さらばWRC。王者カッレ・ロバンペラ、25歳の決断 – RALLYPLUS.NET ラリープラス
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さらばWRC。王者カッレ・ロバンペラ、25歳の決断

©TOYOTA

カッレ・ロバンペラがWRCを去るにあたり、オンラインでの取材が行われた。TGRは、ドライバーが異なるカテゴリーのモータースポーツに参戦することは、「もっといいクルマづくり」のための知見を得るうえで非常に重要だと考えている。今回の新たなる挑戦は、ロバンペラとトヨタの共同パートナーシップであり、その機会を目指すものだという。

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WRC引退とサーキットへの新たな挑戦

──あらためての確認ですが、今季限りでWRCからの引退を決めたということですか?
カッレ・ロバンペラ(KR)
:そのとおりだ。僕は今年でWRCから引退する。

──その決断をしたのはいつのことですか?
KR
:今年に入ってから、今後についてトヨタと真剣に話し合いを始めた。そしてトヨタとともに、僕にとって大きな目標に挑戦できるプログラム、そのチャンスがあるという計画が具体化したんだ。サーキットの世界でね。この決定に至ったのは、来年の計画は中途半端な覚悟で取り組めるものではなく、並行してWRCに参戦することは不可能だからだ。来シーズンはとてもハイレベルな世界に飛び込むつもりだ。スーパーフォーミュラに参戦し、たくさんのテストやシミュレーターの作業をこなす。次のステップを見極めるのはそのあとだ。もちろん、可能な限り最高のレベルを目指す。
 もちろん簡単な選択ではなかったけれど、同時に、答えは明白だった。WRCでは、自分の達成すべき目標リストの項目に入っていたタイトルや優勝などを獲得してきた。それらをかなり若い段階で達成できたので、それについては満足している。そしてトヨタとの共同プログラムを構築し、サーキットレースで大きな目標を目指す機会をもらえた。こんなチャンスは逃したくないし、一緒に何ができるかを確認したいと考えている。やるべきことは山ほどあるけれど、取り組む準備はできている。

──サーキットレースに目を向けたきっかけとは?
KR
:昨年、GTカーでのレースに参戦して、新しいフォーマット、新しいスキルや学ぶべきこと、これまでとは違う興奮を感じた。僕はもっと多くのことを学び、自分の限界に挑戦する必要がある。自分としては若いうちに色々な経験を積んで成長していきたい。この先、35歳とか40歳になってから別のチャレンジに向けて努力するよりも、今の段階ならどのカテゴリーであれ、高いレベルで活躍できるチャンスがあると感じている。それが話し合いの最初の内容だった。彼らもその後、本格的に検討を始めてくれた。そして、誰も成し遂げていないような『比類のない金字塔を実現できるチャンス』に興味を持ってくれた。

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──F1に到達するまでにはどれくらいの期間が必要になりそうですか?
KR
:これから数年間は、まずフォーミュラカーレースに出場する、ということから始める。まだ一度も出場したことがないからね。ほぼゼロからのスタートだ。スピードを上げ、レースの駆け引きを学ぶ。すべてに時間がかかるだろう。もちろん、サーキットレースでできることの選択肢はたくさんある。計画は常に進化していくし、良い結果を出すために最大限努力していく。いつまでに何を達成すべきかというタイムラインは特にない。毎シーズン、一生懸命努力して自分を成長させることにのみ焦点を当てている。結果を出すことができれば、なんでも可能になる。最初に集中すべきは、自分自身の成長だ。

──最終的な目標はF1のワールドチャンピオンになることですか? あなたには時間はまだ残されています。
KR
:確かに時間はある。でも、刻一刻と過ぎていっている。だからこそ、今すぐに決断することが重要だった。もちろん、この件で僕をサポートしてくれたトヨタには本当に感謝している。トヨタが僕とこのプロジェクトを信頼してくれたことは、なによりも素晴らしいことだ。確かに、時間は僕に味方してくれている。まだ25歳だし、必ず最後までやり遂げたいと考えている。
 まずはスーパーフォーミュラから始めて、その後にフォーミュラ2について考えていく。最終的な目標が何になるかは、まだ具体的には話せない。最高峰を目指すと言ったのは確かだし、モータースポーツの最高峰はF1だ。でも、サーキットには素晴らしいシリーズやイベントが多く存在する。もし将来ル・マンに出場したいかと聞かれたらもちろん『機会があればぜひ出てみたい』と答えるだろう。僕は多くのビッグレースに出場したい。だから、可能性はまだたくさんある。

──最も難しい部分はどのような点だと思いますか?」
KR
:まず、スーパーフォーミュラの世界に飛び込むことが最も難しいんじゃないかな。フォーミュラカーのなかでも2番目に速いクルマだ。F1マシンと比べても大きなタイム差があるわけではなく、F2よりもずっと速い。だからマシンコントロールを学びながら、至近距離でのバトルを習得することは難しいだろう。さらに身体面でも、必要とされるものがラリーとは異なる。準備期間は今年の冬しかない。身体にかかるGやコーナリングスピードもまったく違うものになるから、あらゆる分野での努力が必要になるだろう。

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残り3戦、チームと自分自身のためにも良い結果を

──今シーズンの成績や、現在のWRCを取り巻く状況は、今回の決断に影響しましたか?
KR
:今季の戦績とは関係なく、すでに決まっていたことだ。今季はトップ3で争えているから、最悪というほどじゃない。もちろん不運なこともあったし、もっと多くのポイントを獲得できたはずだけど、悪い年だったとは言い切れないよ。まだ戦いは続いている。少なくとも僕にとっては最後の3戦だ。タイトル獲得のために全力で挑み、チームと自分自身のためにも良い結果を残したい。

──この新しい計画を前に、残り3戦に集中するのは難しくありませんか?
KR
:ラリーへの取り組みに影響はないよ。でも、家で将来について話し合ったり、計画を立てていたりすると、寝る時になって、人生における大きな選択について考えざるを得ない。ラリーは物心ついた時からずっと人生の一部だった。これは僕の人生にも、キャリア全体にとっても大きな決断だ。色々なことを考えたけれど、この選択には満足しているし、今後のことを考えると、非常にワクワクしている。自分にとって一番合っていること、一番ワクワクすることをやっていきたい。

──現状のWRCはあまり良い状態ではありません。幼い頃から愛してきたWRCに幻滅してしまった部分はありますか?
KR
:確かに、ここ数年で多くの変化があった。だけど、それが僕の心境に大きな影響を与えたとは思えない。まだラリーは大好きだ。ドライビング自体、そしてスポーツとして芸術的な部分も大好きだ。でもそれは、今回の決断とは別の話だ。さっきも言ったとおり、自分の目標を着実に達成してきた。だから次のステップについても常に考えてきたし、それが最大のモチベーションでもあった。

──WRC参戦は今季で最後ですか? あるいは10年後、15年後……それでもあなたはまだ40歳ですが、再びWRCに出場したくなると思いますか?
KR
:将来、再びラリーに出場する機会もあると思う。でも、今の計画にそれは入っていない。今季以降はフォーミュラレースに集中するため全力を尽くす必要がある。現時点ではどうなるか分からない。

──来年はどのチームから参戦するのでしょうか。
KR
:いや、それについてはまだ明かすことはできない。

──カッレ・ロバンペラの代わりに、TGR-WRTには誰が入るべきだと思いますか?
KR
:誰かは分からない。チームのために良い結果を出してくれる優秀なドライバーだね(笑)。ラインナップは良いものになると思うし、きっと強いチームになるはずだよ。

(Translation/Keiko Ito)

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