【Martin’s Eye】ミシェル・ムートンに聞く“WRCでの安全確保” – RALLYPLUS.NET ラリープラス

【Martin’s Eye】ミシェル・ムートンに聞く“WRCでの安全確保”

©Red Bull

大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s eye。今回はWRCラリーポルトガルで、WRCセーフティ委員長を務めるミシェル・ムートンにインタビューを敢行。WRカーがパワフルになった現在のWRCにおける安全性確保について話を聞いた。


WRC史上、唯一女性で勝利を収めた経歴を持つミシェル・ムートン。36年前のラリーポルトガルでは、4度のWRC勝利のうち2勝目を飾っている。月日が流れてもなお、ラリーへの情熱を失わない彼女は、ユーモアのセンスも忘れてはいなかった。かつてのポルトガルは愛すべき思い出になっているのかを聞くと
「大昔のことだから、忘れてしまったわ。いいえ、冗談。ここに来るのは、いつでもうれしい。いつもドライビングに手こずらされたポルトガルに戻るのはうれしいけれど、状況はいい方向に変わっている。現在、自分の役目は安全性に関わることと、観客をコントロールすることなので、当時と比べれば、休暇に来ているようなものよ」

マーティン・ホームズ(MH):セーフティ委員長としての主な仕事は。
「休暇と言ったのは、ポルトガルに限ってのこと。安全性が格段に改善された。警察は、観客がステージに到着する前に、全員が観戦エリアに配置している。許可された時間以外、観客が移動することはできない。自分たちはそれまでとは違い、今では競技車両が到着する前に通過するセーフティカーの仕事をしている。インフォメーション車両から、000カー、00カー、そして0カー。全体が鎖のようにつながって、作業している。専用の無線チャンネルを持っているので、1号車がステージを走行する前に全てをコントロールすることができる。そして、これにより安全性が格段に改善された。そして、走行の20分前には道を歩くのを止めさせて、スタートからフィニッシュまでの間は、1号車スタートの30分前にはステージには入らせないようにしているのも効果が出ている。観客は、走行の直前ではなく、もっと前もってステージに到着するように学んだ」

Red Bull

MH:この方式を改善するために最も責任を担ったのは誰か。
「私が着任する前は、FIAのジャセク・バルトスが20年取り組んで、考え方を構築した。それから自分が、より主催者と連携を取るように方法を少し変えて、現実的な解決を目指し、イベント開催の前も緊密にやり取りを行った。セミナーの開催も増やし、事前にセーフティプランのチェックも行っている。状況は、ポルトガルだけでなく、どのラリーでもかなり改善されてきている」

MH:アルゼンチンではどうだったか。関係者が最も警戒する国の一つだと思うが。
「とてもうまく行ったし、自分も喜んでいる。全ステージのオンボードを見ることができる初めての年だった。今は、不適切な場所にいる人たちの写真を取ったり、止めに行かずにステージをチェックすることができる。今年はモンテカルロも同じだったので、大きな改善。アルゼンチンでは、ラリーへの情熱が深いことは知られているし、みんなもこのラリーを失いたくはない。全ステージで国内のラジオが中継を行ってくれたことも助けになった。中継中に、観客に適切な場所で観戦すること、ルールを守ることを呼びかけてくれた。こうした取り組みがなければ、この国での開催はなくなってしまう。とても助けになっている。時には情熱が熱過ぎて、そのことを忘れてテープを超えてしまう人もいる。でも、あの国の観客の数を考えれば、今年はとても安全なラリーができた」

MH:グループBの時代は、どんな印象だったか。
「グループBの時代は、道のどこにでも人がいたことを覚えている。アクシデントがないことが驚きだった。今は、安全確保のためのインフラが整えられている。4×4の救急車、レスキュー車両、道の上の我々と連携しているヘリコプター。この点に関して、これ以上改善できる余地はないと思っている。観客への周知とマーシャルのトレーニングに専念し続けなくてはならないと思っている。観客に一番近いところにいるのはマーシャルなので、非常に重要な事」

MH:ラリーポルトガルがまた北部で行われるようになったことは個人的にはうれしいか。
「私は大好き。ラリーへの情熱があるので、北部への復帰は支持していた。アルガルベのステージもよかったが、人々のマナーについて指導をしなくてはならないことを考えれば、雰囲気は比べ物にならない。関係者はみんな取り組んでくれているし、だからこそラリーが素晴らしくなるのだから」
(Martin Holmes)



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