ロゴ一新のランチア、ラリーの歴史に名を刻んだラリーカーを振り返る – RALLYPLUS.NET ラリープラス

ロゴ一新のランチア、ラリーの歴史に名を刻んだラリーカーを振り返る

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電動モビリティ時代に向けてロゴを一新したランチア。これまでラリーの歴史で伝説的なマシンを生み出し、今なお強烈な存在感を示している。新しい時代に向けて踏み出すいま、名車の数々を振り返っている。

「デルタやラリー037、ストラトスのようなマシンからインスパイアを受けるのは、みんなの夢だ。この荒々しくも効率的なマシンによって、ランチアはラリー史上、最も多くの賞に輝いたブランドとなった」とランチアのCEOであるルカ・ナポリターノは語る。
「その原型──先鋭的な幾何学模様、丸いテールライト、空力的なウイングレットは、すべて我々のデザインの歴史の一部であり、ランチアの将来のモデルにもインスピレーションを与えている」

ランチア・ストラトス 「筋肉を形作るランニングスーツのようなフィット感」

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ランチア・ストラトスは、勝つために生まれた「荒々しくも効率的な」競技車両。当時のほかのモデルとは一線を画した、型破りな存在感を発揮した。マルチェロ・ガンディーニが設計しベルトーネによって生まれた1970年の「ストラトス・ゼロ」プロトタイプにインスパイアされた最終型は1971年に登場し、近未来的なウエッジシェイプにフェラーリ・ディーノ246のV6エンジンが搭載された。フロントはシャープでホイールアーチと見事に調和し、傾斜したフロントガラスはフロントピラーを取り込み、サイドに回り込む。ルーフはリヤウインドウ上で垂直に下がり、大きなエンジンフードに抱かれるように配置。リヤには丸いテールランプとアグレッシブなウイングが目をひく。プロトタイプを作り上げたヌッチオ・ベルトーネは、ランチア・ストラトスの最終版を見た時、「筋肉を形作るランニングスーツのように、ドライバーとコ・ドライバーにフィットする」と言ったという。

このマシンは、競技中のメンテナンスのために開口部を大きくするなど、すべてがラリー用に設計されている。加えて、ランチア・ストラトスのインテリアは革新的でもあり、シートはふたつ、ヘルメットの収納スペースがふたつだけという、ドライビングに徹底的にこだわったデザインで、ロードバージョンでも特徴的な装備となっている。カラーブロッキングと呼ばれるインテリアは、青、赤、黄といった原色を使うことで、ランチアらしい折衷主義の一環である連続的なコントラストを生み出している。

ランチア・ストラトスHFグループ4は、ラリーモンテカルロ3連覇を果たし、1975年、1976年とWRCコンストラクターズタイトルも連覇しているほか、ヨーロッパ選手権のドライバーズタイトルも獲得。その後、1977年にはサンドロ・ムナーリがFIAラリードライバーズ・ワールドカップを制している。そして1975年からは、ランチア・ストラトスに白×緑のアリタリアカラーが採用。アリタリア航空のロゴであるイタリア国旗のバッジを2分割してくさび型のボディに調和させ、モータースポーツの歴史上最も美しいカラーリングのひとつとなった。

1983年のWRCを席巻したアグレッシブでミニマルなスタイル、ランチア・ラリー037

フロント、リヤともに機能的でシャープなフォルムを持つランチア・ラリー037は、プロジェクトのコードネーム「037」の名で呼ばれ、ゴリアテに対するダビデの有名な勝利を思い起こさせる純粋なスポーツカーと言える。ランチア・ラリー037は、1983年のWRCでより強靭な4WDマシンを相手に選手権を制覇。2WDマシンでWRCタイトルを獲得したのは、現状、ランチア・ラリー037が最後となっている。

ピニンファリーナのアトリエが設計したモノコックとチューブラーの混合構造は、アグレッシブかつエレガントなボディで、大きな空力効果を生み出すことができる。その効率を最大限に高めるため、ポリエステルにグラスファイバーの補強を施し前後カウルを完全に分解できるように製作された。

ミニマルで合理的なインテリアはラリーカーには欠かせない要素で。印象的なリヤスポイラーを含むピラーやテールの空力的な「付属物」の一部は、より優れたパフォーマンスにつながるようになった。

ベータ・モンテカルロをベースに作られたランチア・ラリー037は、ラリーに参入しやすくすることを目指して生産されたロードカーであり、大量生産は想定されていない。1982年のトリノモーターショーでロードバージョンとして正式デビュー。翌1983年にWRCコンストラクターズタイトルを獲得したほか、ドライバーズ選手権では2位。ヨーロッパ選手権、イタリア選手権ではミキ・ビアジオンがタイトルを獲得し、その直後からランチア・マルティニチームのワークスドライバーとして参戦することになる。

ラリーカーとして最も成功したランチア・デルタのデザイン

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「デルタ」は、その名を発音するだけで、世界中のカーマニアやラリーファンの心に響く存在だ。それ以上に、即座に思い起こされるのは1988年、デルタHF 4WDが、象徴的なデルタHFインテグラーレに進化したことだ。エアダクトを拡大したアグレッシブなフロントと、大径タイヤを装着したホイールアーチの拡大は誰の記憶にも強く残っている。

その後、技術的・様式的な改良を重ね、より熟成したモデルとなった。デルタHFインテグラーレ16Vは、エンジンフードのバルジが印象的で、16バルブヘッドが搭載された。その後、デルタHFインテグラーレ16Vエボルツィオーネが登場し、フェンダーはさらに大きくなり、ルーフの後端には印象的なスポイラーが登場した。ランチアは、この素晴らしいコンパクト・ロードカーを皮切りに、史上最も成功したラリーカーを生み出した。

事実、4WDのランチア・デルタHFは4代の改良版で、WRCコンストラクターズタイトルを6回(1987〜1992年)、WRCドライバーズタイトルを4回(1987〜1989年、1991年)、グループN対象のPWRCタイトルを1回(1987年)、ヨーロッパ選手権タイトルを6回(1987〜1991年、1993年)、ヨーロッパ選手権プロダクション(グループN)を2回(1988〜1989年)獲得している。ランチア・デルタHFインテグラーレは、モータースポーツ界の情熱家たちの夢であり、同時に、その優位性を受け入れなければならないライバルたちにとっては悪夢の存在でもあったと言えるだろう。

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