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残り1戦、2020年WRCドライバーズチャンピオンへの道を考える

©Red Bull

WRC第7戦に予定されていたベルギーの中止が決定し、2020年のWRCはあと1戦、イタリアのモンツァ(12/4-6)を残すのみとなった。とは言え、イタリアも新型コロナウイルスの感染拡大第2波にさらされており、モンツァのあるロンバルディア州の状況を見ても、決して開催を楽観視できる状況ではない。このままシーズン終了となる可能性も十分に考えられるが、ここでは最終戦が開催された場合のチャンピオン確定条件を考えてみよう。

現在のドライバーズランキングは下記のとおりだ。

2020年WRCドライバーズランキング(第6戦終了時)
1 エルフィン・エバンス/111点
2 セバスチャン・オジエ/97点
3 ティエリー・ヌービル/87点
4 オィット・タナック/83点
5 カッレ・ロバンペラ/70点
6 テーム・スニネン/44点

まずは最終戦でエルフィン・エバンスが自力タイトルを決められる条件について考える。1ラリーで獲得できる最大点数は30点(=優勝25点+パワーステージ1位の5点)。エバンスは、2番手セバスチャン・オジエの97点に30点を加算した127点を上まわることができれば、ライバルの結果いかんにかかわらずタイトルを決めることができる。

エバンスの自力タイトル獲得条件(128点以上)
・1位
・2位
・3位+パワーステージ(PS)1位〜4位
・4位+PS1位

一方、上位陣のなかで計算上チャンピオンを獲得できる可能性がある(=首位エバンスがノーポイントに終わった場合、その111点を上まわることができる)のは、4番手83点のオィット・タナックまで。ランキング2番手のオジエはともかく、3番手87点のティエリー・ヌービルは優勝が必須条件、タナックは優勝に加えてPS1位〜3位を獲得することでようやく可能性が生まれてくるという厳しい状況だ。

14点のリードを築く首位エバンスが有利であることは間違いないが、今シーズンここまでの上位ドライバー戦績内訳を眺めると、気になる部分も見えてくる。

2020年上位ドライバーの順位内訳(第6戦終了時)
エバンス(1位2回、2位0回、3位1回、4位3回)
オジエ(1位1回、2位1回、3位2回、4位1回)
ヌービル(1位1回、2位2回、6位1回)
タナック(1位1回、2位2回、6位1回)

この4人のなかで一度もリタイアしていないのはエバンスのみ。開催戦数が少ないこともあり、安定した結果がランキングに直接つながっている印象だ。優勝回数ではエバンスがひとつリードしているが、気になるのは『2位0回』という数字。これは、場合によって致命傷になりかねない可能性をはらんでいる。

FIAのスポーティングレギュレーションでは“選手権ポイントが同点となった場合には、それぞれが1位を獲得した回数、次に2位を獲得した回数、その次に3位を獲得した回数……で決着をつける”ことが定められている。したがって、オジエあるいはヌービル、タナックが最終戦で優勝(=1位2回)して、エバンスと同点首位に並んだ場合には、『2位0回』のエバンスはタイトル争いに敗れることとなってしまうのだ。

たとえばオジエが優勝+PS1位、エバンスが3位+PS5位(あるいは4位+PS2位)で127点の同点首位となった場合は、オジエに軍配が上がることとなる。もちろんエバンスとしては、そのような状況に持ち込まれる前に自力で王座を決められるポジションを確保したいところだろう。

モンツァはターマックラリーのため、天候が安定していればグラベルラリーほど走行順による有利不利は少ないはずだが、WRC初開催のためどのドライバーにとっても未知の部分が多く、順位を予想することは不可能といっていい。トヨタのトミ・マキネンはチームオーダーを出さないスタイルを貫くだろうし、ヒュンダイのアンドレア・アダモはルールを駆使して最も効果の高い作戦を採るはずだ。いずれにせよ、最終戦にふさわしい、素晴らしいバトルが展開されることを期待したい。

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