モンテカルロで夢のようなデビューを飾ったMスポーツ、舞台裏の秘話 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

モンテカルロで夢のようなデビューを飾ったMスポーツ、舞台裏の秘話

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数々の苦境を跳ねのけて、新世代WRカーのデビュー戦で夢の勝利を飾ったMスポーツ。セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシアというチャンピオンクルーを迎えた名門チームの、シーズンブレイクからモンテカルロフィニッシュまでのストーリーが公開された。


クリス・ウィリアムズの心は、ザワついていた。普段から物静かなMスポーツの司令塔は、無口だった。無口すぎるほどだった。全てが順調に進んでいた。スプリットタイムは計画通りで、トラッキングシステムは、#1フォード・フィエスタWRCがペイラ・カヴァを目指して、D2566を南下していることを示していた。

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数秒が数分に感じる。そして、その数分が永遠に続くような感じがしていた。

16分、正確に言えば16分10秒6。ラリー・モンテカルロの17番目のステージをスタートしたセバスチャン・オジエとジュリアン・イングラシアは、この時間をかけてフィニッシュにたどりついた。

「ステージを走り切った」マシンから届いたメッセージだ。

ウィリアムズとMスポーツのメンバーは、大騒ぎになった。

英国拠点のMスポーツがWRCで勝利を収めたのは、実に4年半ぶりのことだった。そして今、このチームからの初参戦のオジエが、夢のようなデビューを飾った。

スタッフは、肩を叩いたり、ハグをしたり、枯れるまで涙を流してこの瞬間を味わった。

「このイベントに臨むまで、彼がマシンに乗ることができた時間は本当にわずかだった」とMスポーツでラリー部門を指揮するウィリアムズは語った。同社が送り出した最速のラリーマシン、新世代フィエスタの設計責任者だ。

「マシンの開発においては、できる限り最高の仕事をしたと自負しているが、セバスチャンは少ししかテストしていないことも現実だった。どうなるのか、全く分からなかった」

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2017年世界ラリー選手権の開幕戦は、オジエにとっては未知の世界へ踏み込むことだった。しかし、世界のトップと仕事をするという事について、変わる事は何もなかった。ウィリアムズはこの世界で、マクレー、サインツ、グロンホルムらとともに仕事をしてきた。世界チャンピオンを熟知している。

「彼の要求は非常に厳しい。世界チャンピオンというのは、そういうものだ」とウィリアムズ。「今回のイベントでは、彼からのリクエストが長々とリストに並んだ。彼を満足させてみせるよ」

そのオジエは、昨年12月12日、チームプリンシパルのマルコム・ウィルソンとついに契約。Mスポーツに最初の「ハッピー」をもたらしている。

「彼は、交渉相手としては非常に手強かった」とウィルソン。
「このことは隠さないよ。なぜ、彼が4連覇王者でいられるのか、よく分かる。彼も(コ・ドライバーの)ジュリアンも、キッチリ100%に至るまで詳細を詰めてきた。彼らがチームに入って、まだ一ヶ月あまりだが、既に彼らから学んだ事は多い」

ウィルソンは、チームにアットホームな雰囲気を作り出している事に誇りを持っており、今月上旬には、シーズン前の戦略ミーティングの合間に、オジエとイングラシアを自宅での夕食に招いている。

「ボスの家で夕食に招待されるのは、初めてだった」とオジエは振り返る。
「英国の料理はあまり評判がよくないが、ウィルソン夫人は間違いなく例外だと胸を張って言えるよ。彼女の料理は、素晴らしかった!」

ウィルソン夫人も、数々のトップラリーストを招いた自宅に新たなレジェンドを迎えたことを喜んでいたようだ。

「本当にいい人たちだったわ」とウィルソン夫人。
「とても働き者で、取り組む姿勢がとても真剣だと分かった。まるで、私たちのようにね。そして、私の料理も気に入ってくれたの。いつでも、来てもらいたいわ!」

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オジエが英国北部にあるMスポーツWRTの本部に着いた時点で、時間は迫っていた。シーズン開幕に向けて整っていることはあまりなかったが、こうした準備に取り掛かる前に、オジエとイングラシアはチームと対面した。チームの全スタッフ、200人とだ。清掃係から経理スタッフまで一人一人が握手を交わし、暖かく歓迎した。

オジエ車担当のエンジニアの一人、ミゲール・クンハはこの時に、オジエに好感を持ったという。

「彼を見ると、カルロス(サインツ)を思い出すよ」とクンハ。
「彼は明らかに、詳細にまでこだわるタイプ。全てを完璧にするために、突き詰める男だ。だからこそ、カルロスなんだ。そういうところが、僕は好きだね」

ウィリアムズと同様、クンハも自身のキャリアの中で、数々の英雄たちと仕事をしてきた。だからといって、ミーハーになったりはしない。

若い世代のスタッフにとっては、4連覇王者であるオジエとイングラシアの加入は、少し悩ましいものだったようだ。

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スチュアート・ルードンはセミプロのコ・ドライバーで、WRCの参戦からは離れていた。モンテカルロでは、Mスポーツのウェザークルーを手配していて、このイベントでは不可欠な詳細な天気予報を適切なタイミングで送っていた。

「包み隠さずに言えば、セバスチャンとジュリアンと働くことに、死ぬほど緊張したよ」とルードン。
「でも、2人とも、素晴らしい人だった。セブは最高だし、彼と一緒に仕事ができるのは光栄なことだ。自分はコ・ドライバーなので、ジュリアンはまさにお手本のような存在。彼はアメージングだよ。イベントの前に、何度かメールをくれてコツを教えてくれたし、イベントの間も自分のことを気にかけてくれた。フィニッシュで彼がやってきて、ビッグハグをしてくれた時は、信じられない気分だった。この世界チャピオンたちがMスポーツに入ってきたんだ。ラリー界で最高のチームに。そして自分は、その一員だ。一生忘れられないよ」

2017年モンテカルロ。Mスポーツの全メンバーにとって、忘れられない一戦となるに違いない。



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