【Martin’s Eye】フィンランド快勝のトヨタ、揺るぎない開発信念と今後についてマキネンに聞く – RALLYPLUS.NET ラリープラス

【Martin’s Eye】フィンランド快勝のトヨタ、揺るぎない開発信念と今後についてマキネンに聞く

©Toyota Gazoo Racing WRC

ベテランWRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s Eye。チームの拠点でもあるフィンランドで、オィット・タナックが会心の勝利を遂げたトヨタ。チームの開発信念と、大きく規定が変わる今後に向けてチーム代表のトミ・マキネンに聞いた。


サルディニアでリードしていたオィット・タナックが最終ステージで襲われた惨事だけでなく、シーズン序盤に味わった数々の辛酸から挽回してきたTOYOTA GAZOO Racing WRTのトミ・マキネンが、現在取りかかっている作業や、今後に向けた展望についての考えを明かした。このインタビューは、オィット・タナックの勝利で終わったラリーフィンランドの前夜に行ったものだ。様々な落胆を味わったにもかかわらず、マキネンはヤリスWRCの開発は正しい方向に向かっていると考えていたのだろうか。

トミ・マキネン(TM):我々は、これまでと変わらないやり方で開発作業を繰り返し続けてきたと言える。それは、どこにも問題がなかったからなどの理由からではない。我々が行ってきたのは、様々なコンディションを経験し、それを分析するということ。これは改良のために必要なことだ。そして、ドライバーたちからの情報や一緒に作業しているインターンからのコメントをもとに、彼らの経験やアイデアを織り交ぜ、これまで見てきたなかでも最高のチームワークで進んできた。それは2016年にヤリスWRCを作り始めた時から、一切変わらない。我々はすでに、ここフィンランドで膨大な数のテストを行っているので、今回のラリーフィンランドでも様々なことを期待されている。今でも我々は、ラフなコンディションに向けてよりチャレンジングな作業に取り組もうとしている。こうしたコンディションに専念してきた我々でも、まだ行うべきことが残っているのだ。

MH:グラベルやラフな道で、どんなところが弱点となっているのか。
TM:車高を上げなくてはならないような状況の時に、少し改良の余地が残っていると考えている。現在は、少し低めの車高セッティングの時にベストの走りになるように行われているからだ。この部分に関しては、すでによくなり始めていると考えている。

MH:このマシンに行った改良で最も重要なものは何か?
TM:もちろん、あちこちの細部に関することだ。サスペンションやジオメトリー、小さなアイテムがすべて一体となって、全体のパッケージがうまくいく。ようやくエアロダイナミクスからパフォーマンスが得られるようになった。この部分は、一度デザインの公認を受けたら、大きくは変えることができない。そのためにはジョーカーを使わなくてはならないし、使えるジョーカーの数は限られている。我々が取り組んできた作業のほとんどは、トランスミッションやサスペンションに関するものだ。

MH:次に改良するのはどの部分か?
TM:我々は常に、改良のため視野を広く持つことを心がけている。新しいダンパーについてはすでにテストを行っている。サプライヤーは同じだが、まったく新しい設計のもので、しかも軽量だ。だが、特に足まわりのセッティングというのはいつでも時間がかかる部分。変更を決断するためには、確実にうまく機能することを確認しなくてはならない。

MH:ヤリスWRCに予想しているライフはどれくらいか。いつまでこのマシンでラリーを行うのか。2022年に新規定が導入されるまでギリギリ使うのか?
TM:2022年には新しい(ハイブリッド)システムが導入されることは分かっているし、ほかにも大型のベース車両をサイズダウンして使えるようになるなど新しい規定がたくさん導入される。そのことのついては、まだあまり知らされていない。もちろん、いずれにしろ、22年にはまったく新しいマシンになるだろう。現在と同じデザインを使うのか? そうかもしれない。どうなるかな! 2022年については、レギュレーションの確定を待っているところだが、自分たちが分かっている範囲ですでに準備は始めている。2021年は、どうなるか分からないが、大きな変更はないだろう。

MH:2020年に関しては、いつドライバーを確定するつもりでいるか?
TM:当然、現在はオィット・タナックと今後について交渉している。その結論が出たら、残りのラインナップを考える。しかし今は真剣に考え始めたばかり、というところだ。

MH:トヨタのR5マシンを新たに製作することについてはどうなっているか。
TM:かなりのことを行ってきたし、研究もしてきた。プロジェクトの開始が整うための準備を非常に非常に慎重に行っている。近いうちに、我々がR5を作るか否か、決断を行うことになるだろう。

MH:以前にこの件を聞いた時には、R5に使いたいと思っていたエンジンは、まだ量産されていないと言っていた。現在も、量産されることを待っている状態なのか。
TM:そのとおり。まもなく始まるはずだが、レギュレーション的にも問題ないはずだ。こうしたことについては、すべて解決済みだ。
(Martin Holmes)



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