新春特別インタビュー:セバスチャン・オジエ 前編「ライバルたちとのタイム比較が待ち遠しい」 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

新春特別インタビュー:セバスチャン・オジエ 前編「ライバルたちとのタイム比較が待ち遠しい」

©Hiroyuki Takii

2020年シーズンに臨むTOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのドライバーに話を聞く特別インタビュー企画。最後を飾るのは6連覇王者のセバスチャン・オジエ。

突然のシトロエン撤退、そしてTGRへと移籍を決めた背景やテストの感触など、余すところなく語ってくれた。特にヤリスWRCについては、TGRの本格参戦前夜(2016年)にテストした時とは大きく変貌を遂げていたという。その他オートサロンで初めて会ったというモリゾウの印象についても聞いた。


──オートサロンの雰囲気はいかがでしょうか? デモランには多くの観客が走りを観に来たそうですが。
「とても楽しめたよ! 日本人ファンたちの情熱を目の当たりにすることができたのはとてもうれしかった。2010年のラリージャパンで優勝した当時も情熱的なモータースポーツファンが多かったことを覚えている。でも今年からTOYOTA GAZOO Racingの一員となったからには日本人ファンたちが僕のことをより応援してくれるのかもしれないし、シーズンのローンチイベントとしてここは最適な場所だったと思う。この応援によってモチベーションを“満タン”にできたしね!」

──これほどまでの大歓迎を想定していましたか?
「いや、予想以上だよ! 東京オートサロンはヨーロッパではあまり知名度の高くないイベントだ。でもものすごく多くの人が訪れる大きなイベントだからうれしいね。ヨーロッパでは昨今、自動車やモータースポーツというとあまり歓迎されないこともあるけれど、ここではまだモータースポーツの人気が高いということを見ることができたのはとても良かったと思う」

──ビッグボスの豊田章男社長とはどんな話をしましたか?
「今回、初めてお会いすることができたんだけど、とても多くの責任を担っているポジションにもかかわらず、あれほどまでに情熱があって、僕らと“普通に”接してくれたことはとてもうれしかった。彼は明るくて、フレンドリーだ。最初の言葉が『僕は負け嫌いなんだ!』。驚いてみんなで大笑いしたよ! 彼は僕らがTGRファミリーに加入したことがとてもうれしいと言ってくれた。僕もジュリアン(イングラシア)も、この新しいチャレンジを前にワクワクしている」

──ヤリスWRCのテストの感触を教えてください。
「どちらかというと好感触だったね。昨年の12月に4日間もテストできたのは幸運だった。2日はモンテカルロのようなコンディションで、それから1日がグラベル、1日がスノーテストだった。モンテカルロの準備となったターマックでのテストではすぐに快適な走りができたから、大きな安心材料となった。よく言うことだけれど、テストでの感触と実際のラリーの結果は異なるものだ。ライバルたちのタイムと早く比較できることが待ち遠しいよ。まずは最初の数戦がどのような展開になるのかを見てみたい。

この最初のテストでヤリスWRCがどのようなラリーカーなのかということを理解することができたし、僕自身がどのような方向性を望んでいるのか、エンジニアにいくつか依頼することもできた。チームのドライバーが3人とも新しくなるというのは興味深いことだと思う。他のラリーカーとの比較もできるようになるからだ。今年、チームがこれまで数年と同じような感じで続けていくことができれば、良いパフォーマンスが出せると思う」

Hiroyuki Takii

──あなたは16年末、ヤリスWRCに少し乗った経験があると思います。その後、ライバルとして戦っていくなかで、ヤリスのエンジンパワーに驚いたり、パフォーマンスを羨むような発言もありました。今回、テストで乗ったヤリスは期待どおりでしたか。
「あの頃のヤリスとはとにかくまったく違うマシンだよ! 当時はチームもまったく新しかったし、あの頃に比べたらものすごく進化した。当時、チームは“準備万端”になるまでには時間が必要だったのだと思う。だから僕は別の方向に進むことを決めた。すでに4回タイトルを獲得していたし、可能な限り連覇できる状況をキープすることを選んだというわけだ。12年にはフォルクスワーゲンとマシン開発のための1年(シュコダ・ファビアS2000で1年間参戦)を過ごし、そのために少し後退しなくてはならなかった。ジュリアンと話し合って、再び同じような状況に自分たちの身を置かないことを決めたんだ。

でももちろん、当時から僕はトヨタのようなマニュファクチャラーと仕事をすることに魅力を感じていた。だから頭の片隅にいつの日か一緒に仕事ができるかもしれないという考えを持ち続けていたよ。毎年、トミ(マキネン)とは話し合う機会を設けた。そこで昨年末にそれが本当に現実となったわけだ。オィット(タナック)が本当にチームを去ると分かった時点で、より本格的な話し合いが始まった。そこでお互いに合意点を模索した。そしてこの“冒険”を一緒に始めることができて、とてもうれしい」

──それから3年後、ヤリスWRCはあなたが以前ドライブしたマシンとはまったく異なるものに仕上がっていたわけですね。
「完全に別モノになっていたよ。とは言え、最初のシーズンの開幕から良いパフォーマンスを見せていたし、2戦目のスウェーデンではヤリ-マティ(ラトバラ)が優勝したしね。ただ初年度は信頼性の問題が出たようだし、そういった意味では僕は正しい選択をしたと思っている。僕にとってはタイトル獲得が最優先事項だったし、その時はTGRが初年度にチャンピオンになることは難しいと判断した。でもこの3年間でチームが成し遂げた仕事はとても優れており、すでに18年にはマニュファクチャラーズ、19年にはドライバーズタイトルを獲得していることがその証拠だ。それも、このチーム加入が正しい選択だと感じさせる要因となった」
(後編は近日公開 Interview/Keiko Ito)



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