全日本ラリー新城:唯一の三菱車で奴田原文雄が今季初優勝 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本ラリー新城:唯一の三菱車で奴田原文雄が今季初優勝

©Naoki Kobayashi

全日本ラリー選手権第2戦新城ラリーはすべての競技日程を終えて、三菱ランサーエボリューションの奴田原文雄/佐藤忠宜が今シーズン初勝利を飾った。奴田原にとっては2019年の第9戦ハイランドマスターズに次ぐターマックラリー連勝となる。

前日とは打って変わって雲ひとつない晴天に恵まれたラリー2日目は、SS7〜SS10の4SS、SS距離46.44km。トリッキーな雁峰西(SS7/9 16.26km)と、ハイスピードなワインディングの鬼久保(SS8/10 6.96km)が舞台だ。なかでも雁峰西は、多くの選手が勝負の行方を左右するSSとして挙げるステージ。朝8時、15分間のサービスを終えた各クルーは、それぞれの戦略を描きながら拠点となる県営新城総合公園をスタートしていった。

JN1クラスは首位の奴田原が快走。この日のSSすべてでベストタイムをマークする速さを見せて初日のリードをさらに拡大、唯一参戦している三菱車の意地を見せてシーズン初勝利をモノにした。オープニングステージとなったSS7の雁峰西は、前日の雨が残ったウエット路面。ここで、新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)がハーフスピンを喫しリヤをヒットしてしまう。追う立場として自信を見せていただけに、手痛いミスとなった。その後、鎌田卓麻、新井敏弘、勝田範彦がそれぞれSS2番手タイムをマークするものの、奴田原の勢いを止めることは叶わず、2位に新井敏弘、3位に新井大輝という順でフィニッシュした。柳澤宏至/保井隆宏(スバルWRX STI)はSS9でサスペンションにダメージを負い、大きく遅れを喫してリタイア。代わって鎌田が4位に浮上してラリーを終えた。

シーズン最初の勝利を挙げた奴田原は「とてもいい気分です。今回は雨も降りましたし、タイヤの良さを実感しました。ADVAN A052は温度域が広く、気温の低いウエットでもハマりました。今日もまだ路面が濡れていたなかで、タイヤに勝たせてもらった気がします。舗装に関してはマシンの前後バランスも含めて、すごく良くなってきています。ターマックは勝田選手が速かったですが、去年くらいから場所によっては勝てるようになってきました。このまま次も行けるといいですね」と満面の笑み。「ヌタハララリースクールに来れば、勝ち方を教えます(笑)」と宣伝も忘れなかった。

初日に眞貝知志/安藤裕一(トヨタ・ヴィッツGRMN)が大量リードを築いたJN2クラス。2番手の石井宏尚/寺田昌弘(レクサスRC F)と3番手の中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)による12.6秒差の戦いは、石井に軍配。SS7の雁峰西で大柄なRC Fを操り中村との差を1分以上に拡大してみせた。午後のSSになると、4番手の中平勝也/行徳聡(トヨタGT86 CS-R3)が追い上げて中村を逆転し、3位に。中平は全日本ラリー選手権で初の表彰台を獲得した。
快走を見せた勝利を挙げた眞貝は「とてもタフで長く感じました。今回はチームに助けられたからこその勝利だと思います。今年のターマックではタイヤの使用最大本数が6本という規則があるので、2日間とも完璧なタイヤで走る状況はなかなかないでしょうが、今回試行錯誤ができたのは大きかった。次戦の唐津はタイヤに厳しいですが、好きなラリーなので、チームや応援してくれる方々に恩返しができる走りを見せられたらと思います」と笑顔でラリーを振り返った。

JN3クラスは首位の竹内源樹/木村悟士と鈴木尚/山岸典将によるスバルBRZ同士の接戦が見られたが、最終SSを制した竹内が勝利を収めた。この日最初のSS7では前日クラス4番手につけていた鈴木がベストタイムをマークし、クラス2番手に浮上。鈴木はSS7の再走となるSS9でもベストタイムをマークし、クラス首位に躍り出る。鈴木が1.5秒リードする形で最終SSに臨んだが、最終SSでは竹内がきっちりと一番時計で首位を取り返してみせた。3位には、SS8でスピンを喫しながらも、午後のセクションで長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)を捉えた山口清司/大倉瞳(トヨタ86)がつけた。
勝利を挙げた竹内は「ハラハラするつもりはなかったのですが、SS9で抑えすぎて鈴木選手に逆転されてしまいました。1.5秒差をひっくり返すため、最終SSはかなり気合を入れて走りました。今後もJN3はこのようなタイム差で競り合いになると思います。ワンミスで負けてしまうので、しっかり勝てるように頑張りたいです」とコメント。これまで86勢によるバトルが繰り広げられてきたJN3クラスだが、竹内と鈴木のBRZによる走りにも注目が集まりそうだ。

スズキ・スイフトスポーツによるワンメイク状態のJN4クラスは、内藤学武/小藤桂一と、古川寛/大久保叡によるスクラッチバトルが展開された。オープニングのSS7では古川がベストタイムをマーク。9.3秒あった内藤との差をひっくり返し、さらに7.4秒の差をつけてクラス首位に立つ。続くSS8では内藤が一番時計。内藤の再逆転は叶わなかったが、古川と内藤の差は0.1秒と、緊迫した状態で午後のセクションへ。SS7の再走となるSS9では内藤がきっちりベストタイムでリベンジ。ペースを落としすぎたという古川との差を7.7秒とした。内藤は勢いそのままに最終SS10も制し、自身3度目の全日本ラリー勝利を飾った。3位には西川真太郎/本橋貴司がつけている。
「今日の午前中に1回トップを明け渡して、かなり緊張感のあるラリーになりました」とラリーを振り返る内藤。「午後のループでは、雁峰西を攻めることができ、タイムでアドバンテージを握れたのがうれしいです。順位も含めてすごく良いラリーになりました。路面コンディションが変化するなかで、限界にチャレンジできるように、セットアップが決まっていたのが大きかったです」とのこと。次戦の唐津にもエントリー予定ということなので、手に汗握るバトルがまた見られるはずだ。

天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)と大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)の激突となったJN5クラス。初日を終えた段階で、首位天野と2番手大倉の差は3.3秒。この推移がどうなるかに注目が集まった。SS7では大倉がベストタイムをマークして、天野との差を1.9秒に詰めて見せた。続くSS8は天野が制し、大倉との差を6.2秒に押し戻すことに成功した。サービスを挟んだSS9雁峰西では天野が一番時計。このSSだけで大倉に27.4秒の差をつけ、一気に首位を固めにかかる。そして迎えた最終SSでは大倉がベストタイムを奪うものの、逆転には至らず。28.1秒のリードで天野に軍配が上がることとなった。3位には安定したペースを刻んだ岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ)が入っている。
天野は「ウエットの雁峰西は難しいですね。スピンしたり色々とあったラリーでしたが、勝てたので良かったです。今シーズンは、タイヤをフレキシブルに選択する必要がありますね。ミスが致命傷になりますし、すべてのSSでベストを狙うよりも、リスクを考えて勝負どころでプッシュするようにしないと、タイヤに厳しそうです。これまでよりも戦略面が重要視されるので、ベテランが有利になるんじゃないかな(笑)」とコメント。次戦以降もふたりによる接戦から目が離せない。

JN6クラスは明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツCVT)が前日までに稼いだマージンを活かし、危なげない走りで今季初勝利を獲得した。SS8終了後までクラス2番手につけていた田上大輔/鈴木康敬(トヨタ・ヴィッツCVT)がリタイアとなり、2位には海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・アクア)、3位には水原亜利沙/高橋芙悠(トヨタ・ヴィッツCVT)という結果となった。
首位の明治は「なんとか結果が出せて、ホッとひと安心です。スタートの段階ではドキドキでしたが、次につながる結果が出せたのかなと。まだCVTは試行錯誤で走っている感じですが、意外とよく走るので、これからもっと特性を理解して、さらにアップデートしていければと思っています」と意気込みを語った。

次戦、全日本ラリー選手権第3戦は「Sammy ツール・ド・九州 2020in 唐津」。4月10日〜12日にかけて、佐賀県唐津市を拠点に開催されるターマックラリーだ。路面はタイヤへの攻撃性が高いことで知られ、最大使用本数が6本に制限されたことに対し各ドライバーともどのような戦略で臨むのかが注目のポイントだ。勝つのはここまでターマック連勝を挙げている奴田原文雄か、あるいは唐津12連勝という金字塔を打ち立てた勝田範彦か、はたまた伏兵が登場するのか、興味は尽きない。

新城ラリー2020 正式結果
1. 奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX) 1:07:36.0
2. 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) +22.1
3. 新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI) +55.7
4. 鎌田卓麻/鈴木裕(スバルWRX STI) +1:54.2
5. 内藤学武/小藤桂一(スズキ・スイフトスポーツ) +4:55.8
6. 眞貝知志/安藤裕一(TGR Vitz GRMN Rally) +4:56.5

8. 竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ) +5:46.4
15. 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ) +7:09.8
28. 明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツCVT) +11:54.3

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