【Martin’s eye】WRCに遠征イベントが増えるのは良か悪か? – RALLYPLUS.NET ラリープラス

【Martin’s eye】WRCに遠征イベントが増えるのは良か悪か?

©Hyundai Motorsport GmbH

大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s eye。今回は、ヨーロッパ外で開催されるWRC戦、いわゆる遠征イベントがWRCに与える影響について考察する。


WRCが初めてニュージーランドで開催された1977年、出走台数はちょうど100台だった。アルゼンチン初開催(1980年)の際は89台、1973年に初めてWRCがサファリを訪れた時も同じ台数がスタートした。ニュージーランドとサファリは現在、WRCカレンダーから外れているが、2017年、メキシコとアルゼンチンでFIA規定マシンがスタートしたのは、それぞれ24台、19台だった。

サポートを充実できるヨーロッパ戦は現在、WRCカレンダーから外される危機に面している。FIAが、遠征イベントの戦数を増やすことを視野に入れているからだ。チームは、遠征イベントの台数低下の原因についてどう考えているのだろうか。これには様々な考察があるが、この危機に対処できる意見は少ない。

シトロエンは国際的な知名度が高いため、顧客に寄り添う点からも世界各地でラリーが開催されることを非常に重要視している。

ヒュンダイは、エントリー台数の低下について、開催国の国内規定がFIAの規定と合わないために地元からの参加が見込めないことが主な原因と認識している。アルゼンチンの国内戦格式のイベントは、多くの台数を集めている。メキシコなどの国はラリーの歴史が浅いため、WRCイベントに興味を持つ地元ドライバーはそれほど多くない。ヒュンダイにとっては、こうした国々を訪れるのは非常に重要なことであり、オーストラリアについては、ヒュンダイはかなり大きな規模の市場を有しているという背景がある。

Mスポーツは、遠征イベントは通常よりも移動費用がかさむものの、市場は大きく、それに匹敵するものがないほどの膨大なスペクテイターが集まることもあることも認識している。WRCのエントリー数はヨーロッパ戦には及ばないかもしれないが、イベントの人気に与える影響としては、実際は特に必要とされるものではない。

選手権をより「世界的」にするために遠征イベントを増やすという考えもあるが、これにはチームに費用面での支援が求められる。トヨタは、世界の各地でイベントを開催することがクオリティを高めるためにも重要だと考えている。

いずれも興味深い意見だが、WRCの「グローバル化」が進めば成熟されたヨーロッパイベントが犠牲になる。この問題をどう解決するか、ということに触れているものはない。
(Martin Holmes)



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