GRヤリスベースのAP4、4月のオーストラリア国内戦で実戦デビュー – RALLYPLUS.NET ラリープラス

GRヤリスベースのAP4、4月のオーストラリア国内戦で実戦デビュー

©TOYOTA AUSTRALIA

トヨタ・オーストラリアは、トヨタGRヤリスをベースとしたトヨタGRヤリスAP4を開発した。4月9〜11日にオーストラリアの首都キャンベラで開催されるオーストラリア国内ラリー選手権(ARC)開幕戦ナショナル・キャピタルラリーで実戦デビューを果たす。このイベントでは、トヨタの支援を受けるトヨタ・ガズーレーシング・オーストラリア(TGRA)が2台のGRヤリスAP4を投入。ハリーとルイスのベイツ兄弟がそれぞれドライバーを務める。TGRAは、ベイツ兄弟の父であり、オーストラリア選手権で4回チャンピオンに耀いているニール・ベイツが運営を務める。兄のハリーは現オーストラリアチャンピオン、弟のルイスはARCがフル開催された2019年にシリーズ2位に入っている。

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この新GRヤリスAP4は、トヨタ・オーストラリアとの協力により、ニール・ベイツ・モータースポーツ(NBM)が開発・製作を行った。

トヨタ・オーストラリアは長年、ARCでオーストラリアのラリーチームの支援を行ってきたが、ラリーカーの開発に積極的に関わるのはこれが初めて。ボディワークは、同社のプロダクト・プランニング&デベロップメント(PP&D)部門のチームが設計を担当した。

ニール・ベイツは、設計においてトヨタ・オーストラリアと直接連携して作業ができたことは素晴らしい経験だったと語る。
「このマシンに命を吹き込むために、必死で連携して取り組んできた。来月の実戦デビューが楽しみだ」とベイツ。
「この設計は見た目が素晴らしいマシンに仕上げただけでなく、フェンダーやバンパーの形状をファインチューニングし、トヨタの最新の技術を駆使した数々のパーツも、素晴らしいエアロダイナミクスを作り出すことに役立った」

「また、我々は1.6リットル3気筒ターボエンジンに関してはトヨタ・ガズーレーシング・ヨーロッパとも連携している。AP4規定に適合させるために、標準のGRヤリスのユニットをわずかに改良しながらも、非常に機敏に反応し、ラリー向きのドライバビリティを発揮するように仕上がった」

ベイツを筆頭に、デザインディレクターのダリル・ブッシュ、ルイス・ベイツ、サム・エリオットクリス・ショア、アンソニー・カルドウェルのチームは、スタンダードのGRヤリスを分解してからGRヤリスAP4にリビルドするまでに長い時間を作業に費やしたものの、ベース車両がラリーを念頭に置いて開発されているので、非常にやりやすかったと感じたという。

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「このマシンの素晴らしいことのひとつは、ラリー車にコンバートするために設計されたという点で、最初から非常に軽量だった」とベイツは説明する。
「コンパクトなターボエンジンと4輪駆動システムが組み合わされたGRヤリスは、我々がこれまでラリーマシンに仕上げてきた車両と比べても、素晴らしいベース車両だ。こうしたラリーマシンを製作することは、トヨタ・ガズーレーシングの柱である、実際の世界のモータースポーツに直結し、それらの教訓と技術を取り入れてロードカーに適用するパフォーマンスカーブランドをまさに披露するものだ」

世界クラスからローカルの競技まで戦えるマシン

このGRヤリスAP4は、AP4規定に適合させて製作されており、マニュファクチャラーがFIA公認を取得したラリー2(旧R5)を対象とする、WRCに次ぐWRC2の選手権に非常に近いものだ。

ラリー規定上、ドアやルーフなどオリジナルのGRヤリスのボディシェルのコンポーネンツはそのまま残されているが、そのほかのパーツは改良することができる。

しかし、ベイツによれば、GRヤリスはアルミ製のドアやカーボンファイバー製のルーフを採用することで軽量化し重心が非常に低いため、すでにアドバンテージを持っており、競技車両として完璧だという。

「ラリー車といえば量産車を改良しただけと思われがちだが、実際はグラベルのためのスーパーカー。製作のプロセスはスーパーカーとまったく同じなんだ」とベイツ。
「ラリーマシンでは標準のシェルを使用しなくてはならないが、もちろんそれをかなり修正することになるし、その作業の多くは重量を減らすことについてのものになる」

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AP4規定での最低重量は1230kgとなっているが、NBMが製作した2台のAP4マシンはそれを大きく下回っているため、最低重量を満たすためにバラストを使用する。

ボディシェルに関しては、軽量化のためにボンネットとハッチをファイバーグラス製としたほか、軽量化とセーフティのために、3Dプリントで作成した軽量ミラーとボンネット開口部、パースペックスのアクリルを使用している。競技用エンジンは量産のGRヤリスをベースに開発しているが、ブロック、ヘッド、インレットマニホールドは標準で、特注のエキゾーストマニホールドと最大ブースト1.5バールのターボチャージャーを使用。AP4規定に適合させるためにエアリストリクターを装着する。

出力の値は明かされてはいないが、ベイツによればこのマシンのエンジンは、標準のGRヤリスの200kW/370Nmは超えると予想していると語っている。

トランスミッションはサデフの6速シーケンシャルギヤボックスを採用し、ギヤレシオはNBMが希望して指定した値になっている。AWDシステムもサデフ製で、規定により駆動トルクを前後に50/50に均等に分割するようロックされたセンターデファレンシャルを使用している。

エンジン以外では、ドライブシャフト、ロックトゥロックが1.8回転の左ハンドル用ステアリングラックなどはすべてNBMが製作、またはオーストラリア現地で入手したもの。グラベルでの長距離の走りに対応するために、NBMはフロントサスペンションタワーを50mm延長し、すべてのサスペンションコンポーネンツは内製で設計、製作を行った。ダンパーはマリー・クーテ・オーストラリア(MCA)を採用。トラベルはフロントが265mm、リヤが280mmとなっている。

トヨタ・オーストラリアのチーフマーケティングオフィサー、ジョン・パッパスは、GRヤリスが世界クラスのラリーカーに生まれ変わった姿を見るのは素晴らしいことであり、トヨタ・オーストラリアがニール・ベイツ・モータースポーツと連携できたことを誇らしく思うとも語った。

「1989年、ニールが初めてトヨタ・チーム・オーストラリアからバサーストに参戦した時以来、ニール・ベイツ・モータースポーツとチームは非常にいい関係を築いてきた。NBMとのタッグで設計、製作したマシン、GRヤリスAP4をアンベールできることに非常にワクワクしている」とパッパスはコメント。
「ドライバーとして、ニールは30年にわたって非常に素晴らしいキャリアを積んできており、今ではTGRAの代表としてこの素晴らしい2台のGRヤリスAP4の製作をリードしてくれた。TGRAが2021年のARCシーズンで活躍してくれることを願っている。このマシンの血統を武器に、ハリーとルイスが、常に表彰台争いをしてくれるはずだ」



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