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全日本ラリー嬬恋:最終SSを前に鎌田が後退、新井が初戦を制す

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群馬県嬬恋村で開催された全日本ラリー選手権開幕戦「RALLY of TSUMAGOI」は、すべての競技を終えて、SUBARU WRX STIの新井敏弘/田中直哉が優勝。2位には鎌田卓麻/鈴木裕、3位に勝田範彦/石田裕一という結果となった。

競技3日目のラリー最終日は、SS13〜SS18の計6SS。後半がハイスピードセクションで構成され、この日が初走行となるSS「Aisainooka」は、路面コンディション悪化のためSS距離が27.04kmに短縮された。前日に引き続き好天に恵まれ、気温も上昇したものの、雪の残るステージも多く、スノーラリーらしい光景も随所に見られた。

JN1クラスは、総合首位に鎌田、2番手に新井、3番手に勝田という順位でこの日をスタート。鎌田と新井の差は21.1秒とやや開いているが、新井と勝田の差はわずかに1.0秒。前日終盤に逆転して順位を上げた新井は、この日最初のSS13で渾身のベストタイムをマークし勝田との差を4.6秒に広げている。続くSS14〜SS16までは、鎌田が3連続で一番時計。特にSS15「Omae Suzaka」では、これまでのSSでは0.1秒を争う両者の攻防が続くなか、鎌田はこのSSだけで新井を5.3秒引き離すベストタイムをマーク。SS16を終えた段階で、鎌田は新井との差を26.7秒にまで拡大し、新井に「(逆転は)ちょっと難しいかな」と言わせるほど、勝利は目前に迫っていた。一方の勝田はSS14で雪壁からの脱出に手間取りタイムロス、首位の鎌田から遅れること1分2秒2、2番手新井との差も35.5秒となり、逆転は難しい状況に。

ところが、ラリーは終わるまで何が起こるか分からない。ラリーのフィニッシュまで残り2SSとなったSS17で、まさかの事態が起きる。鎌田は高速コーナーをインカットした際、ホイールハウスにシャーベット状の雪が詰まってしまい、ステアリングがロックした状態のままスピン。ステアリングを切り返してUターンしようにも、そのステアリングが効かずに大きくタイムロスを余儀なくされた。この鎌田のアクシデントにより、新井が首位に浮上。最終SSで鎌田はベストタイムをマークするものの、失ったタイムを取り戻すことは叶わず、新井がシーズン初戦を制することとなった。10.4秒差の2位に鎌田、35.9秒差の3位に勝田が入っている。

SUBARU WRX STIが表彰台を独占したJN1クラス / RALLY PLUS

新井は「選手権を考えれば大きいけど、鎌田選手のミスがあったうえでの結果なので、ちょっと素直には喜べないですね。今回はとにかく難しいコンディションで、自分も含めてみんながスピンなどでタイムロスしています。そのおかげで勝ち残ったということでしょうね。次の新城も頑張りたいと思います」とラリーを振り返った。

JN2クラス優勝の眞貝知志/安藤裕一(トヨタ・ヴィッツGRMN) / RALLY PLUS

JN2クラスはトヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一が首位の座をがっちりキープし、今シーズン初優勝を達成。眞貝はヴィッツGRMNについて、アクセルでのトルクコントロールがしやすく、低μ路でのドライバビリティの高さを評価。「本当にリスキーなラリーで完走できました。路面コンディションが目まぐるしく変わり、すごく経験値を貯めることができたと思います。特に最終日はシャーベット状の路面を走ることになって、無理せずに済むだけのタイム差をつけていて良かったです。秒差の勝負だったら、危なかったかもしれません」と、眞貝はラリーを振り返った。

また、シトロエンDS3 R3-MAXで初参戦となった山村孝之/井沢幹昌は、「SS17ではスピンでタイムロスしてしまいましたが、完走目指して、最後まで頑張りました。次の新城はひとつでも前に行けるように、しっかり練習したいと思います」と意気込みを語っている。

JN3クラス優勝の筒井克彦/松本優一(トヨタ86) / RALLY PLUS

筒井克彦/松本優一と牧野タイソン/北川紗衣によるトヨタ86の争いとなっているJN3クラスは、筒井克彦が初の全日本ラリー選手権クラス優勝を達成。難しいコンディションのなか完走を果たしてみせた。筒井は「前日までで20分近いリードを築き、とにかくステディに行こうと決めて、ひたすら飛び出さないように、気をつけました。止まりそうになったことも何度もありましたが、とにかく神経をつかいましたね。完走できて良かったです」とコメント。筒井は今シーズン、86で全戦に出場する予定だという。2位となった牧野は「色々な経験ができました。初日にスタックしてしまい、初めてのラリーで雪のなかを完走できるとは思ってもいませんでした。コ・ドライバーの力も大きく、スタッフ全員に感謝したいと思います」と、初ラリーを振り返った。

JN4クラス優勝の山口貴利/山田真記子(ダイハツ・ブーンX4) / RALLY PLUS

JN4クラスは、新旧スズキ・スイフトスポーツを相手に4WDのダイハツ・ブーンX4を駆る山口貴利/山田真記子がリード。追いかける古川寛/大久保叡(スズキ・スイフトスポーツZC32S)と西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツZC33S)だが、前日までの段階で1分30秒以上の差がついてしまっている。山口はSS14でスピンを喫し、ややタイムをロスするものの、マージンは十分。この日3度のベストタイムをマークしつつ、2012年以来の勝利を飾ってみせた。「タフなラリーでした。色々なトラブルもありましたが、楽しく走ることができました。自分にとってはプラスになりましたね。東日本選手権の御岳スノーランドラリーに出た時は、フロントの足まわりに違和感があったんですが、今回はスノーに合うようにバネを柔らかくしてショックを変えたことが良かったと思います」と山口。2位には古川、3位には西川が入っている。

JN5クラス優勝の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT“GR”) / RALLY PLUS

JN5クラスは天野智之/井上裕紀子が初日からリードを拡大、後続を2分近く引き離すリードをもって最終日をスタートした。ところがこの日のオープニングとなるSS13と続くSS14で天野はスピン、アンダーガードを曲げた影響で雪がバンパー内に入り、SS15ではオーバーヒート症状が出てしまうことに。それでも後ろを追いかける権田哲也/Jacky(マツダ・デミオ)、南野保/ポール・サントとの差を拡大して今季初勝利を飾った。「スピンの回数が多すぎましたね。嬬恋は去年、一昨年と2輪駆動のトップを獲れていたんですが、総合で2輪駆動の3番手でした。優勝することはできましたが、去年までのクラス区分だったら、2位でしたからね。敗因は今日だけで3回もスピンしたことです」と、天野は自らの走りを厳しく分析した。2位は権田、3位は南野という順位になっている。

JN6クラス優勝の大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT) / RALLY PLUS

トヨタ・ヴィッツCVTで参戦する大倉聡/豊田耕司が首位を走るJN6クラスは、2番手にホンダ・フィットRSのクロエリ/加勢直毅、3番手にトヨタ・ヴィッツCVTの清水和夫/高波陽二というオーダーで最終日をスタート。すでに大倉は大量のマージンを築いており、様々なセットアップを試している段階だ。一方のクロエリと清水も45.9秒差と、こちらもややタイム差が開いている。大倉はこの日の6SS中5SSでベストタイムをマークし、危なげなくシーズン初勝利。総合順位でも6位と健闘を見せた。2位はSS14で全日本ラリー初のベストタイムをマークしたクロエリ、3位には途中でチェーンが切れる不運に見舞われてしまった清水が入っている。大倉は「ラリー全体で考えると、本当に勉強になったラリーでした。JN6は新設されたクラスですが、パフォーマンスは非常に高いと感じました。CVT以外にも、ハイブリッドやEVなど出られるクルマも多いですし、非常に可能性のあるカテゴリーで、今後盛り上がると思います。次戦の新城はホームイベントなので、アイシンAWの社員さんもきてくれると思いますし、いいところを見せたいですね」と笑顔でラリーを振り返った。

次戦は3月15日(金)〜17日(日)に愛知県新城市で開催される新城ラリー。シーズン初のフルターマックラリーだが、昨年の最終戦から4カ月を経ての開催となる。

全日本ラリー選手権第1戦RALLY of TSUMAGOI 正式結果
1. 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) 1:04:38.6
2. 鎌田卓麻/鈴木裕(スバルWRX STI) +10.4
3. 勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI) +41.0
5. 眞貝知志/安藤裕一(トヨタ・ヴィッツGRMN) +10:04.2
6. 大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT) +11:58.4
7. 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT“GR”) +12:03.5
9. 山口貴利/山田真記子(ダイハツ・ブーンX4) +12:17.4
22. 筒井克彦/松本優一(トヨタ86) +27:55.6

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