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2025年シーズンWRC第5戦ポルトガルは、5月18日(日)に競技最終日が行われ、トヨタのセバスチャン・オジエが優勝、8秒7秒差の総合2位にはヒョンデのオィット・タナック、3位にはトヨタのカッレ・ロバンペラが入った。勝田貴元は5位でラリーを終えている。
ラリーは前日のSS18までを終えた段階で、オジエが総合首位、27.6秒差の総合2番手にロバンペラ、この日はパワーステアリングトラブルに見舞われ首位から陥落したタナックが36.1秒差の総合3番手。以降、44.6秒差の総合4番手にヌービル、46.8秒差の5番手に勝田が続いていた。この日行われるのはSS19〜SS24の6SS。この日最長のSS19/22「Paredes(16.09km)」、SS20/23「Felguiras(8.81km)」、SS21/24「Fafe(11.18 km)」という構成。ステージ総距離は72.16kmと短いが、最終パワーステージのFafe 2を前にリグループが設けられている以外はサービスもタイヤフィッティングゾーンもなく、ドライバーたちにとっては気が抜けない日となる。上位陣はほぼソフトコンパウンドをチョイスしたが、スペア本数は戦略にバラつきが見られ、トヨタ勢はハードコンパウンドタイヤを1〜2本、セットに加えてスタートした。
スーパーサンデーのポイントもターゲットとなるこの日、オープニングのSS19は、太陽が顔を出していた前日までとは一変、曇天の中でスタートしたマルティンス・セスクス(Mスポーツ・フォード)がスローパンク、ジョッシュ・マカリアン(Mスポーツ・フォード)にはインターコムのトラブルが発生してそれぞれタイムロスする小さな波乱を含みながら進行。ロバンペラがSS2番手のヌービルに3.6秒差をつけるベストタイムをマーク。「パンクの危険性があるので慎重に走った」という首位オジエは11.1秒も遅れを取り、ふたりのタイム差は一気に27.6秒から16.5秒に縮まった。
SS20では、前日に首位から陥落したタナックがベストタイム。SS19で開いた3番手ロバンペラとの差を10.7秒まで戻す。オジエとヌービルは4.2秒差のSS3番手タイムで並んだ。2回目の走行がパワーステージとなるSS21では、タナックが連続ベストタイムをマークし、3.3秒差のSS4番手に留まったロバンペラとの差を7.4秒に詰めてきた。首位のオジエは2.4秒差のSS2番手タイムで、ロバンペラとの差を16.3秒差に拡大。ひと息ついた格好だ。勝田は9km地点のバンクで右リヤをヒット。それでも、5.7秒差のSS5番手タイムでフィニッシュし、総合5番手の座をキープしている。
リピートステージになってもタナックの勢いは止まらない。SS22でもトップタイムをマーク。これで総合3番手のロバンペラとの差は、3.7秒となった。オジエは2本連続でSS2番手タイムで総合首位の座をしっかりキープ。一方、勝田は「サンデーポイントは狙わないと決断した」と、ポジションキープを宣言。トップから24秒1差のSS11番手でこのステージをまとめた。また、ポイントリーダーのエルフィン・エバンス(トヨタ)はようやくサミ・パヤリ(トヨタ)をかわし、6番手に浮上してきた。
タナックはSS23でも一番時計を並べ、4連続となるベストタイム。SS3番手タイムとなったロバンペラをついにかわして、総合2番手に浮上した。さらに、このステージは6.6秒差の5番手タイムに留まったオジエとの差を13.6秒まで詰めて、最終パワーステージを迎える。このステージでは、エバンスが5.1秒差のSS2番手タイムをマークしている。なお、フルモーは冷却系に不具合が見つかったことから、このステージの後に予防策としてのリタイアを決めている。
最終SSは、SS21の再走ステージ。名物ステージ、ファフェのフィニッシュ直前のジャンプスポットには、今年も多くの観客が集まった。空には雲が広がっているが、路面はドライ。まずWRC2のトップ3がガス・グリーンスミス、ヨアン・ロッセル、オリバー・ソルベルグの順でスタートしていった。49秒1という大差をつけての部門首位でパワーステージを迎えていたソルベルグは、ここまでの3人では最速のタイムでステージを走り切り、スウェーデンに続いて今季2勝目をマーク。部門2位でフィニッシュしたロッセルは、選手権リードを維持した。
ラリー1勢は、地元ポルトガルのプライベーター、ディオゴ・サルビ、マルティンス・セスクス、グレゴワール・ミュンステール、ジョッシュ・マカリアンとMスポーツ・フォード勢が先陣を切り、豪快なジャンプを披露したマカリアンがここまでのトップタイムを更新した。続いて、パヤリ、エバンス、勝田とトヨタ勢がコースイン。WRCではおなじみとなった“タカ・エアライン”の大ジャンプで観客を沸かせた勝田が暫定トップタイムをマークして後続のベンチマークとなり、パワーステージポイント獲得圏内につけた。次にコースインしたのは、ヌービル。序盤のスプリットから勝田を上まわるペースを見せ、タイムを3.3秒更新してみせた。ここから、総合順位でのトップ3が登場。タナックと僅差で総合2番手を争うロバンペラは、ヌービルのタイムに0.9秒届かず、暫定SS2番手タイム。この日は序盤からいいフィーリングが得られなかったと明かし「残念だ」と肩を落とした。タナックは、ヌービルのタイムを1秒1上まわる暫定トップタイム。次に登場したオジエは、マージンを活かしてペースをコントロールし、SS5番手タイムでまとめて今季2勝目をマーク。歴代最多のラリーポルトガル7勝目を決め、トヨタは開幕5連勝となった。
最終SS終了時点での総合順位は、オジエ、タナック、ロバンペラ、ヌービル、勝田、エバンス、パヤリ、マカリアン、ミュンステールというオーダー。パワーステージはタナック、ヌービル、ロバンペラ、勝田、オジエがそれぞれ5〜1点のボーナスポイントを得た。スーパーサンデーはタナック、ロバンペラ、ヌービル、オジエ、エバンスという順になっている。
この結果、ドライバーズポイントはウイナーのオジエが28点(25点+2点+1点)をマーク。2位のタナックが27点(17点+5点+5点)、3位のロバンペラは22点(15点+4点+3点)、4位のヌービルが19点(12点+3点+4点)、5位の勝田は12点(10点+0点+2点)を獲得。ドライバーズランキングはエバンスが118点で首位を守るが、今大会でわずか9点(8点+1点+0点)しか上乗せできず。2番手のロバンペラは88点とし、エバンスとの差を43点から30点に詰めた。3番手には86点でオジエ、4番手には84点のタナックが入り、同僚ヌービルをかわしている。マニュファクチャラーズポイントはトヨタが258点、ヒョンデが203点、Mスポーツ・フォードが72点、TGR-WRT2が36点。
次戦は6月5日〜8日に開催されるイタリア。地中海に浮かぶサルディニア島のオルビアを拠点に16SS(ステージ総走行距離320.94km)で争われる。サンディなグラベルに酷暑が待つこのイベントは、ヒョンデが得意としているラリーのひとつで、昨年もオィット・タナックとダニ・ソルドが1‐3フィニッシュを飾っている。
WRCポルトガル 最終結果
1. S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 3:48:35.9
2. O.タナック(ヒョンデi20Nラリー1) +8.7
3. K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +12.2
4. T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1) +38.5
5. 勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) +1:41.9
6. E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) +2:31.0
7. S.パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +2:38.3
8. J.マカリアン(フォード・プーマ・ラリー1) +5:12.3
9. G.ミュンステール(フォード・プーマ・ラリー1) +5:57.5
10. O.ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー2) +9:15.1