒感を隠さない。11日(土)8時、ラリーは群馬サファリパークのゲートからスタート。SSの路面は乾きかけている部分や湿った部分が混在し、ひと筋縄では行かない状況だ。

JN-1クラス首位のヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) / Naoki Kobayashi

オープニングステージとなった7.54kmのSS1は、前戦からセットアップを大きく変えてきたスバルWRX STIの新井敏弘/田中直哉が、SS2番手のコバライネンに1.8秒差をつけて今シーズン初のベストタイムをたたき出す快走を見せた。ところが続くSS2、新井は右コーナーでアウト側に膨らみ、ガードレールにヒット。マシンは再出走が不可能なほどのダメージを受けてしまい、新井の地元ラリーはここで終わることとなってしまった。このSS2では勝田範彦/安藤裕一(トヨタGRヤリス)が一番時計をたたき出してJN-1クラス首位に躍り出るが、その勝田も続くSS3で立ち木にヒット。足まわりなどにダメージを受け、レグ離脱を余儀なくされた。代わってトップに立ったのはシュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美早子。SS3、SS4とラリーをリードするが、SS5ではパンクを喫してステージ中にタイヤ交換を実施したため、大きくタイムを失うこととなってしまった。ここで、SS2でパンクを喫し後退していたコバライネンがJN-1クラスの首位に浮上。SS3〜6を4連続ベストタイムでまとめ、クラス2番手の眞貝に1分21秒2差をつけて初日を終えた。この日は上位陣にもトラブルが続出。SS2では奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)がミッショントラブルで戦線離脱、スバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一も複数回のパンクを喫して5番手と苦戦を強いられている。

首位で初日をまとめたコバライネンは、「SS5では右コーナーアウト側のガードレールにぶつかってしまったけど、ほとんどダメージもなくてラッキーだったよ。SS2/5は路面が悪く、とにかくスローペースで走った。もうレッキのような感じだね(笑)。タイヤ戦略を変えて、SS6でフロントにドライを履いたのはいいチョイスだった。大きなマージンを得たけれど、まだ距離は残っているし、気は抜かずにいくよ」と、振り返っている。2番手につける眞貝は「SS2は慎重すぎましたね。ミスしてはいけないと思って、だいぶゆっくり走ってしまいました。午後にはアライメントを変更して、自分的にはペースを上げられました。トップとは差がありますが、いいセットアップが見つかったと思います。ペースノートを再確認して、明日もしっかり危ない箇所を避けたいと思います」と手応えをみせる。3番手の柳澤は「今回のクルマは色々とアップデートされていて、初めて乗った時よりもずいぶん良くなっている印象です。明日は残り4本ですが、トラブルに見舞われないように、大切に走りたいです。自分がミスしないように気をつけます」と慎重なコメントを残している。

JN-2クラス首位の中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3) / RALLY PLUS


JN-2クラスはGRスープラのAKIRA/美野友紀がオープンクラスに変更したため、トヨタGT86 CS-R3の中平勝也/島津雅彦と、ルノー・クリオ・ラリー4の横嶋良/小藤桂一による一騎打ちに。とは言え、横嶋は今回がクリオでの初参戦ということもあり、クルマの素性をチェックしながらの走行。このクラス以降はSS6が安全上の理由でノーショナルタイムが与えられたこともあり、実質5SSでの戦いとなったが、ここまで4連勝を挙げている中平が5SSすべてでベストタイムを刻む結果となった。

中平は「すごく大変な道でしたが、リスクを避けて帰ってくることができました。SS6がスルーになってしまい不完全燃焼でしたが、ともかく1日を無事に走れたので、良かったです。明日のSS8/10は全日本のターマックで一番好きなコースなので楽しみです。ハイスピードでタフですが、攻略できた時に達成感がありますね」とコメント。横嶋は「今回はクルマに慣れることが一番の目的です。路面は悪いですが、クルマがいなしてくれるというか、ノートでギャップがあるところも普通に走ってくれるので、ポテンシャルを感じました。午後はSS4でちょっとミスもありましたが、明日もまた新しいことにトライしてみたいです」と充実した笑顔を見せた。

JN-3クラス首位の竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ) / Jun Uruno


新旧の86/BRZが鎬を削るJN-3クラスは、新型SUBARU BRZの竹内源樹/木村悟士がトップ。2番手に久保凜太郎/大倉瞳、3番手に加納武彦/横手聡志とBRZ(ZC6)勢が続くかたちとなった。4番手にはマツダ・ロードスターの八田新一/加藤芳皓がつけている。トヨタGR86の山本悠太/立久井和子は、SS1とSS2で連続ベストタイムをマークしたがSS3でスピン。バンパーが外れてしまったためナンバープレートのない状態でリエゾンを走ることができず、ここでレグ離脱となった。このSS3では新型BRZを投入した上原淳/漆戸あゆみがクラッシュ、リタイアとなっている。

首位の竹内は「周りのトラブルもあって、午前中の時点でクラストップに立ち、気を抜かずにしっかり走ることができました。2SSでクラスベストをマークすることもできたので、上出来ですね。後ろとは少し差がありますが、明日も20km超えが2回あるので、コンスタントなペースで走りたいと思っています」とコメント。2番手の久保は「離されても無理せず、リスクを避けて走っています。それでもブレーキが危ない場面もありましたし、難しい路面でしたが戻ってこられて良かったです。明日は観戦エリアのあるSSは全力でいきます(笑)」と笑顔を見せた。3番手の加納は「ラッキーもありますが、これもラリーですね。明日はウエットセットにウエットタイヤで行こうかと思っています。山の天気なので安全策をとります。生き残りたいので(笑)」と、明日に向けての展望を語っている。

JN-4クラス首位の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) / Jun Uruno


スズキ・スイフトスポーツによるバトルが展開されているJN-4クラス。このクラスでは、クラッシュした車両の影響でSS3の途中で停車した(その後ノーショナルタイムが与えられた)ほか、SS6ではスルー走行となったため、実質的に4SSでの戦いとなった。結果、西川真太郎/本橋貴司がラリーをリード。2番手の須藤浩志/新井正和に31.5秒差をつける力走を見せた。その須藤から37.9秒離れた3番手に筒井克彦/古川智崇が入っている。筒井の背後6.7秒差で奥村大地/Jacky、奥村の後ろ5.7秒差で岡田孝一/河本拓哉が続いており、3番手争いは予断を許さないような状況だ。

クラストップの西川は、「ドロドロの道は正直なところ苦手なんですが、予想以上にタイヤのグリップが良くて、そこで差をつけられた気がします。このまま調子に乗らず、セットアップをいじらずに頑張ります」と手応えを覗かせる。2番手につける須藤は「なんとか西川選手と同じタイムは出したいと頑張りましたが、ひっくり返すことはできませんでしたね。フロントに15インチを履いてみましたが、懐は深いものの、ちょっと剛性感が足りないですね。上も下も離れているので、明日は自分としてのベストを尽くします」と、225/50R15というサイズのタイヤで新たな方向性を探る。3番手の筒井は「SS4はベストが獲得できました。86に乗っていた癖がまだ残っているんですが、それを修正して、低速コーナーを突っ込み気味に変えたのが良かったかもしれません」と初日のドライビングを振り返った。

JN-5クラス首位の小濱勇希/橋本美咲(トヨタ・ヤリス) / Jun Uruno


JN-5クラスはトヨタ・ヤリスが上位を占めるかたちとなった。このクラスも実質的に4SSでの戦いとなったが、その4SSすべてでベストタイムをマークしたのは小濱勇希/橋本美咲。2番手の小川剛/梶山剛に20.4秒差をつけてクラス首位に立っている。2番手の小川から8秒後方の3番手には、小濱のチームメイトである渡部哲成/佐々木裕一がつける展開だ。ここまで4連勝を続けていた天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS)は上り主体のコースと路面の悪さに思うようなスピードを発揮できずに苦戦。マシンにも不具合が見られ、4番手にとどまっている。

小濱は「泥が出ていたり、舗装が剥がれて段差が出ていたり、本当にターマックなのかというほど荒れた路面でした。でも丹後の後でチームがテストを実施してくれて、そのおかげでタイムが出せました」と笑顔を見せた。2番手の小川は「荒れた路面だったので、大変でした。制御が走ってしまう局面が多くて、それが改善できれば、もっとペースアップできるんでしょうが、なかなか難しい」とのこと。タイヤは路面に合っているけど……と難しい表情で振り返った。3番手の渡部は「離されてはいますが、1kmあたり1秒詰めることができれば、優勝も狙える位置です。このまま大人しく小濱先輩を勝たせるつもりはないので(笑)、頑張って捉えにいきます」と、力強いコメントを残した。

JN-6クラス首位の海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・ヴィッツ) / Jun Uruno


JN-6クラスはトヨタ・ヴィッツの海老原孝敬/蔭山恵がクラス首位を快走。2番手の木村謙治/多比羅二三男(ホンダ・フィット)に対して1分54秒1と大きなリードを築くことに成功した。3番手はマツダ・デミオの中西昌人/有川美知代。実質4SSでの戦いとなったが、ここまで4連勝中の海老原が4連続ベストでまとめ、大きなマージンを稼ぎ出すことに成功した。SS2終了時点では中西が2番手につけていたものの、その後は木村が逆転し2番手に浮上している。

トップで初日をまとめた海老原は「濡れているだけでなく、砂利や泥で思った以上に滑る路面でした。足まわりを柔らかくしてきたんですが、それでも対応しきれない感じですね。ただ、午後は一部で雨が降ったこともあって、タイヤは合っていました」と、タフな初日を振り返った。2番手の木村は「このクルマではシェイクダウンもできなくて、ぶっつけ本番です。SS5は順調にスタートはうまくいったのですが、ワイパーがなくなってしまったり、パンクもあり大変でした」と語る。前戦で出ていた制御のトラブルは改善しつつあるという3番手の中西。「SS4は上りは速かったんですが、その後は波に乗れない感じでした。30秒以上開いてしまっていますが、1kmあたり1秒詰められるよう頑張ります」と最終日のポジションアップに意気込みを見せた。

6月12日(日)の競技最終日は4SS、45.36kmでの戦い。0.76kmのSS7/9と、21.92kmという長距離ステージのSS8/10で構成される。サービスパークの置かれる群馬サファリパークに隣接したSS7/9には観戦エリアが設けられる。勝負どころとなるロングステージはハイスピードセクションが多く、天候も勝負の行方を左右する要素となりそうだ。

MONTRE 2022 SS6後結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) 1:09:03.1
2 眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス) +1:21.2
3 柳澤宏至/加勢直毅(トヨタGRヤリス) +1:32.1
4 三枝聖弥/石田裕一(スバルWRX STI) +1:48.3
5 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI) +3:34.6
6 徳尾慶太郎/石田一輝(トヨタGRヤリス) +3:58.0

8 竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ) +4:38.0
11 西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ) +5:24.3
12 中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3) +5:37.0
16 小濱勇希/橋本美咲(トヨタ・ヤリス) +6:31.5
30 海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・ヴィッツ) +9:31.7



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