【アンドレアス・ミケルセンのWRC奮闘記】ツール・ド・コルスの8日間でホテルは7軒!? – RALLYPLUS.NET ラリープラス

【アンドレアス・ミケルセンのWRC奮闘記】ツール・ド・コルスの8日間でホテルは7軒!?

 

日本の皆さん、ボンジュール!

コルシカに到着する前からツール・ド・コルスはいろいろな意味で普通とは違うイベントになるだろうと全員が分かっていた。
『10000もコーナーがあるラリー』という異名をとるこのイベントだが、それは事実だ。ステージはただひたすらコーナーの連続で、休む暇がない。正しいペースノートとセーフティークルーからの情報がとにかく重要になる。ペースを見つけることができなければ、すべてが失われてしまう。きちんとしたリズムがつかめなければ、タイムはどんどん遅くなっていってしまう。これほどまでにいつものステージと違うとは思っていなかった。そして僕らは週の半ばに豪雨に見舞われたが、それは大自然の脅威といった感じでとても恐かったよ! あんなひどい雨は見たことがないし、水がいかに早く流れていくかというのを目の当たりにした。住民たちが大丈夫かとずいぶんと心配した。

今回はラリーのフォーマットが違ったので、かなりの耐久イベントとなった。9つしかステージが予定されていなかったけれど、それぞれがとても長かった。とにかく島じゅうを駆け巡ったよ。8日間でホテルを7回も変わったんだ! ロジスティクス担当者は今回本当に大変だったと思うよ。70名のスタッフのためにすべてを予約するのは容易なことではないからね! 宿泊先、レンタカー、食事と休息のすべてのケアをしなくてはならない。でも素晴らしい計画を立ててくれて、すべてがうまくいったよ!

FIAのジャン・トッド会長とのドライバー集合写真。

FIAのジャン・トッド会長とのドライバー集合写真。

セーフティークルー、ティモ・アランネの情報をもらってコドライバーのオーラ・フローネはペースノートを変更する。

セーフティークルー、ティモ・アランネの情報をもらってコドライバーのオーラ・フローネはペースノートを変更する。

マネージャーのエリック・ヴェイビーと話をすると、彼はいつもいいアドバイスをくれるんだ。

マネージャーのエリック・ヴェイビーと話をすると、彼はいつもいいアドバイスをくれるんだ。

ターマックでのドライビングは特別な技術が必要だ。そしてコルシカはそれをうまく応用しなくてはならないラリーだった。ラリーをフォローしてくれた人には分かると思うけど、僕が何度も『ブレーキが効かない』と言っていたのを覚えているだろう。このような路面の道路では、ステアリングホイールを使って方向を変換するのと同時に、あらゆる手で方向転換を行わなくてはならない。ブレーキの効きに自信がないと、ペースを維持できずにタイムをロスしてしまう。とにかくコーナリングの連続で、急な下り坂のセクションでは、ブレーキに自信がないと良いフィーリングを保てないんだ。特に今回はステージがとても長かった分、本当に大変だったよ!

50km近いステージでコーナーが連続する長いダウンヒルセクションがあると、ブレーキには非常に過酷なコンディションになる。フィニッシュではブレーキがとにかく熱くなっているんだ。もっとも、まだブレーキが残っていればの話だけどね! 使いすぎたりすると、完全に摩耗してしまう。ブレーキペダルを踏みこんでもまったく何も起こらないと、とにかく対応するのが大変なんだ。

だからこそ、イベント前のテストはとても重要だ。そのテストの目的はここの路面で僕のドライビングに最も合ったブレーキの種類を見つけるためのものだった。結局、テストはキャンセルされてしまったから適正なブレーキを見つけることができなかった。コルシカの路面に関する重要な情報が収集できなかったので、最初から最後まで試行錯誤しながら走ったよ。

僕らのセーフティークルードライバー、ベルント・コレボルド。

僕らのセーフティークルードライバー、ベルント・コレボルド。

僕らのエンジニアでもあり、先生でもあるリチャード・ブラウン。彼のおかげでいい結果が生まれる。

僕らのエンジニアでもあり、先生でもあるリチャード・ブラウン。彼のおかげでいい結果が生まれる。

メカニックたちにいろいろ教えてもらっているところ。マシンについては詳しいことのすべてを知っていないといざという時に困るからね。

メカニックたちにいろいろ教えてもらっているところ。マシンについては詳しいことのすべてを知っていないといざという時に困るからね。

ラリー自体の難易度が非常に高いのに、それに加えて『メディケーン[地中海のハリケーン]』が到来したらどれだけ困難な状況になるか、よく分かってもらえるだろう。今回の規模ほどのメディケーンがコルシカを襲ったのは数年ぶりだという。あんな悪天候は初めてだよ。激しい強風と豪雨が24時間、島を襲って、かなりのダメージを与えた。洪水や地滑りでアクセスできなくなった村もあったみたいだ。道路や橋も浸水した。ステージが2本キャンセルされたが、それはステージまでのリエゾンセクションが浸水し、ステージの一部が完全に水に覆われて走れなくなったからだ。翌朝は雨は止んだけれど、ぬかるんだ泥が路面を覆っており、グリップがあるかどうか分からなかった。情報を提供してくれるセーフティークルーはいたけれど、事前に状況を把握することは不可能に近かった。実際に走ってみないとまったく分からない状態だった。そしてそれに成功する人もいれば、失敗する人もいた。

結局、最終日だけが通常のコンディションになった。エルフィン・エバンスとの2位争いは激しかった。ステージがあともう1本あれば彼に追いつくことができただろう。彼は週末を通じてとてもいいドライビングを見せた。でもコースオフせず速く走ることには限界があり、僕はその限界に近付いていたが、それを超えることはなかった。もちろん3位で満足したとは言えないし、2位までの差を考えると、ちょっと悔しい。もちろん表彰台をゲットできたことは良かったけれどね!

フィニッシュ後の記者会見、2位に入ったエルフィン・エヴァンスが持ってきてくれたイギリス名物、バノフィパイ(バナナとトフィーと生クリームのパイ)を食べるオーラ。

フィニッシュ後の記者会見、2位に入ったエルフィン・エヴァンスが持ってきてくれたイギリス名物、バノフィパイ(バナナとトフィーと生クリームのパイ)を食べるオーラ。

サービスでようやく青空が少し見えた。本当にすごい嵐だったよ!

サービスでようやく青空が少し見えた。本当にすごい嵐だったよ!

というわけで大変なイベントだったけれど、なんとラリーが終わった月曜日にエールフランスがストに突入して、帰国日にフライトが遅延したり、キャンセルになったりしたんだ。僕のフライトは幸運にも時間どおりに出発したが、フォルクスワーゲン・モータースポーツのスタッフの多くは影響を受けて、自宅に戻るためのフライトが出発しなかた。コルシカは美しい島で、ホリデーに行きたいほどの場所だけど、超が付くほど忙しかった一週間のあとでは、全員が一刻も早く帰宅したかっただろうね。最終的には皆があまり影響を受けずに帰ることができればよかったのだけれど。

次戦はラリー・スペイン。スペインの田舎にあるスムースで高速なステージを駆け巡るミックスサーフェイスイベントだ。とても待ち遠しいよ!

ではまた次のブログで! みんな元気で過ごしてね!

アンドレアス



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