tS TYPE RA、乗ってまいりました! – RALLYPLUS.NET ラリープラス

tS TYPE RA、乗ってまいりました!

 

tS TYPE RA、乗ってまいりました!

みなさんこんにちはヨンカイです。
先日こちらのニュースでもお伝えしたスバルWRX STI tS TYPE RAの試乗会に行ってまいりましたよ。
tS TYPE RAのベースとなったのは、モータースポーツグレードのspec C。日頃“強靭でしなやかな走り”を標榜するSTIがリリースする、現行WRXの集大成とも言うべきコンプリートカーをご紹介します。

お話を伺ったのは、STI商品開発部マーケティンググループの森宏志さん、同車両実験グループの渋谷真さん、STI車体技術部の毛利豊彦さんのお三方。



STI商品開発部マーケティンググループの森宏志さん。今週末のモントレーでもトークショーを行なってくださいます。©Mitsuru Kotake

量産ラインではできないことを

富士重工業でGRBインプレッサのプロジェクトゼネラルマネージャーを務めた森さん。まさに現行WRXの誕生から集大成まで見届けることになった気持ちを伺ってみました。
「私がGRBを作った2008年当時はWRC活動の真っ最中で、WRCで勝つことを命題としていました。その後WRC活動は終了してしまいますが、市場からの要望もあって2009年にスペックCを作り、2010年にセダン、2012年にセダンのスペックCを送り出してきました。GRB、GVB型については自分のやりたいことをやらせてもらったと思っています。

ですが、量産ラインですべてのことをやり尽くすのは難しい。それがSTIであれば、コンプリートカーを「後架装」として色々なことができる。自分で開発した車両について、これまでと違った部分をお客様に提供できるというのは大変うれしいですね」

STI商品開発部車両実験グループの渋谷真さん。©Mitsuru Kotake

目指したのは「キレ」のある走り

渋谷さんも富士重工業在籍時からWRX STIの開発に携わってきたひとり。
「WRX STIの最初の頃から開発には携わっています。2010年にトミ・マキネンがニュルブルクリンクで7分55秒を出した時の車両責任者も務めていました。今回のクルマの構想をまとめる段階で“キレ”のあるクルマにしようということになったんです。ボールベアリングターボや軽量化の施されたスペックCをベースとすれば、動力性能的な部分は十分。残りの“曲がる・止まる”の性能を突き詰めていこうということです。

今回は11:1というステアリングギヤ比がとり上げられていますが、ギヤ比を小さくすれば小さい舵角でコーナーを曲がることができる。ステアリングを持ち変えず走りに集中できる。もちろん“過敏”になりすぎるという懸念もありましたが、リヤのグリップをしっかりと稼いであげることで解決しています」

STI車体技術部の毛利豊彦さん。©Mitsuru Kotake

前後の遅れのない動きを実現

そのステアリングギヤボックスの設計はSTIで行なわれている、と語ってくれたのは毛利さん。
「11:1というギヤ比は非常にクイックになるので、初めて聞いた時は正直なところ厄介だなあと思いましたよ(笑)。ですがSTIにはWRCなどからのデータもありましたし、リヤのドロースティフナーを装着することで、前後の遅れのない動きを実現しています。

ただ、ステアリングギヤ比を11:1にするということは、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)はやり直さなければなりません。その部分は富士重工業との協業で調整しています。それができるのはやはりメーカー系であるSTIの強みだと思っています」


試乗したのはNBRチャレンジ・パッケージのWRブルーマイカでした。©Mitsuru Kotake


ゴールドに輝くブレーキキャリパーは存在感抜群。ブリヂストン・ポテンザRE070はR205と同じくしなやかさを重視したチューニングのものを採用しています。©Mitsuru Kotake

ブレーキにも秘密アリ

このtS TYPE RAはR205やS206と同じく、モノブロックの6ポットブレーキキャリパーをフロントに装着しています。
「制動についてはR205やS206でも使っていた6ポットをうまく使ってハーモナイズさせるのがポイントだろうと思っていました。常用域の運転のしやすさ、遅れがない気持ちよさ、キレという部分では満足の行く仕上がりになったかなと思います」と渋谷さん。
「S206はドリルドローターでしたが、tSにはグルーブドローターを装着しています。S206はオールマイティなクルマで、グルーブドのブレーキ音を嫌ってドリルドにしていましたが、今回は“キレ”がテーマということでグルーブドを採用してコントロール性を上げています」と毛利さん。


©Mitsuru Kotake


©Mitsuru Kotake

11:1は“ワールドラリーカー”と同じ

さて、ズバ抜けた動力性能については今さら言うまでもありませんが、いざ乗ってみると、11:1の恩恵は予想以上。交差点も含めたほとんどのシーンでステアリングを持ち変えることがありません。ワインディングでもまさに意図したラインをたどってくれるという感じです。まるでバイクのような一体感とでもいいましょうか。ヘアピンコーナーにいたっては、どこまででも曲がれるような気分にさせてくれます。それもこれも、不安定にならずにしっかりとリヤがついてきてくれるクルマだからこそ。そうでないとたぶん、神経質すぎて乗ってられないのではと思います。

もうひとつこのクルマに乗ってみて気がついたのは“ステアリング操作が少なくて済む=とにかくラク”ということでした。運転に集中しやすいことはもちろん、長距離を走る場面においても大きなメリットだと思います。もちろん車庫入れもラクラクです。11:1という数字が“ワールドラリーカーと同じ”と聞いたら心を揺さぶられずにはおれません。そこにはWRCの血統が今もなお流れていると言っても過言ではないでしょう。そのシャープなハンドリングと安心感をもたらすシャシーの組み合わせに、STIコンプリートカーの本質を見た気がしました。

このtS TYPE RAは300台限定。用意されるのはNBRチャレンジ・パッケージと通常モデルの2種類ですが、すでにNBRチャレンジ・パッケージは完売……。残りもわずかとのことなので、欲しい方は今すぐ販売店へ!



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