今週開催されるWRCラリーチリ・ビオビオでは、今年のタイトル争いが佳境を迎えるのに加え、新進気鋭の2台による直接対決が見どころになる。今季のWRC全13戦中、第11戦となるラリーチリは、WRCイベントとして3回目の開催。今季8回目、そして最後のグラベルラリーとなる。
9月26日〜29日にチリのビオビオ地方で開催される今季唯一の南米ラウンドは、太平洋に近い港町コンセプシオンが拠点となり、南部の林道をステージとして使用する。会期は南半球の春にあたり、雨や涼しい天候が続くと見られる。
しかし、WRCタイトル争いは白熱しており、ヒョンデのティエリー・ヌービルは、自身初の世界タイトルに向かって猛進中。チームメイトで2019年王者のオィット・タナック、WRC8冠のセバスチャン・オジエもタイトルの可能性を残している。今季の残り3戦で獲得できる最大ポイントは90となっており、トヨタのエルフィン・エバンス、Mスポーツ・フォードのアドリアン・フルモーも、まだタイトル争いに残り続けている。
ラリー2マシンで争われるWRC2部門も同様で、現在ポイントランキング首位に立つのはオリバー・ソルベルグ。3ポイント差で、今季3勝をマークしているサミ・パヤリが追う。しかし、パヤリは今回のWRCチリではトヨタからGRヤリス・ラリー1ハイブリッドをドライブする。
ラトビアのマルティンス・セスクスもタイトルの可能性を残しているが、同じくMスポーツ・フォードからラリー1マシンでWRCチリにエントリー。セスクスのマシンは、ハイブリッドなしで、同等重量のバラストを積んだラリー1となる。
WRC公式タイヤサプライヤーのピレリは、スコーピオンKXタイヤを供給。第1選択肢は、冷涼で湿ったコンディション向けのソフトコンパウンドとなり、気温が上がってドライになった時用のハードコンパウンドが第2選択肢となる。WRCチリ会期中にラリー1マシンが使用できるタイヤの本数は28本(シェイクダウン用の4本を含む)。
■エントリー状況
ヒョンデ・シェル・モビスWRT:前戦アクロポリスでは、ポディウムを独占したヒョンデ。ヌービルは選手権リーダーとしてWRCチリを迎える。チームメイトのタナックは、選手権2番手。3台目のヒョンデi20Nラリー1ハイブリッドを駆るエサペッカ・ラッピは、8月上旬のフィンランド以来の参戦となる。
トヨタ・ガズーレーシングWRT:8冠王者のオジエは、ドライバーズ選手権3番手でWRCチリを迎える。現王者カッレ・ロバンペラ、レギュラードライバーのエバンスに加え、パヤリが2度目となるラリー1での参戦に臨む。
Mスポーツ・フォードWRT:ノンハイブリッドのラリー1マシンでエントリーするセスクは、ポディウム争いに絡んだ7月の母国ラトビア以来のWRC参戦で、WRCチリは初めて。レギュラードライバーのフルモー、グレゴワール・ミュンステールとともに、チームがタナックによって収めたWRCチリでの勝利を再び狙う。
■サポートカテゴリー
激戦のWRC2は、選手権リーダーのソルベルグ(シュコダ・ファビアRSラリー2)、シトロエンC3ラリー2を駆るニコライ・グリアジン、ヨアン・ロッセル、トヨタGRヤリス・ラリー2に乗るヤン・ソランスがエントリー。チリのアルベルト、ペドロのヘラー兄弟は、それぞれC3ラリー2で登場する。ラリー拠点のコンセプシオンで生まれ育ったヨルゲ・マルティネス(ファビアRSラリー2)は、チリ選手権で11回チャンピオンに輝いている地元の強豪だ。
昨年のWRCチリでは、チームメイトのソルベルグに続く2位でフィニッシュしたガス・グリーンスミス、カエタン・カエタノビッチ、パラグアイのファブリツィオ・ザルディバールもエントリーしている。
WRC3では、ディエゴ・ドミニゲス(フォード・フィエスタ・ラリー3)、ジュバンニ・ロッシ(ルノー・クリオ・ラリー3)が対決する。
■ラリールート
今年のラリーチリは、2023年と同様のルートだが、シェイクダウンは新しいステージを使用、デイ2のPelunとLota、デイ3のBio Bioは微調整が行われている。セレモニアルスタートの会場も、2023年のロス・アンヘレスから、コンセプシオンに復帰している。
デイ1は、3本のステージを2ループする112.76km。ステージはコンセプシオン南東部に設定され、このラリーの中でも速度域が高いエリアとして知られている。デイ2はコンセプシオン南部を走る139.20km。同じく3本を2ループするが、デイ1、デイ3に比べてツイスティ。Maria las Cruceは28.31kmとイベント最長のステージだ。Lotaは観戦しやすいラリービレッジでのステージとなる。
最終日のデイ3もコンセプシオン南部を走行。LaraqueteとBio Bioの2本を2ループする54.80kmとなる。Bio Bioもラリービレッジが設営される。全般がスムーズな道で、高速でキャンバーのついた林道で知られるこのステージは、2回目の走行がパワーステージに指定されている。
■ラリーデータ
開催日:2024年9月26日〜29日
サービスパーク設置場所:コンセプシオン
総走行距離:1239.23km
総ステージ走行距離:306.76km(SS比率24.75%)
総SS数:16
■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
セバスチャン・オジエ(#17)
エルフィン・エバンス(#33)
カッレ・ロバンペラ(#69)
[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#11)
オィット・タナック(#8)
エサペッカ・ラッピ(#4)
[Mスポーツ・フォードWRT]
アドリアン・フルモー(#16)
グレゴワール・ミュンステール(#13)
■2023年ラリーチリ・ビオビオ最終結果
1 O.タナック(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1) 3:06:38.1
2 T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド) +42.1
3 E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) +1:06.9
■近年のWRC開催でのウイナー
2023年 O.タナック(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1)
2019年 O.タナック(トヨタ・ヤリスWRC)