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スタートを目前に控えた2025年のアジアクロスカントリーラリー。3年目の挑戦となる三菱トライトンの開発陣に、25年仕様の概要を聞いた。
車体開発を担当する相羽規芳エンジニアは「足まわりとエンジンの改良を中心に、日程的に可能なものはすべて盛り込みました」と語る。特に、このラリーにおいては悪路走破性の重要度は大きなポイントだ。ここまで新型トライトンで戦ってきた2年間も、常に改良項目として挙げられてきた。走行距離が長いアジアクロスカントリーラリーでは、わずかな減速や細かなロスが積み重なって、最終的には大きな差が生まれてしまう。
25年仕様のフロントサスペンションでは、ストロークを拡大。昨年比で27mm(バンプ側・リバウンド側合計)増加させており、レギュレーション上限付近までのストローク量を確保、凹凸の激しい路面への追従性を向上させている。また、前後スタビライザーを新たに追加した。これによりコーナリング時の車体のロールを抑えながら、サスペンションのスプリングレートを下げることが可能となった。足まわりをしなやかに動かすことで、コーナー立ち上がりのトラクションも確保でき、加速時のロスを減らしている。リヤサスペンションに関しては別体タンクの容量を拡大することで熱による影響を減らし、長時間の走行でも安定した性能を発揮できるようになっている。
また、空力性能の向上については、岡崎の量産開発部門からの提案が全面的に採用された。高速走行時の空気抵抗を細かく削減することを目標に、キャビン後端上部には、カーボン製のリアカウルを装着。風洞実験で効果が実証された形状をそのまま採用している。また、キャビンと荷箱の間の段差を埋めるためのウェザーストリップの追加、マッドフラップ形状の最適化など、細部にわたる改良が施された。
一方、エンジン開発における主な目標は、レスポンスと信頼性の向上、そして性能の底上げだ。エンジン開発を担当する柴山隆は、「レスポンスと信頼性の向上はもとより、最大トルク、最高出力ともに昨年型よりも向上しています」と自信を見せる。
改良のポイントはインジェクターの性能向上と圧縮比の変更だ。インジェクターは、短時間で効率的に燃料を噴射できるものへと変更され、出力の向上に大きく寄与している。また、ピストン圧縮比はあえて下げることでエンジン各部への負担を軽減し、信頼性を確保している。こうした取り組みで、信頼性を損なうことなく全体のパフォーマンスを底上げすることに成功しました。
また、ターボチャージャーについても翼形状を変更して流量を高めている。流量を追求すると低回転域でのレスポンスが悪化する傾向があるものの、エンジン本体の性能アップにより、低回転域のレスポンスを犠牲にせず、高回転域での出力向上を実現している。
AXCR 2025は8月8日にタイのパタヤをスタートし、8日間をかけて争われる。25年は3台とすることで、リソースの集中を図ってきたチーム三菱ラリーアート。3年目の挑戦が、まもなく始まる。